年長夏から探し始めた放課後等デイサービス。大変だった36件からの選定、見学…決め手は?【ユーザー体験談】
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
大変だった放課後等デイサービス探し。わが家の場合は……
この春小学校1年生になった息子は、全領域DQ(発達指数)が境界域で、医療機関での診断はまだ受けていませんが、日頃の行動を見ているとASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)の特性がそれぞれ当てはまるように感じています。
私が放課後等デイサービス、通称「放デイ」を初めて意識したのは、息子が年長の夏、就学相談を経て特別支援学級への進学を決めた時でした。私の住む地域には36の放課後等デイサービスがあり、特色もそれぞれ。放課後等デイサービス探しは「やることが多い」「関係者が多い」「出向く場所が多い」「よく分からない用語がいっぱい」と大変でした。
わが家の放課後等デイサービス探しについて、そして今現在通っている2つの放課後等デイサービスの「決め手」についてお話します。
地域には36の放課後等デイサービスが!個別問い合わせ、説明会参加で情報収集
実は年長の夏まで療育を受けたことがなかった息子。息子の発達検査を担当されていた発達支援センターの方から「今の息子さんは、園での集団生活から得ているものが大きいので、マンツーマンや小集団の療育よりもそちらを優先したほうがいいと思う」と言われていたためでした。それもあって私は「児発(児童発達支援)」という言葉も、「受給者証」の取得の仕方も知らない状態でした。
私が住んでいる自治体には36の放課後等デイサービスがありました。ネットで検索しホームページを見ましたが、どの施設も良いことしか書いていないのでなかなか決めきれません。ひとまず家から通いやすい10件に絞り、個別問い合わせを始めました。
電話の時点で「もういっぱいなので、見学に来ていただいても受け入れられません」と言われたこともありました。また、電話で見学を申し込み行ってみると、重度の障害のある方の利用が80%以上ということが分かり、実施されているプログラムなども、発達グレーゾーンの息子向けではないことを知ることもありました。
私は、放課後等デイサービスによって利用者層が違うということを全く知りませんでした。先方も忙しい中時間をつくって対応してくださったのに、申し訳ないことをしたと思っています。
見学申し込みをする際は、「うちの子にはこんな特性があって、そんな子が利用できる放課後等デイサービスを探しているんですけど……」といった感じで、子どもの障害の程度をさりげなく伝え、「うちは特別支援学校の生徒が中心なんです」とか、「うちにはお子さんと似たタイプの子がたくさん来てますよ」などといった回答を先方から引き出せれば、お互いのミスマッチが防げると思いました。
そして秋、市役所で行われた「放課後等デイサービス説明会」に行きました。前半は申し込み方法の説明、後半は、大会議室に移動して、市内のいろんな放課後等デイサービスのブースをまわりながら、気になった所に見学の申し込みをする……といった流れでした。
スタッフの方に話を伺いながら、「スタッフの方の熱量や知識は本当にバラバラだな」とも知りました。たくさんのスタッフの方と話すのは疲れますが、直接話すのはとても大事なポイントだったと思います。私はこの時のスタッフの方の印象で「見学を申し込む・申し込まない」を決めました。
わが家が通う2ヶ所の放課後等デイサービス。その決め手は?
今現在、息子は2つの放課後等デイサービスに通っているのですが、それぞれの施設に異なる「決め手」があります。
1ヶ所目の放課後等デイサービスの決め手となったのは、「体験利用後の息子の反応」でした。その施設は、自宅からギリギリ徒歩圏内と近く、責任者の方の説明もしっかりしていたので、「息子との相性さえ良ければ、ここに決めよう」と思いながら体験に行きました。
体験は1時間ほどで、息子と先生方とほかの利用者の子どもたちだけで過ごすスタイルでした(後日、責任者の方から、そのときの息子の様子とそれを踏まえどのようなプログラムを提案したいかについて話がありました)。
体験が終わる時刻に迎えに行くと、息子が目をキラキラさせながら出てきて、「楽しかった!次はいつ行くの?」。息子に合っていたんだなと思いました。
また、体験利用の日は、すでにその施設を利用している男の子が出迎えてくれて、その子ととても仲良く過ごせたとも聞きました。息子は不器用さなどもあったせいか、当時こども園では若干自信喪失気味で、家庭でも消極的な発言をよくしていました。そんな頃に、息子のイキイキした姿を見ることができたのが嬉しくて、即決しました。
そしてもう1ヶ所の放課後等デイサービスの決め手となったのは「私との相性」でした。
こちらは自宅からやや遠く、子どもをマンツーマンで見てもらえる点は魅力だったものの、1日の利用時間は60分だけ、施設での送迎対応はなし……と保護者の負担が大きそうな印象があり、契約するかどうかをギリギリまで悩んでいました。
ただ、責任者の方の説明がとても分かりやすく共感できる内容だったのです。運営会社の前身が学習塾で、集団授業が苦手な子どもたちがいることへの問題意識から、発達支援の事業展開に至ったこと、そのため、放課後等デイサービスでは母体の塾のノウハウを生かした学習指導なども取り入れられるとのことでした。
また、この放課後等デイサービス責任者の方の優しさと厳しさの加減が私にとって非常に好ましく、私よりおそらく20歳くらい年下の女性にもかかわらず、「なんだか合う!この人いいな」と感じました。これが決め手となってこちらにも通わせていただくことになりました。
実際通ってみたら……?
この2ヶ所に決めた結果、現在息子も私も楽しく通えています!
それぞれのスタッフのみなさんは聞き上手で、息子の話にも保護者の話にもしっかり耳を傾けてくださいます。また、スタッフ間の連携もきちんと取れている印象で、「この人とあの人とでは、言ってることが違う」みたいなことがないのも信頼できます。
うちの息子も含め、放課後等デイサービスに通う子どもたちの中には感情のコントロールが難しいお子さんも少なからずいると思うので、その分、スタッフの方々が精神的に安定した方だと、安心感があります。
発達障害がある子どもの育児では、園や学校、相談事業所、児童発達支援・放課後等デイサービスとの連携が鍵になってくることがしばしばあるので、やり取りが密になってもストレスを感じなくて済む人が放課後等デイサービスの責任者だとやりやすいと実感しているところです。
息子は今のところ、学校生活(特別支援学級、交流級のいずれも)、学童保育とも特に違和感なく楽しみながら過ごせているようです。とはいえ、これまでとは生活リズムが変わり、教室では毎日新しい経験があるので、帰ってきて「疲れた~」と口にすることもあります(保護者の私も同じかもしれません)。
そんな今の息子にとってこの2ヶ所の放課後等デイサービスは、リラックスして楽しめる居場所になっているように思います。
イラスト/ネコ山
エピソード参考/苗
(監修:室伏先生)
放課後等デイサービスの選び方に関する実体験の共有をありがとうございます。放課後等デイサービスをどのように選んだらよいですか、というご質問はとてもよくいただきますので、このような経験談は、放課後等デイサービスの利用を検討している多くの親御さんにとって非常に参考になると思います。
著者さんのように、実際に見学をされたり、スタッフの方々とお話をして、施設ごとの違いを感じ取ることはとても重要ですよね。ほかの親御さんのご意見も参考になる部分もあると思いますが、あるお子さんにとっては居心地がよく得られるものも多い放課後等デイサービスであったとしても、賑やかな場所を好まないお子さんにとっては騒がしすぎたり、お子さん自身が興味を持てる療育内容でなければ期待される効果が得られなかったり、支援員やほかの利用者さんと相性が合わなかったり、などの可能性があります。
放課後等デイサービスを選ぶ際には、現実的に通える範囲かどうか(送迎の有無も含めて)、お子さんの障害の程度や特性に療育内容が合っているかどうか、お子さんの興味や性格に合っているかどうか、お子さん・ご家族がストレスなく気持ちよく通えるかどうかなどを考える必要があります。これらの点を考慮すると、選ぶのはとても大変です。それでも、相性の良い放課後等デイサービスに出合い、お子さんが充実した小学校生活を送れることを願っています。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。