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小金井・福生・調布など多摩の“地名の魔力”に迫る

TBSラジオ

東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方も一緒に多摩を楽しんでいただきたい番組。
MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。

今週も、ゲストに地図研究家の今尾恵介さんをお迎えして、多摩の“地名の魔力”に迫ります! 今尾さんMCを務めるコーナーも爆誕!?

小金井・福生・調布など多摩の“地名の魔力”に迫る

「地名の魔力」著書、今尾さんと一緒に多摩の地名に迫る!

土屋:今週のゲストのご紹介です、先週に引き続き、地図研究家の今尾恵介さんです!

今尾さん:よろしくお願いします!

土屋:今尾さんのプロフィールの紹介、つる子さんからお願いします!

つる子:1959年生まれ、横浜市出身、日野市在住。幼少期から地形図と時刻表を愛し、出版社勤務を経て、フリーライターに。一般財団法人「地図センター」客員研究員、地図学会「地図と地名」専門部会 主査などを務めていらっしゃいます。もちろん、地図に関する著書をたくさん出されています。

土屋:現在、「地名の魔力」という本を出されていて、これも大変面白くて。今回は、多摩地域の地名のお話を伺いたくて。まず、「小金井」。これも地名の成り立ちが複雑なんですか?

今尾さん:はい。私も「小金井」には1年住んでいたんですよ。

土屋:そうなんですか。

今尾さん:「小金井」は、是政新田、梶野新田などいろんな新田が集まって。多摩の場合は田んぼではなくて畑の新田がたくさんあって集まっていて。その一番大きいのが小金井村だったんですよ。

つる子:はい。

今尾さん:それで明治22年に町村制が施行された時にも小金井村になったんです。その小金井村の中に、大字の梶野新田などがいっぱいあって、飛び地もいっぱいあったので、整理整頓して今の「小金井市」の形になっているんですよ。

土屋:「小金井」という地名って、全国にいくつかあるじゃないですか。どういう成り立ちなんですか?

今尾さん:「小金井」は“良い井戸”という感じで。

土屋:ああ、小金の井戸だ! なるほど!

今尾さん:「小金井」は「国分寺崖線」という崖線があって、だから湧水があるんですね。その湧水沿いに集落が集まって村ができているんですよね。良い水が出るんですよ。

土屋:繋がってきたね~。

つる子:ああ。

土屋:オレなんか、なぞなぞでしか使ったことがないから。“武蔵小金井は子供がいるでしょうか、いないでしょうか”“武蔵、子がねえ”なんつって(笑)。そういうときにしか使わないから(笑)。

つる子:なんだかなあ(笑)。

今尾さん:で、なぜ「武蔵小金井」に“武蔵”がついたかというと、先にい栃木県に東北線(宇都宮線)の小金井という駅ができちゃったんですね。

土屋:はいはい!

今尾さん:「武蔵小金井」の方は最初、お花見用の臨時駅として大正13年に出来たんですよ。それが常設の駅になったんですね。だから、2番目なので、武蔵がついた、と。

土屋:そういうことだ! 「武蔵小金井」は“ムサコ”と略してね。

今尾さん:あれ、武蔵小杉じゃないんですか(笑)?

つる子:(笑)。

土屋:“ムサコ”といえば、どっちだ、と。

今尾さん:ああ、それは踏み絵なんですね(笑)。

土屋:みんなが便乗して。え? 武蔵小山もあるだと!? 

多磨墓地駅→「多磨駅」でドミノ改称に!

土屋:そして、続いでは税収が高いでお馴染みの「府中」です。この「府中」には、駅名が変わった場所がある、と?

今尾さん:「西武多摩川線」という珍しく単線の電車がありまして。そこに「多磨駅」という駅があるんですね。「磨」の字の多磨ですね。あの駅はかつて「多磨墓地前駅」と言っていたんですね。

土屋:言ってましたね。

今尾さん:「多磨墓地前」ってダイレクトでわかりやすい駅名でしたよね。その駅の東側に関東村という米軍の住宅があったんですよ。しばらく使ってなかったのが日本に返還されて。で、再開発で「東京外国語大学」などが出来まして、病院が出来る計画もあったので、墓地前で電車を降りて学校に行くというのもなんだしということで。

土屋:まあ、たしかに。心情的にちょっとね。それで「多磨駅」に変わったと。

今尾さん:それでとばっちりを受けたのが、「多磨駅」の南隣にあった「北多磨駅」なんですよ。「多磨墓地前駅」が「多磨駅」に変わっちゃったものだから、南側に「北多磨駅」があるのはおかしいじゃないかということで。とばっちりを受けて、地元の地名から「白糸台駅」に変わったんですね。

土屋:そういうことなんだ!

つる子:とばっちりで変わったんだ!

今尾さん:“ドミノ改称”ということですね(笑)。

土屋:(笑)。

多摩の地名クイズ①~「福生」

土屋:“地名の魔力”について今尾さんに伺っていますが、ここからは勉強して聴くだけだと頭が固まってしまう人もいるので、柔軟にクイズ形式でやっていこうかな、と。地名のクイズの出題、お願いします!

今尾さん:(低音ボイスで)問題です。

土屋:え、今なんか司会者っぽかった(笑)。もう1回お願いします!

今尾さん:(低音ボイスで)問題です。

土屋&つる子:(笑)。

今尾さん:Q)「福生市」の“ふっさ”、古い発音はちょっと違ったようです。なんと言ったでしょうか?

土屋:福生」=福に生きる、という漢字ですよね。「横田基地」がある所ね。わかった! フッキ! 元ヴェルディにいた助っ人外国人! 違う?

つる子:私は・・・福笑(ふくしょう)!? 三遊亭福笑みたいな(笑)。

土屋:落語家にいそう! 福生出身とかで。正解はなんでしょうか?

今尾さん:両方とも間違えでございます。「福生」の昔の読み方は、“ふっつぁ”と呼んだそうです。

土屋:ええ。“ふっつぁ”!?

つる子:ピッツァみたい(笑)。

今尾さん:昔の読みはけっこう発問が違ったそうで。今よりも子音も母音も多かったようなんですね。日本語の母音、今は5つですけど、韓国語は7つありますよね。昔の日本語は7つくらい母音があったので。

土屋:はい。

今尾さん:だから、童謡のたなばたさまの♪笹の葉サラサラ~ なんて、♪ツァツァのファ、ツァラツァラ~ ですよ(笑)。

土屋&つる子:(笑)。

今尾さん:だから羽柴秀吉なんて“ファシバ・ヒデヨシ”だそうです(笑)。

つる子:(笑)。

今尾さん:だんだん口が疲れないようにね。

土屋:そもそも、「福生」という地名はどんな由来なんですか? 福が生きるなんて素敵な感じですよね。

今尾さん:いかにも当て字なんですけど、もともとは“総が繁茂する土地”という説があるそうです。総というのは、麻ですよね。昔、“総の国”というのが千葉県にあったんですよ。“下総の国”と“上総の国”で、下総、上総という地名はそこから来ていて。総=福生から来ているという説があります。

土屋:そこから当て字にして。

今尾さん:昔から“好字二字”といって、縁起の良い字は二文字という縛りがあるんですね。国の名前、郡の名前、号の名前は二文字を当てようという。それで、福生も二文字があてがわられたんじゃないかと言われています。

多摩の地名クイズ②~「国分寺市恋ヶ窪」

土屋:続いての問題もお願いします!

今尾さん:(低音ボイスで)問題です。

今尾さん:Q)「国分寺市恋ヶ窪」の地名は、悲しい恋愛伝説が由来とされていますが、全国にある「恋」が付く地名は要注意です。なぜでしょうか?

土屋:僕、地元が「国分寺市恋ヶ窪」なんですよ。それで前に、国分寺恋ヶ窪の本を頂いたことがあるんですけど・・・読んでないことがバレますね(笑)。

土屋:「恋」が付く地名は要注意、なにがか!?

つる子:心中など、恋で悲しいことが起きた可能性があるから。

土屋:これ・・・水関係じゃないですか!? 魚の鯉が関係していて。水が溜まりやすいとか。

今尾さん:恋愛の「恋」という字は当て字と言われています。昔、「恋ヶ窪」エリアには「鎌倉街道」があったので。畠山重忠と遊女の夙妻太夫という人が恋をして。畠山重忠は合戦で亡くなるんですよね。悲しんだ夙妻太夫が身を投げたことから「恋ヶ窪」という地名になったということなんですけど。それは地名が先にあって、後付けでそういう物語でね。

土屋:はいはい。

今尾さん:最初に地名があって、その字から連想して物語を作るというのは多いんですよ。で、恋というのは、地名学的には、崩壊する崖地というか崩れる。だから、崩れるという字で“くえる”と昔は言ったんですよね。くえや恋は崩壊地名ということが多いです。ただ、それだけではないです。地名学としてそういうのが多いという指摘があります。

土屋:「恋ヶ窪」は「国分寺崖線」の近くでもあるので、そういう可能性があるかもしれないと。まあ、そんな地名だと怖くもあるから、LOVEの恋で。

多摩の地名クイズ③~「調布」

土屋:それでラスト問題いきましょうか! 多摩地名クイズ、お願いします!

今尾さん:(低音ボイスで)問題です。

今尾さん:Q)「多摩川」沿いには、かつて同じ名前の町村が3つもありました。ズバリ、それはなんでしょうか?

つる子:え?

今尾さん:同じ名前ですよ。「◯町、◯村、◯村」と、3つあったんですよ。例えば、大川町、大川村、大川村が3つあった、みたいな。

つる子:えー、わからない~

今尾さん:一つだけ、多摩に今でも残っています。狛江、府中、国分寺、小金井とか。

土屋:「多摩川」沿いでしょ!?

今尾さん:ヒント、「多摩川」沿いに遡ってみれば・・・

土屋:今、川崎から遡りますよ。二子玉川・・・

今尾さん:もうちょっと先・・・「小田急線」の鉄橋がある・・・

つる子:礼央さん!

土屋:さらに上るんでしょ!? 「立川」!?

今尾さん:「立川」は上り過ぎです!

土屋:ということは、その間か! 「京王線」!?

今尾さん:「京王相模原線」の鉄橋があります。

土屋:ありますね、あそこら辺の駅・・・

つる子:礼央さん!

今尾さん:今も残っている市町村・・・

土屋:市町村!?・・・「調布」!

今尾さん:そう、「調布」です! だいぶかかりましたね(笑)。「狛江」まで行った時にもう来るかなと思ったんだけど(笑)。一気に「立川」まで行っちゃって(笑)。

土屋:「調布」が3つあったんですか!

今尾さん:あったんですよ。1つは、下流側から行くと“荏原郡調布村”。これは田園調布に名残がありますね。

土屋:田園調布か!

今尾さん:次が、今の「調布市」ですね。それが“北多摩郡調布町”だったんですよ。3つ目がずっと遡って、今の「青梅市」に“西多摩郡調布村”というのがありました。

つる子:へえ!

今尾さん:今でも「多摩川」に「調布橋」というのがあるんですよ。、長渕とか、「東青梅」の南側にありますよ。

土屋:田園調布から気付ければカッコよかったね。なぜ、3つもあったんですか?

今尾さん:「多摩川」沿いというのがミソなんですね。「多摩川」では昔々、古代ですね、「府中」の“武蔵国府”に布を収めていたんですよ。「多摩川」に麻を晒して良い布にして、貢物として収めるんです。租庸調の“調”ですね。

土屋:租庸調の“調”だ!

今尾さん:調として布を収めていたので「調布」と言われて。昔は枕詞のように「調布多摩川」と言われていたんですよ。だから、「多摩川」の絵図に「調布多摩川の絵図」というのがあるんです。多摩川といえば調布でしょ!ということで、明治22年の町村制施行の時に、たくさんの村が合併したんですけど、新しい村や町を作る時に何をすべきかということで、「多摩川」に沿っているから調布町、調布村にしようと。あちこちに「調布」の地名ができたんですよ。

土屋:「ゲゲゲの鬼太郎」の「水木しげる先生」も「調布」在住だったから、一反木綿も!

今尾さん:「多摩川」で晒して(笑)。ただね、荏原郡の調布と、北多摩郡の調布はとても近いので、紛らわしいということで、田園調布の調布は町村制施行する時に同じ調布町になったら紛らわしいので、東調布町にしたんですよ。

土屋:へえ。

今尾さん:その流れで20年くらい前まで“東調布警察署”があったんですよ。今は田園調布警察署になって東調布の名残は無くなったんです。

つる子:へえ。

土屋:やっぱり、地名って日本の国土をわかりやすくする“説明書”だったりするわけじゃないですか。

(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)

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