静岡県立中央図書館の移転 入札参加企業ゼロ 建設会社が明かす入札しない2つのワケ
■東静岡駅南口に移転 2028年夏に開館予定
静岡市にあるJR東静岡駅南口に計画されている新しい県立中央図書館の移転をめぐり、建築工事の入札が1社もなかった。市は「人材不足」を要因としているが、公共工事の経験がある県内の建設会社からは別の理由が挙げられている。
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静岡市にある県立大学に隣接する県立中央図書館は老朽化が深刻で、静岡県は東静岡駅南口の県有地に移転する方針を2017年に決定した。昨年7月には基本設計を公表。当初は2027年度の開館を目指していたが工期延長によって2028年度の夏に変更した。総事業費も資材費や人件費の高騰を受け、180億円から298億円に修正した。
新しい図書館は城郭をイメージした鉄骨9階建てで、現在の2倍以上となる200万冊の書籍を収蔵する計画となっている。県は10月18日に建築工事の入札を告示し、3日後の21日から11月12日まで参加を募った。しかし、入札に参加した企業は1社もなかったという。
県は入札が不調に終わった要因について、開幕が近づいている大阪万博をはじめとする工事に人手が取られていることを挙げている。ただ、県の入札に参加して実際に建築工事を経験した建設会社の1つは、人手不足以上に入札が敬遠される2つの理由があると話す。
「最低入札額が低すぎます。建設業ではない人から見ると、金額が大きくて儲けも大きいように感じるかもしれませんが、工事を請け負った場合は赤字の可能性が高いです。さらに、今後も資材や人件費の高騰は続いていくので、最低入札額を上げなければ、なかなか手を上げる企業ないでしょう」
この会社は、県の計画と最低入札額が建設業界の事情を反映していないと指摘する。また、入札ゼロに終わったもう1つ理由があるという。
「一昔前と違って、公共事業の実績は会社の信頼やステータスにつながるとは言えません。工事で利益を上げるのが難しく、工事の実績がアピールにもならないので、入札に参加しようとは思えないですよね。スピード感に欠ける行政との仕事はストレスも大きいですから。企業にとってメリットはないですね」
入札が不調だったことを受け、県は複数の事業者にヒアリングして原因を分析する。その後、再入札に向けた対応を進めるという。最低入札額の見直しや費用を抑えるための計画変更など、何らかの手を打たなければ、図書館の開館は2028年夏に間に合わない可能性もある。
(SHIZUOKA Life編集部)