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【京都観光の予習】京の食文化~普段のごはんからハレの日のごちそうまで~

京都観光Naviぷらす

京都市は、三方を山々に囲まれ、寒暖の差が大きい内陸盆地特有の気候で、四季の移ろいが鮮やか。肥沃な土壌と、鴨川をはじめとした清流や豊富な地下水などの良質な水に恵まれ、自然との共生を大切にしてきました。
永きにわたり都がおかれ、日本の政治、文化、宗教の中心地として栄え、全国から多様なものが流入。その中で、人々は暮らしの営みを積み重ね、公家、武家、僧侶などとの文化的なかかわりから、その行事やしきたりが日常の生活に定着するなど、多様な文化の影響を受けながら、食文化を育んできました。
普段のごはんからハレの日のごちそうまで、四季を大切にする京都のおいしい食べもの。その豊かな食文化を知り、旅を楽しみましょう。


暮らしに育まれた料理


京都の家庭料理は、食材の持ち味を生かす出汁が味付けの基本になっています。食材を無駄なく大切に使う「始末する」心を大切に、季節の食材を使いきるよう工夫されています。


おばんざい



おばんざいとは、一般的に普段のお惣菜のこと。にしん、油揚げ、ちりめんじゃこ、なまり節などの食材に、京野菜を中心とした旬の野菜や乾物を炊き合わせたものが主流です。材料も端っこまで使い切り、作ったものは残らないように食べ切って、出来るだけ食べものを捨てないようにする。そんな、使いまわしの工夫が凝らした料理です。「おばんざい」という言葉がきかれるようになったのは、一説によると昭和30年代に随筆活動をされていた大村しげさんらがこの言葉を連載記事で使われたのがきっかけのようです。


だし巻き卵



関東では卵焼きというと甘辛いものが主流のようですが、京都の卵焼きといえばだしの効いたふっくらとやわらかな「だし巻き卵」。かつおと昆布でとっただしに薄口しょうゆを加えたシンプルで上品な味付けです。うどんにしてもだしを食べるといわれるほど、だし好きの京都人の嗜好を反映しているのかもしれません。京都には「だし巻き卵」専門店がたくさんあります。錦市場をはじめ、各地の商店街など、食べ比べてお土産にしてみるのもおすすめです。


うどん



京都のうどん屋には、「けいらん」、「のっぺい」、「たぬき」といった独特のお品書きが並びます。これらはすべてあんかけスタイルのうどんです。けいらんはあんかけの「卵とじ」。のっぺいはいろいろな具がのったあんかけの「しっぽく」。「たぬき」は刻んだ油揚げがあんでとじられているといった具合。このあんかけには、おろししょうがが付きもので、だしの効いたあつあつのあんとともに食べれば、底冷えのする寒い冬も身体の芯から温まります。また京都の場合、いわば麺よりだしを食べると言ってもいいかもしれません。そのため、だしとよく絡み合うやわらかな麺が主流です。


にしんそば



甘辛く棒炊きにしたにしんを、だしの効いたかけそばとともに食べる京都独特のそば料理。明治時代に発案されました。
材料の身欠きにしんは、もともとアイヌの保存食でしたが京都には北前船で運び込まれて出回りました。生魚が手に入りにくかった京都では乾燥したものを米のとぎ汁で戻し、丁寧に炊いて食べたのです。「にしんなす」などは代表的なお惣菜で、そんな京都のお惣菜をヒントに生まれたのが「にしんそば」。昔から南座の芝居見物の帰りに食べることも多かったようです。


親子丼(かしわ)



京都では鳥肉を「かしわ」と呼びます。庶民の食卓には欠かせない食材で、今でも専門店がたくさんあります。また、愛宕山のふもとにある水尾地区は名産の柚子(ゆず)と鳥鍋料理のもてなしで人気があります。幕末あたりには、木屋町通周辺に鳥料理店が軒を連ねたようで、あの幕末の志士、坂本龍馬も鳥(軍鶏)の水炊きを食べたという話が伝わります。そんな京都の鳥料理のエッセンスを味わうには親子丼がおすすめ。ピリリとした山椒をふりかけて食べるのも格別です。


お茶漬け(ぶぶ漬け)



「ぶぶ漬け」とは、お茶漬けのこと。「ぶぶ漬け、どうどす?」と、訪問先で勧められたら、そろそろお帰りくださいという挨拶であるという京都のぶぶ漬け伝説。まことしやかに語られていますが、本来は「何にもないけど、ぶぶ漬けでも食べてゆっくりしていってね」という京都流の控えめな表現のようです。京都の人々にお茶漬けは身近な食べ物でした。江戸時代の商家などでは、朝や晩にしょっちゅうお茶漬けを食べていた記録があります。なぜ朝晩かというと、当時は昼にご飯を炊く習慣があったからです。お茶漬けは、冷めたごはんをおいしく食べる知恵でもありました。ちりめん山椒、漬物、塩昆布など、お茶漬けの友もたくさんあります。


おでん・祇園豆腐



しょうゆだしで煮込むおでんは、江戸の地で育まれたものですが、もともとの姿をたどると、豆腐を串にさして味噌を塗って焼く、田楽に行き着きます。そんな元祖おでんの姿を思わせるのが、「祇園豆腐」。約450年前から八坂神社境内で売られてきたという豆腐田楽です。そのおいしさもさることながら、店頭で行われた豆腐の早切りパフォーマンスが人気を博しました。女性がまな板の前に座って技を披露する姿は、江戸参府中のオランダ人もわざわざ立ち寄るほどの評判だったとか。普通のおでんもいいけれど、京都の歴史ある元祖おでんも試してみてほしい味です。


ねぎ焼き



京都でお好み焼きというとイメージがわかないかもしれませんが、町を歩けば古い店から最近の新しいチェーン店まで見つかります。昭和初期に関東で生まれた説があり、その後大阪で発展していったといわれています。ねぎ焼きも大阪で生まれたお好み焼きの一種ですが、九条ねぎの産地でもある京都では、キャベツの代わりにねぎをたっぷり入れたねぎ焼きが好まれています。こってりしたソース味と、ねぎ独特の風味が、きっと京都人の嗜好に合っているのでしょう。


洋食



日本の洋食は、明治期以降、西洋料理を日本料理に吸収しようとする過程で生まれた、いわば和洋折衷料理です。京都には、明治後期から大正期に創業した西洋料理店や洋食店があちこちにあり、いまでも当時をしのぶことができます。また日本で初めてフランスパンを製造販売したパン屋もあり、パン好きな現在の京都人の嗜好のルーツを思わせます。牛肉消費量は日本のトップクラスを誇り、こってり味も大好きな京都人の食生活。伝統的な和食のイメージが強い京都ですが、洋食文化をひもとくと、新しいものを好む、またひと味違った京都の一面が見えてきます。


京のごちそう


季節や行事を重んじる京都の料理を代表するのが、湯豆腐や懐石料理、鯖ずしなどです。豪華な料理には細やかな工夫がみられるのが特徴です。


鯖ずし



ハレの日の料理といえば「すし」。祇園祭など、おめでたいときに「鯖ずし」を食べる習慣があります。塩と酢で締めた鯖を棒状にしたすし飯にのせ、ふきんで包みながら形を整え昆布を巻き、竹の皮で包んだ押寿司で、12時間ほどつけてから昆布を取って食べます。海から遠い京都では鮮魚が手に入りにくかったため、生魚に近い塩鯖は、特別な日にだけ味わえる食材だったのでしょう。鯖は福井県の若狭湾と京都を結ぶ鯖街道を通って運ばれたことが知られています。ルートはいく通りもあったようですが、京都では上京区の出町が終点とされています。


うなぎ



江戸時代初期の料理書に、「宇治丸」という名が登場し、京都の宇治川産がおいしいとされていました。うなぎの熟れずしという意味でも使われていたようで、今では幻の味のひとつとなっています。かば焼きという調理法が普及するまでは、うなぎはすしだねに用いられることが多かったようです。昔から「江戸の背開き、京阪の腹開き」といわれます。最初に関西で腹開きが考案されましたが、江戸では武士の切腹を連想したため嫌がられ、縁起担ぎで背開きになったとか。蒸しを入れる関東風に対し、関西では焼きだけで仕上げるのが普通。うなぎのかば焼きのことを「まむし」と呼ぶのも関西風です。


すき焼き



京都の牛肉消費量は、全国トップクラスを誇ります。明治期から愛されてきた牛肉の調理法は、文明開化の味でもある、甘辛いすき焼きです。東西で煮るか焼くかが分かれますが、京都のすき焼きはもちろん関西風。最初に肉を焼いてじっくり味わってから、徐々に野菜や豆腐などを入れていきます。昔は、人々が牛肉の味に慣れなかったため、砂糖と割り下のほかに、臭み消しのために味噌が入ったようですが、次第に使わなくなっていったそうです。すき焼きをはじめとする牛肉料理が普及した背景には、明治政府が目指した食の近代化政策がありました。


もてなしの食


公家、武家、僧侶、茶道など多様な文化の融合により生まれたおもてなしの料理。床の間や器、座敷から見える庭園などで食空間を演出した「しつらえ」と併せて、五感で味わいます。


精進料理



ルーツは中国にあり、日本で本格的に定着するのは鎌倉期以降のこと。栄西や道元など中国に渡って禅宗を学んだ僧侶たちの日中交流によって精進料理の普及が促されたといわれています。単に肉食を避けるというものではなく穀物の粉を利用した中国の粉食の影響を大きく受けています。特に小麦タンパクのグルテンを使う麩は代表的な食材。精進料理は寺の中だけに留まらず、一般の人々の中にも普及していきました。いまや京名物となっている豆腐、湯葉、麩などは、この精進料理とともにはぐくまれた食材です。


懐石料理



茶の湯とともに発達した料理。懐石という言葉は、もともと「禅の修行僧が温かい石を懐に入れて空腹をしのいだ」という故事に由来しています。千利休(この時代には会席と書きましたが、江戸時代には懐石と表記されます)が理想とした一汁三菜という形式は、精神性を大切にする侘び茶の美意識の中ではぐくまれました。「一期一会」という考え方のもと、心をこめて客をもてなすために、あらゆる趣向が凝らされるようになりました。素材や組み合わせ、器、盛り付け、料理を出すタイミングといった懐石料理の工夫の数々は、現在の日本料理でも大事な要素となっています。


有職料理



日本最古の料理様式は平安時代の大饗(だいきょう)料理といわれています。平安貴族の酒宴料理ですが、皿数が偶数であることや、中国風の揚げ菓子、8種唐菓子があるなど、中国文化の影響を色濃く受けています。有職料理は大饗料理の流れをくんだ公家風の料理のことで、一般的には武士の力が強まる室町時代に決められた公武一体の礼式にのっとって作られた料理を指しています。いにしえの大饗料理だけでなく、武家の正式料理とされる本膳料理の影響も受けつつ、独自の式典料理として発展していったのです。京都には今でも有職料理や生間流式包丁の伝統を受け継ぐ料理店があります。


普茶料理(中国風精進料理)



江戸時代に中国から渡来した黄檗山(おうばくさん)萬福寺(まんぷくじ)の開祖、隠元(いんげん)禅師によってもたらされたといわれる中国風精進料理。すべて「もどき料理」で、動物性の食材は一切使わず、豆腐や麩、野菜などの植物性の食材で作られているのです。そもそも寺がお客をもてなすための工夫から生まれたもので、修行僧などは普段口にできない料理といわれます。普茶料理には、飲食は平等という仏教の教えが基本にあり、「普(あまね)く衆に茶をふるまう」という意味があります。もてなしの心が、ユニークなもどき料理に表されているのです。


参考文献
「京都」×わカル - 京都の伝統・文化・暮らしのガイド 京都市産業観光局観光MICE推進室


記事を書いた人:京都観光Naviぷらす編集部
「京都観光Naviぷらす」は、京都市観光協会が運営する「京都旅をより快適により深く楽しむ」記事サイトです。旅のいろは、交通活用術、京文化の入門知識、京都人への取材記事などをお届けします。


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