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亀井野・大和田さん 「もしあの子が生きていたら」 亡き夫が残した絶筆の処女作

タウンニュース

厚みのある小説の装丁=上写真=、ビール片手に笑みを浮かべる生前の精吾さん(妻・とき子さん提供)

亀井野在住の大和田とき子さん(74)が昨年末、小説『相模の辰次郎街道流れ旅―故郷の温もり封じ―』を上梓した。おととし5月に亡くなった夫の精吾さんが書きためた物語を一冊にまとめた。「寂しい気持ちもある。でも何とか形にできて、ほっとしている」。とき子さんはそう言ってほほ笑む。

「亡き夫大和田精吾、長男大和田辰吾に捧ぐ」――。本の冒頭にはこうつづられている。

精吾さんは長年勤めた建築会社を定年退職後、四国八十八カ所遍路参りや地元のウォーキング仲間と歩き旅に出た。北海道から沖縄まで日本縦断も果たした。

「息子への懺悔旅だったのかもしれない」ととき子さん。大和田夫妻の長男・辰吾さんは13歳で病死した。「悔やんでも悔やみきれない」と精吾さんはよく口にしていたという。

健康そうに見えた精吾さんだったが、2021年の春、医師から肺がんと診断された。2年以上に及んだ闘病生活の中で辰吾さんを主人公「辰次郎」に投影した小説を執筆することに。江戸末期、人情に厚く正義感のある28歳の渡世人が旅をする物語だ。「いつか世に出したいね」。とき子さんが手を握ると力強く握り返した精吾さんは、その数日後に息を引き取った。

精吾さんの遺志を受け継いだとき子さんは、スマートフォンに打ち込まれた文章を起こし始めた。「何だか夫がそばにいるような気がして。夢中で物語の世界に入っていけた」と約2カ月で出版までこぎつけた。

精吾さんがとき子さんに宛てた追憶記には、こんな言葉が残されていた。「わがままな自分に付いて来てくれてありがとう。誰に会いたいと言われれば、やっぱり娘でも孫でもない、お前しかいない。お前の優しさに癒されたい」。共に歩んだ人生をたどるようにとき子さんは頁をめくった。

書籍はA5判サイズ、576頁。総合市民図書館(湘南台)と湘南大庭市民図書館に寄贈された。

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