アメリカ3大デニムの一つ「ラングラー」を知っているか? カウボーイに愛し、愛されたブランドの物語。
アメリカ三大デニムブランドの中でもっとも後発であるラングラーは1947年に誕生。だが、どのデニムブランドよりもカウボーイたちを献身的にサポートし、ともに歩んだ。その結果、1974年にはプロロデオカウボーイ協会より公認され、相思相愛となったのだ。
どのメーカーよりも カウボーイへ愛があった。
世界有数のヴィンテージラングラーコレクターであるカナマルさん。今年には自身が所有するラングラーのアーカイブを1冊にまとめた書籍を出版し、世界各国から称賛されている。ラングラーを根底から理解する氏は、その本質がカウボーイにあると断言。
「ラングラーは世界で初めてデザイナーを起用したカウボーイデニムブランド。カウボーイを意味するブランド名の通り、誰よりも彼らへ愛を持って、必要とする機能を追求し続けました。その一方で全米各地で行われていたロデオ大会へ協賛するなど、カウボーイとともに文化を築いた存在でもあります。ロデオ大会優勝者に送るチャンピオンジャケットの文化は、ラングラーが作ったと言っても過言ではない。その功績を知れば、カウボーイがラングラーを誇りにした意味がわかりますよ」
「ゴールドゲート」代表・リック カナマルさん|1970年生まれ。東京都出身。世界的なラングラーコレクターとしても知られ、ラングラー本社からも信頼が厚い。今年には自身の著書『ラングラーアーカイブス』を出版した
Wranglerはカウボーイに寄り添い、文化を作った。
1950s 12MJZ
ロデオ大会の優勝者へ寄贈されていた通称チャンピオンジャケット。市販品にはない赤のサテンを用いており、胸には優勝者のネームが入るのが特徴。貴重なギミーブック付きのデッドストック。非売品のため、現存数は極少量だ。
胸には優勝者の名前がチェーンステッチで入っている。
市販品にも付属するギミーブック。子供向けの内容で、製品やロデオチャンピオンの功績などをわかりやすく紹介。
1950s 111MJ
ラングラーを象徴するデニムジャケットである111MJ。塩ビパッチの仕様から1950年代前半の個体だとわかる。チャンピオンジャケット同様の刺繍が施された当作は、ロデオ会場のスタッフか、店頭などのアドバタイジングとして作られたのだろう。
1955年頃より割れやすい塩ビパッチから布パッチへ変更される。こちらは貴重なデッドストックのため、品番のプリントが確認できる。
1959年にアイオワ州マリオンで開催されたロデオワールドチャンピオンシップの公式パンフレット。表紙のイラストにはラングラーを穿いたカウボーイが描かれ、裏表紙は同社の広告に。
ロデオ会場の名脇役が身にまとった戦闘服。
ラングラーのアドバタイジングの中でも数少ないのが、ロデオ会場のピエロのために作った制服。一見、お気楽に見えるが、彼らは観客を盛り上がるだけでなく、ライダーたちの命も守った。
1950s RODEOCROWN PANTS
ピエロ役のスタッフが着用するため、そのキャラクター性も考慮し深い股上を用いたサルエルパンツのようなシルエット。この個体は実際に会場で着用されており、随所にライダーを守った際に受けたと思われるダメージが。その激務を物語っている。
1950s RODEO CROWN SHIRTS
一見、カジュアルなシャツに見えるが、ピエロ役のために作られた希少なロデオクラウンシャツ。衣装のためタグにはサイズ表記がなく、通常のウエスタンシャツにはないエルボーパッチが付く。テキサスのディーラーより購入した。
1970年代には鐵馬乗りたちも魅了した。
全米プロロデオカウボーイ協会の公認ジーンズとなったラングラーは、1970年代に多角化する。タフなウエアを求める鐵馬乗りへもアプローチし、1979年にハーレーと公式ウエアを販売した。
1960年代からのロングセラーデニムジャケットである124MJをベースとしたハーレーとのコラボレーション。タフなブロークンデニムを使っており、一種独特なエイジングに。トリコロールカラーのタグも新鮮である。
当時のカタログでアンラインドデニムベストと紹介されている。ラングラーのアイコンとなったタフなブロークンデニムを用いている。ベースはハーレー社のタグのみであるが、この個体はバイカーがカスタムしている。
希少なフラッシャー付きのデッドストック。インラインでも展開されていたブーツカットモデルである945DENに、ハーレー社のタグをバックポケットに付けている。1964年頃に登場し、定番となったブロークンデニム。
1979年のハーレー社のカタログには、ラングラーとのコラボレーションがオフィシャルウエアとして紹介されている。タフなウエスタンウエアを鐵馬乗りも求めた。