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日本神話とアニミズムが息づく、フジイフランソワの芸術世界(読者レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

会場風景


一度みれば忘れられない絵画と印象的な作家名。日本画家フジイフランソワさんの個展が大阪府の東大阪市民美術センターで開催中です。


《威を借る猫》2017


フジイフランソワさんは、江戸絵画の引用や、古事記など日本の神話をモチーフにし、作品を描いています。そう聞くと難しそうと感じられてしまうかもしれませんが、実物をみればクスっと笑わされたり、かと思えばドキッとしたり。そして精緻さにも驚かされ、独特な世界へ引き込まれます。


《やなぎにかえる》2009 作家蔵


この写真の作品は、一匹のカエルが柳の枝に飛びつこうとしている様子が描かれています。そしてよく見ると柳の葉は「カエル」たち。タイトルにある「かえる」は蛙でもあり、還る、替える、変える……。驚きと感心が一気に押し寄せ、言葉あそびの妙を感じます。


《百に一足らぬものたち》六曲一双 作家蔵


《笹つゝみ》2007 座敷和菓子シリーズの一つ


またフジイフランソワさんの作品には、目や口、手がついた古道具や、和菓子にうさぎやカワウソなどの動物や付喪神を合体させたシリーズがあります。人間や動物だけではなく、無機物も含めすべてのものに霊魂、霊が宿っている「アニミズム」の思想が表現されています。


鹿のシリーズが一堂に会す会場風景


《ヤマサチヒコ》2015 個人蔵


近年、制作されている鹿シリーズが並ぶ一室は、すこし厳かな空気が漂っています。どれも《このはなさくや》《ククリヒメ》など古事記や日本書記にでてくる神々のタイトルがついています。食物の女神「オオツゲヒメノカミ」とタイトルされている作品の鹿の角には、枇杷や桃、茄子やきのこなど食べ物がたっぷりと実っています。たとえ「オオツゲヒメ」が食物の神様で、古事記に登場すると知らずとも、鑑賞者は存分に楽しむことができます。

本展担当の田中学芸員は「まずはフジイさんの描いた作品そのものを味わってほしい。」と話されます。本展示会場の最後には、作品のヒントになる物語や資料などがまとめられたスペースがあり、手に取ることもできるます。

展示を通して、日本の風土や歴史が育んできた豊かな文化をあらためて感じ取ることができます。東大阪市は 「ものづくり」「ラグビー」で有名ですが、日本書記や古事記にも登場するエリアであることも今回、はじめて知りました。そんな場所でぜひフジイフランソワさんの世界を味わってください。


第3展示室には参考本や資料がずらり


本展のメインビジュアル 題字はフジイフランソワさんによるもの


東大阪市民美術センター外観 なんと花園ラグビー場に隣接された建物


[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2025年2月5日 ]


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