「MUSIC NEXUS LIVE 導-SHIRUBE-Vol.1」by U-NEXT HOLDINGS@TOKIO TOKYO――ライブレポート
THENEWLEVEL
トップバッターは同期を効果的に取り入れ、フューチャーベースなど、ダンスミュージック寄りのバンドサウンドを作り上げるTHENEWLEVEL(ザ ニューレベル)。SF的なインストがイントロの「SHALLOW SLEEP」でスタートしたライブは音源で聴くより当然このとながらかなり肉感的。BOOM BOOM SATELITESやyahyelら先人との共通項もあれば、ラウドロックやシューゲイズの側面も見せる。また、英語と日本語を織り交ぜたShin(Vo.)のエフェクトのかかったボーカルも特徴的だ。90’sのシンセポップにも通じる哀愁を感じる「DANCE WITH THE DEVIL」もあれば、開けたメロディを持つ「PHOENIX」もある。Shinは「音楽に限らず、素敵なものに触れると人の心は動く」と話し、自分たちの音楽をとても普遍的なものとして捉えている印象を持った。「いつかもっと多くの人の心を動かしてみせます」と宣言にも似た力強い一言を発した後、ビルド~ドロップというダンスミュージックの手法を生演奏で構築した「EUREKA」を披露。静と動のコントラストが鮮やかだった。25分でフロアを踊らせるのはなかなか難しいけれど、もう少し長く、そして広い場所で見てみたいと思わせるには十分なパフォーマンスだった。
■SET LIST
M1. SHALLOW SLEEP
M2. DANCE WITH THE DEVIL
M3. PHOENIX
M4. EUREKA
THENEWLEVEL (ザ ニューレベル) は、Future Bassなどのダンスミュージックとバンドサウンドを融合する4ピースバンド。楽曲の最も盛り上がるポイントにEDMで見られるドロップを取り入れ、サビにボーカルが居ない楽曲も存在する。音源から一転、ライブでのバンドアレンジ、アグレッシブなパフォーマンスが持ち味。
LIVE INFO
2024年11月17日(日)510 Japn Tour 2024@初台 WALL
11月19日(火)Gloria Vol.23@下北沢 LIVE HAUS
11月20日(水)COMING HOME Vol.125 - AS I AM 5th EP "LOVERS" RELEASE TOUR@アメリカ村 DROP(大阪)
11月29日(金)Clone of Vengeance PRESENTS『MEGATRON』@渋谷 THE GAME
12月7日(土)天牙祭@今池 CLUB3STAR(名古屋)
12月9日(月)SHIBUYA CYCLONE Pre. "dreamboat"@渋谷 CYCLONE
12月15日(月)Lost Back'Point Pre. "INTERSTELLAR"@渋谷 CYCLONE
12月31日(火)SHIBUYA CYCLONE COUNT DOWN EVENT FOJF2425@渋谷 CYCLONETHENEWLEVEL
2024年7月9日(火)配信
THENEWLEVEL「SHALLOW SLEEP」
ポルトギース
続いては結成から1年強にも関わらず、今年の「ROAD TO JAPAN JAM」で優勝し、そのオープンングアクトを務めたポルトギース。メンバー一人ひとりが順にステージに現れ、お辞儀をするという初々しさに驚きつつ演奏を待つ。イントロにハチロクのセクションが加わったライブアレンジと思しき「23」でスタートした。構成もそうなのだが、音源以上にライブで体験すると歌メロの裏をいくギターのオブリガートやドラムのリズム、ベースのフレーズなど全てに工夫を感じさせる。歌を活かすアレンジは先輩であるズーカラデルや、シーンは違うがYogee New Wavesの豊かなアンサンブルを想起させる。スラップベースのイントロから始まった「相合傘」は言葉数も多く、高低差もあるメロディを乗りこなす中村隆太郎(Vo./Gt.)の表現力に耳を奪われる。ちなみに「23」と「相合傘」は一人称が男性と女性で変わりつつ、ひとつの物語になっており、この辺りもライブ構成力の高さだと感じた。「せっかくなので新曲も持ってきた」と披露してくれたのは「深爪」と題された2本のギターのユニゾンが印象的な一曲だった。曲全体の印象はもちろん、細部にメンバーそれぞれのこだわりが光るのもこのバンドの魅力で、「Famy」のイントロのギターには稲垣賢斗(Gt.)が敬愛するレディオヘッドの「No Suprises」を彷彿させるリリカルさも。ラストソングの前には中村が「バズってるとかバズってないとかじゃなくて、自分の感性で聴いてほしい」という意味の発言をして、歌始まりのライブアレンジになった「7月の君へ」になだれ込んでいく。別れの場面で伝えたいことを走りながら発しているような演奏に思わず身を乗り出してしまっていた。彼らにしか作り得ない音楽、バンドであることの意味を実感できるライブだった。
■SET LIST
M1. 23
M2. 相合傘
M3. Famy
M4. 7月の君へ
中村隆太郎(Gt./Vo.)、稲垣賢斗(Gt.)、竹澤地洋(Ba.)、松田 怜(Dr.) からなる4ピースロックバンド。2023年6月結成。曖昧ながらも詩的で確かなメッセージ性をもつ歌詞、力強く繊細な中村の歌声、歌詞やメロディーを活かすアレンジは聴く人を惹きつけ、結成わずか1年足らずで、JAPAN JAMのオープニングアクトを務め、あらゆる層で注目度を高めている。
LIVE INFO
2024年11月22日(金)Hands@下北沢近松
12月6日(金) Cold Hotdog 2nd SG release tour「バンズとあなた」final @下北沢 Reg
12月30日(月)ENDSCAPE COUNT DOWN SPECIAL~Good bye 2024 and…?~@Flowes LOFTポルトギース
リリース2024年9月9日(月)配信
ポルトギース「アウトロ」
Shunsuke Mita
今回の出演者の中で一際、異彩を放っていたShunsuke Mita。シンガー・ソングライターなのだが、楽曲によってメロディもあるラップを取り入れている。まるでコンビニにでも行くようなナチュラルな足取りで登場し、スツールに腰掛けた彼はハンドマイク一本。アコギの弾き語りでもスタンディングスタイルでもないことにまず意表を突かれる。トラックを流しながらのライブなのだが、1曲目はアコースティックギター1本のオケで、どこか懐かしさも感じさせるメロディの「オルゴール」を歌う。連綿と続くフォークのニュアンスに彼の柔らかでニュートラルな声質が新鮮に響いた。続いて音源では女性ボーカルをフィーチャーしている「ennui」。雨の日は君が綺麗に見えるから好きというフックと、日常的な情景を言葉数の多いヴァースという二人分を淡々と歌っていく。レアな表現と佇まいの彼はMCでその謎を「一人のアーティストが一つのジャンルをやるのはなんか違うなと。曲に合うようにジャンルを選ぶ」と自分のスタンスを語り、大いに腹落ちする。3曲目はホーンを交えたグルーヴのあるトラックに乗せて、ここまでとは一転、深いローボイスで「社会人」と題された、社会人の友人へのエールとも取れる曲を披露。さらにスイートなラブソング「Katy」、そしてラストはSNS上の匿名の悪意に着想を得たらしい「Don’t Stop Our Tunes」で、シンプルだが忘れてはいけない素直な気持ちを紡ぐ。メロディでもラップでも言葉に対する意識やセンスに光るものを見せてくれた。
■SET LIST
M1. オルゴール
M2. ennui
M3. 社会人
M4. Katy
M5. Don't Stop Our Tunes
東京都清瀬市出身。2019年よりシンガー・ソングライターとして活動。2020年リリースの「愛溢」では恋愛の繊細な世界を描き若者を中心に人気を集めた。HIIP HOPカルチャーから多く影響を受けており、歌唱のみならずラップも使いこなし、等身大の自分やメッセージを届けている。
Shunsuke Mita
2024年9月18日(水)配信
S.W.A
Shunsuke Mita『tiny room』
kalmia
トリを務めたのは結成から7年を数え、すでに全国ツアーも行っている4ピースバンド、kalmia(カルミア)。ザッピングからひとつの音楽にたどり着くような登場SEからして印象に残ったのだが、ボーカルの千葉一稀が着席のフロアに向けおもむろに「立ちますか」と促し、軽い先制攻撃。オープナーは王道ギターロックにエモやラウドの要素を含む「Parallel world」でいきなりスケールの大きな空間を作り出す。タッピングを盛り込むギターのつかさ、細かいフレーズと豪快さを併せ持つドラムの西村 凌の二人はモダンロック寄りの嗜好を感じさせ、ベースのアヤケントはUKロック的なグルーヴが持ち味と見た。タフなアンサンブルの上に、千葉の澄んだロングトーンを響かせるのも痛快さに拍車をかけている感じ。どちらかといえばモダンロックの厚みを持ちながら、歌の世界はリリカルで繊細。そのバランスも現代の邦楽ロックのひとつの王道だが、kalmiaの場合、歌詞の世界観がかなり日常的かつ繊細。「SAYONARA IRONY」や「スタンドバイミー」でそうした印象を強めた後、「画面の中じゃなくて、今ここで人がやっているので、それを楽しんで行ってください」と、ふだんのライブハウスとは勝手の違うショウケース的な「Live 導 -SHIRUBE- 」のシチュエーションをなんとか動かそうとしている意思が伺えた。そんなMCを挟んだ「黎明讃歌」ではビートの変化にユニークさを見せ、Bメロで一瞬マーチングを挟んで緩急をつける。ギター&ボーカルであるチバは大袈裟に煽ることはなくメンバーの中で一番淡々としているが、人に歌を伝えるエネルギーは歌唱や曲そのものに詰めているのだろう。彼がバンドをやるにあたって影響を受けたというRADWIMPS、ひいてはBUMP OF CHIKENなどの日本のギターロックバンドの系譜を感じた。ラストの「ナスタチウム」ではハイトーンのスキャットも聴かせるという意外性も見せ、もう少し違うジャンル感の曲も聴きたくなってしまった。各々のプレイヤービリティを洗練させると、さらに求心力が高まりそうな予感が残った。
■SET LIST
M1. Parallel world
M2. SAYONARA IRONY
M3. スタンドバイミー
M4. 黎明讃歌
M5. ナスタチウム
千葉一稀(Vo.) 、つかさ(Gt.)、アヤケント(Ba.)、西村 凌(Dr.)の4ピース・ギターロック・バンド、kalmia。壮大なサウンドスケープに乗せたノスタルジーな詩を、千葉の透き通る声で届ける。
kalmia
2024年10月16日(水)発売 ※会場限定
FABTONE Inc.
kalmia「イニシアチブ」
短い持ち時間の中に現在進行形のオリジナルを詰め込んできた4組のアーティストとも、あらゆる機会を捉えて、より多くのリスナーにオリジナルの音楽を届ける意思が溢れていた。ここで名前を知った人も一度彼らの音楽に触れてみてほしい。
(おわり)
取材・文/石角友香
写真/平野哲郎