京都の夜空にドローンが描いたピンクのメッセージ[Drone Design ]Vol.57
10月30日に京都の清水寺でエスティ ローダー カンパニーズとの共催による「乳がんキャンペーン」をテーマにしたドローンショーがSkyDriveにより実施されました。世界遺産を舞台に描かれた夜空のメッセージはどのように届けられたのでしょうか。
日本でもだんだんおなじみになってきたドローンショーですが、今回は世界遺産の一つに登録されている京都の音羽山清水寺(以下、清水寺)を舞台に開催されるということで、現地取材をさせていただく貴重な機会を得ることができました。
ドローンショーは閉館後の清水寺を舞台に開催された
ショーは「乳がんのない世界」をめざして30以上活動を続けるエスティローダーグループと、その社会活動に賛同してエスティ ローダー カンパニーズ(以下、エスティ ローダー)と2013年から「乳がんキャンペーン」を共催する清水寺によって実現しました。
開催当日は毎年実施されている、本堂をピンクにライトアップするピンクイルミネーションと、乳がんによって亡くなられた方への追善供養法要も執り行われ、とても厳かな雰囲気に包まれていました。
乳がんキャンペーンにあわせてピンクイルミネーションに彩られた清水寺の本堂
「清水の舞台」でも有名な清水寺は、世界遺産「古都京都の文化財」の1つに登録される寺院でもあり、その敷地内というとても厳しい条件でのドローンショーに取り組んだのがSkyDriveでした。
どちらかといえば空飛ぶクルマや物流事業のイメージが強いのですが、今年4月からドローンショー市場への参入を発表しており、10月1日に東京の増上寺で同じくエスティ ローダーによるドローンショーを成功させています。
関連記事:SkyDrive、10月1日にピンクリボンをモチーフとしたドローンショーを実施
今回清水寺でも実施される内容は同じで、360機のドローンによってピンクのメッセージが夜空に描かれました。
清水寺の敷地内で360機のドローンが飛ぶ姿は圧巻
今回のショーについて、SkyDriveの担当者であるドローン事業部営業・マーケティングチーム リーダーの古田宗一郎さんにお話を伺ったところ、きっかけはエスティ ローダー側からの依頼で、企画から2,3ヶ月ほどかけて実現に至ったそうです。「ドローンショーに対する関心が高まり、エンターテインメント性に加えてメッセージを多くの人たちへ最大限に伝える方法としても期待されている」とのことでした。
エスティ ローダーの関係者の方は「乳がんキャンペーンは世界各地で実施していますが、これまで清水寺と10年以上キャンペーンを続ける中で、より多くの人たちにメッセージを強く印象づけるために、日本で初めてドローンショーという方法を採用しました」とコメントされていました。
清水寺成就院の住職である大西英玄さんも「キャンペーンに対して一人でも多くの方に関心をもってほしいという関係者のみなさんの思いを視覚化し、それを大勢の人たちに見ていただける可能性があるということで実現しました」と、メッセージ性に注目されているのがわかります。
それでも敷地内でドローンを飛ばすことに不安がなかったのか尋ねたところ「もちろん保険を含めてきちんと対策はしていますが、その上で技術面ではSkyDriveさんが万博で空飛ぶクルマを飛ばす計画に関わっていることや、事故が起きる確率は日常的にクルマを運転している人が事故に遭うのと同じぐらいという説明に納得しました。また、清水寺は日々みなさんが訪れてくださる現在進行形の宗教施設であることや、エスティ ローダーさんとの長い関係と社会的意義を考えて、今回は半歩踏み出したという感じです」と言うことでした。
当日は本堂を見下ろす高さにある「子安塔」に向けてメッセージが見えるようにショーが行われました。気温は低かったものの、予報では雨だった空はやや曇りという程度で、風もないという状態でした。
ちなみにドローンが離着陸するエリアは本堂の真下に近いところで、狭い敷地内に360機のドローンがずらりと並ぶところはなかなかに圧巻でした。
当日は360機のドローンが使われた。
ショーは午後6時45分と午後8時の2回あり、離着陸まで10分ほどの間に、シンボルのピンクリボンのマークや「乳がんのない世界」のメッセージなどがみごとに描かれました。
撮影エリアはさらにドローンに近く、これほど間近でショーを見たのは初めてでした。見学に来ていた人たちも「こんなにはっきりアイコンやメッセージが描けるのか」という驚きの声があちこちで聞かれ、かなりインパクトがあったのだと感じました。
ドローンショー映像
https://youtu.be/fd0mYqbay_ghttps://youtu.be/TjeL1hdsQ-A
清水寺が高いところにあるうえに照明がほとんどないので暗く、ドローンの高度もかなり高いことから、その様子は京都市内をライブ中継する定点カメラでも捉えられていたようです。
他にも知り合いから、知人が自宅のマンションから撮影したという写真が届き、メッセージの発信という目的はクリアできていたといえそうです。
とにかく初めての試みながら、もろもろの制限がある中で無事にショーを成功させられたことは、ナイトタイムエコノミーにも力を入れる京都の夜空で、ドローンショーを見られる機会が増えるきっかけになるかもしれません。
数が増えれば演出のアイデアも増えるはずなので、これからどんなショーがデザインされるのか楽しみにしたいところです。
※撮影機材:Osmo Action 5 Pro / 機材提供:システムファイブ