<イロワケイルカの赤ちゃん>に会いに仙台うみの杜水族館に行ってきた 国内飼育は2館のみ?
仙台うみの杜水族館では6月22日、イロワケイルカの赤ちゃんが誕生しました。
そして、7月8日より一般公開もスタート。とても貴重なその姿をひと目見ようと、さっそく仙台うみの杜水族館に行ってきました!
イロワケイルカとは? 国内での飼育は2館のみ
イロワケイルカ(学名:Cephalorhynchus commersonii)は、白と黒のコントラストが美しいイルカの仲間です。
日本からは遥か遠い、南アメリカ大陸の南端の海域に生息するイロワケイルカ。
現在では原産地からの輸出が厳しく制限されており、国内では仙台うみの杜水族館と鳥羽水族館の2か所の水族館のみで、今回生まれた赤ちゃんを含めて合計7頭が飼育されています。
出産までの軌跡
今回、母イルカ「セーラ」の妊娠が発表されたのは2025年5月1日。実際に妊娠が判明したのは2月ごろだったそうです。
仙台在住の筆者にとって、いちばん身近な水族館といえば仙台うみの杜水族館。セーラの姿はほぼ毎月見ていましたが、公式発表があるまではまさか妊娠中だとは気付かずにいました。
妊娠が発表された5月以降は、出産に備え、オスの「ライト」とは別プールでの飼育となっていました。
出産予定は5月中旬~6月中と発表されており、訪問するたびに少しずつ大きくなるセーラのお腹を眺めながら、筆者も無事出産の吉報を今か今かと待ち焦がれていました。
大きなおなかが目立つようになってからも、セーラは普段どおりボールで遊んだりと、マイペースに過ごしているように見えました。
そして6月22日、無事に出産。
出産から一般公開されるまでの約2週間、イロワケイルカの展示水槽は一時的に公開中止となり、子育てに専念できる環境が整えられていました。
赤ちゃんイルカとの対面
7月8日の一般公開から数日後。仙台うみの杜水族館へ、セーラと赤ちゃんイルカに会いに行くことができました!
イロワケイルカ水槽を囲っていたパーテーションは撤去され、水槽前にスタッフの方が常駐し母子の行動を観察していました。
「おもちゃなどを使って生き物の注意を引く」等の行動は禁止、静かに観覧するよう案内板が掲示されています。
白と黒のツートンカラーが特徴的なイロワケイルカですが、生まれてすぐはこの境界線が曖昧で、親イルカと比べると全体的にくすんだような体色をしています。
また、「胎児線」といわれるシワ(胎内で丸まっていた名残り)も確認できました。
今回生まれた赤ちゃんイルカの性別はオスとのこと。
イロワケイルカの性別は、お腹部分の黒い斑紋の形で見分けることができるそうです。
オスの斑紋は涙のしずくのような細長い楕円型。それに対し、メスの斑紋は個体によってそれぞれ異なる模様があるのが特徴です。
母「セーラ」と父「ライト」について
今回、出産に至った母イルカは「セーラ」。1991年4月にマリンピア松島水族館で生まれ、現在34歳。国内の水族館で飼育されているイロワケイルカの中では最高齢です。
過去、マリンピア松島水族館時代にも3頭の出産経験があるセーラ。
前回2013年に「ツバサ」を出産して以来、今回が実に12年ぶりの出産となりましたが、出産直後からスムーズに授乳を行うなど、順調な子育てだったとのことです。
そして父親は「ライト」。
2015年8月に鳥羽水族館で生まれ、現在10歳。2022年5月に、繁殖目的のため鳥羽水族館から仙台うみの杜水族館へとやってきました。
同居開始当初から仲の良さそうな様子を見せていましたが、とはいえ年齢差24歳の「歳の差カップル」。セーラの年齢も考えると、現実的には繁殖は難しいのではないだろうか、と素人考えながら内心思っていました。
そんなこともあり、今こうしてセーラが赤ちゃんイルカとともに泳いでいる姿を見ると、嬉しさもひとしお。そして、生きもののことについて我々素人が先入観や思い込みで語ってはいけないということに、改めて気付かされました。
「飼育下4世」の赤ちゃんイルカ
母「セーラ」は飼育下2世、父「ライト」は飼育下3世。
つまり今回生まれた赤ちゃんイルカは、(やや変則的ながら)飼育下4世ということになります。
そして、松島/仙台育ちの個体と鳥羽水族館育ちの個体との間に生まれた、初めての赤ちゃんでもあります。血統管理という意味でも、重要な役割を担う存在となるかもしれません。
とはいえ、生まれたばかりの赤ちゃんイルカにそこまでの役割を期待してしまうのは、人間の勝手なエゴなのかもしれません。
まずは今後の成長を、あたたかく見守りたいですね!
(サカナトライター:アル)