社会人野球ヤマハのナテルコーチがソフトバンク4軍投手コーチに。 若手育成の手腕に白羽の矢
社会人野球のヤマハで18年間プレーし、この2年間は投手コーチを兼任したフェリペ・ナテル投手(35)が来季はNPBに舞台を移し、福岡ソフトバンクホークスの4軍投手コーチとして手腕を振るうことになった。「18年間、ヤマハのためにという気持ちでやってきた。離れると決まっても『頑張って来い』と背中を押してくれた会社の皆さんにいい報告ができるように頑張りたい」と決意を語った。
指導者として、夢の舞台へ
ブラジル出身。17歳で来日し、今季で現役を退くまでヤマハ一筋。「日本に来た目的は野球をやるため。1年でも長くやりたいというのがぶれない目標。NPBは野球を第一に考えた生活になる。自分の野球に対する思いと一致する部分もあり、自分が成長できる場として、より上を目指していきたいという思いがあった」と決断の理由を明かす。昨年発足したソフトバンク4軍の投手コーチとして、来日間もない10代の外国人選手を含む1、2年目の育成選手を中心に指導することになりそうだ。
ヤマハでは、一つ年上の同僚だった石山泰稚投手が2012年のドラフト1位でヤクルト入りしたものの、自身のプロ入りはかなわず「1カ月くらい落ち込んだ」という。
その後はヤマハのエースとして活躍を続け、2016年日本選手権初優勝、2023年都市対抗大会準優勝に貢献。直近の2年間は投手コーチを兼任し、結果と若手の育成を両立させた手腕が、ソフトバンク関係者の目に留まった。プレーヤーとしては立つことができなかった夢の舞台に、指導者として抜てきされた。
気遣いできる“モチベーター”
きめ細やかな気遣いができる“モチベーター”としても知られる。
社会人の公式戦は都市対抗大会、日本選手権という全国二大大会と、その予選大会が中心。「大事な試合が少ない。そこではどうしても1番手、2番手の投手に頼ってしまう。若手はそういう大事な試合を経験しないと、自信につながらないんです」とモチベーションを保つことの難しさを指摘する。
「社会人は練習の日々が多い。考えながら練習することは難しくて、考えれば考えるほど駄目になってしまう選手もいる。練習でうまくなる選手もいれば、駄目になる選手もたくさんいる。目標と目的がしっかりしていないと上達していかないし、試合にずっと出られないと、目標の設定が難しくなってくる」。
ヤマハでは、そうした悪循環に陥らないように、一人一人と向き合い、役割と目標を与えて達成感を得られるように導いてきた。ヤマハ投手陣からは「ナテルさんの言う通りにやっていれば大丈夫」と絶大な信頼を得てきた。
教え子との再会楽しみに
ナテルコーチに才能を引き出された若手の筆頭が、ヤマハ4年目で現エース左腕の佐藤廉投手(25)。「(今季限りで勇退する左腕)九谷(青孝)はデータを踏まえて狙い通りに投げきれる球種とコントロールがあったが、佐藤もそれに近い状態になってきている」と太鼓判を押す。
さらに、同じブラジルにルーツを持つ高卒3年目の左腕、沢山優介投手(21、掛川西高出)も独り立ちさせた。「最初はなぜ結果が出ないのか自分では分からない様子だったが、今は自分自身の体の理解、調整の仕方が明確になってきた。今季終盤はどの大会のどこで投げるよ、と伝えておけば、しっかりそれに合わせて結果を出すようになった。今年はプロに行かせてあげられなかったけれど、力を発揮する場所を与えてあげれば十分にドラフトにかかるレベルになっている」と、プロの世界での教え子との再会を楽しみにする。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)