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【選択的夫婦別姓】賛成派・反対派の主張とは?そもそも海外では「通称」はナシ?自民総裁選の争点を深掘り!

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「選択的夫婦別姓」。先生役は静岡新聞の市川雄一ニュースセンター専任部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年9月23日放送)

(山田)今回のテーマは選択的夫婦別姓ですね。

(市川)選択的夫婦別姓問題というのは長年、政治の課題ではあるんですが、今回、自民党総裁選で大きな争点になっているということでもう一度おさらいしたいと思います。

(山田)特に小泉候補が(主張している)。

(市川)そうなんですよ。今自民党から9人の候補者が出ていて、そのうち、賛成というか大きく推進しようとしてるのは小泉進次郎さんと河野太郎さんです。小泉さんに関しては、出馬会見のときに選択的夫婦別姓を大きな目玉として取り上げました。

選択的夫婦別姓制度については、長年、法案を作ってはなかなか出せずにいました。自民党の中の保守派と言われる方たちの反対があって法案を提出することすらできなかったんです。そんな中で小泉さんは「自分が総理総裁になったら1年以内に法案を出す」と言い切ったんですね。しかも、党議拘束をかけないことを断言したんです。

(山田)党議拘束?

(市川)多くの場合、法案を採決する時は、その前段階として党の中で議論して、この案に賛成するか反対するかを党として決めるんです。だから国会で採決する時に、自民党の中で1人だけ反対したりすると、「造反」と言って党で処分されたりします。

党議拘束が大体の場合にはあるのですが、思想信条に関する問題であるとか、意見が分かれるような問題で、稀に党議拘束を外すことは確かにあるんです。これまでに、臓器移植法案について、思想信条に関する命の問題なので拘束を外したことがありましたが、これは珍しいケースです。

小泉さんとしては、「1人1人の議員が個人の考えで夫婦別姓問題に向き合いましょうよ」ってことで投げ掛けをして、それに河野さんも同調した。

明確に選択的夫婦別姓制度に反対と明言しているのは9人の中では高市早苗さん、小林鷹之さん、加藤勝信さんの3人。上川陽子さんもそうですが、残りの方は個人的には賛成という言い方をしていて、ただ議論を十分にしてから検討していこうというちょっと慎重な言い方をしています。石破茂さんもそうですね。

(山田)反対してる方たちはどういう意見なんですか。

(市川)これまで、「家族の絆が弱まる」「家族の一体感が弱まる」というのが、反対する一番の理由とされていました。

今、高市さんや小林さんらは、女性の社会進出で、結婚して姓が変わることによる不利益とか不便さがあるというところをすごく強調しています。「別に選択的夫婦別姓でなくても、同性のままでもいわゆる通称使用を拡大することによって解決できますよ」という言い方をしています。

(山田)なるほど。

(市川)高市さんは典型なんですが、反対してる人たちは、別に今選択的夫婦別姓制度を導入しなくても、通称使用を行政や企業に義務付ければということを主張しています。家族という大きな枠組みがあるから、そこを大きく変えなくても今の不便さや不利益さは解消できる。だからこのままでもいいんじゃないかという主張です。僕は保守派の主張としてはちょっと弱いかなとは思うんですけど。

(山田)そうですね。僕、実は、結婚した時に妻の姓に変えてるんです。今は通称ということで、山田門努のままで活動している。だから、いわゆる戸籍上は山田ではなく、結構面倒くさかったです、手続きとか。今僕の免許証は併記になっています。

(市川)運転免許証もそうですし、パスポート、マイナンバーカード、不動産登記なんかも旧姓の併記は認められるようになったんですよ。これも比較的最近のこと。ただ、併記するっていうのはダブルネームになって余計混乱するし、そのままではなく併記に変えなきゃいけないんですよ。

(山田)そうなんです。

(市川)だからその煩わしさとか不便さは、何も解消されてないと思うんですよね。

専門家が、旧姓併記は海外でなかなか通用しないと指摘していること​は​新聞でも報じましたが、海外はダブルネームに対してものすごく厳しいです。そもそも今、結婚したときに男女どちらかの姓に統一しなきゃいけないっていう事を義務化してるのは日本だけなんですよ。だから海外で「これは通称なんですよ」ってことを説明しても、何のことかよくわからないっていう現象が起きるというんです。

そうしたことも踏まえると、通称使用を法制で拡大することによってそういう煩わしさから開放すればいいじゃないかっていうことをおっしゃるのがいわゆる反対派ですが、いや、そもそも変えていいんじゃないか、というところがあります。

世論調査の数字

(市川)世論が分割されている、賛否が分かれているという話がよくあるんですが、確かに世論調査はいろんな数字が出てきています。

最近、共同通信社が電話調査で自民党支援者と立憲民主党支持層の双方に、「選択的夫婦別姓制度導入に賛成か否か」ということを聞いてるんですが、自民党支持層では賛成41、反対43で、反対の方が多いんですよ。ただ、立憲民主党支持層だと、賛成66、反対22。3倍近く差があるということで、全然政党によって違う。

一方で、今年5月の憲法記念日に共同通信社が行った憲法アンケートの調査だと、選択的夫婦別姓制度への賛成が76%という数字も出ています。

反対派の政治家は「新聞社の世論調査のやり方はちょっと聞き方があんまりよくないんじゃないか」ということをよく言います。彼らが一番よく出す数字が、2021年に内閣府が行った調査の結果です。これだと賛成派が28.9%、反対派が27%と僅差なんです。一番多いのが「現行制度を維持したままその旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がいい」が42.2%で、反対派の主張はここから来ています。賛否が拮抗しているんだから、その真ん中の今のままで通称使用を拡大しましょうよっていう意見なんですね。

(山田)はいはいはい。

(市川)ただ、この調査の原本を内閣府のホームページで見てみると、回答者の45%が60歳以上なんですよ。というのは、郵送アンケートで無作為の人に送っているので、回収率が高齢者の方が高いんですよ。

(山田)なるほど。

(市川)だから答えた人の割合が高齢者が45%になってしまっているデータなんです。はっきり言えば、むしろ、これから結婚する人に聞いてほしいじゃないですか。60歳以上の方は「家族を大事にしなきゃいけない」っていうことを考えるのは何となく分かる気はするんですが、これからの若い人はどうなのかなとは思いますね。

(山田)あとは今バリバリ働いてる人はどういう意見になってるのか。それはまた違いますもんね。

(市川)反対派の方がよく取り上げるのは子どもの問題なんですね。内閣府のアンケートでも、子どもに対する問いがあるんですよ。「子どもにとって好ましくない影響があると思うか思わないか」だと、「好ましくない影響があると思う」が69%「影響がない」が30%と。選択的夫婦別姓を導入したときに、子どもに影響があると思う方の方が圧倒的に多いんですよ。

(山田)へえ〜。

(市川)その理由として、78.6%と圧倒的に多いのが「親と名字姓が異なることを指摘されて嫌な思いをするなどして対人関係で心理的負担が生じる」ということです。これが子どもに悪影響を及ぼす理由の第1とされてるんですね。

(山田)どういうシチュエーションだろう。お前の母ちゃんと苗字違うじゃんとか…?

(市川)からかわれるっていうんですよね。これ、もしもそんなことを言うような人がいたとしてもその友達が悪いですよね?制度じゃなくて。その時こそ大人の出番ですよね。出自や、子供が選べるわけではない名字など、自分の力では変えられないようなことでからかったり茶化したりするのは差別ですからね。それをやっちゃいけないよと大人が諭せば済む話なんです。

今離婚や再婚で親の名字と子供の苗字が違うケースもたくさんある。そういったことを理由に、選択的夫婦別姓はダメなんじゃないかというのは僕はちょっと理解できないんですよね。

ほとんどの夫婦は夫の姓

(市川)もう一つ忘れてはいけないことがあります。今は夫婦同姓制度なんですが、これは戦後すぐに民法改正で導入されています。結婚した夫婦で、今、夫の姓を選ぶ方が96%なんですよ。門努さんは4%の超少数派。

96%って、やっぱりちょっとおかしいと思います。本来日本国憲法というのは、男も女も差は全くありませんよっていうことを明記していて、元々、夫婦同姓制度も男の姓にしなきゃいけないなんて言ってない。ただ、現実として96%が男性の方の姓を選んでるとするならば、これって何か社会に見えない壁があるんじゃないのか?って疑いたくなりますよね。

(山田)いや、ありますよ。

(市川)見えない壁、それが当たり前になっているんじゃないか。あるいは、日本国憲法ができた時に廃止された明治時代の家制度、つまり、男が大事でそこに女の人が嫁ぐものだみたいな価値観がいまだに共有されていて、それが当たり前だっていう社会になってるんじゃないか。

全て夫婦別姓にした方がいいよなんて思っていません。その選択をしたい人に、その選択肢があるということはそんなに悪いこととは思えないんですよね。

(山田)当然「市川さんと結婚して、私の名字が市川になる」、そんな憧れを持ってる方もいると思いますし、僕は全然いいなと思う。

(市川)僕も全く拒否しませんし、相手に「自分の名字になってください」と言われたら、僕ならなるんですよ。

(山田)そうですよね。いやあ、これはちょっとどうなるのか。

(市川)総裁選でかなり大きな争点になると思います。今までは、自民党対野党で考えの違いから争点になっていて、自民党が選挙で勝っていたために前に進まなかった。でも今回は自民党の中で、「進めた方がいいんじゃないか」という人と、「いやいや今の制度を守るべきだ」という人が意見を戦わせているので、これは誰が自民党の総裁になるにしても、何か動き出すのは間違いないのかなと思いますね。

(山田)そこにも注目してこの自民党総裁選、見届けていきましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

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