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「コクーン アクターズ スタジオ」第1期生と松尾スズキ、杉原邦生がおくる新作ミュージカルの公開稽古が開催

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『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』公開稽古場より

2025年3月20日(木祝)~23日(日)東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、COCOON PRODUCTION 2025/Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』が上演される。この度、公開稽古および稽古場会見レポートが公開された。

稽古場会見レポート

「コクーン アクターズ スタジオ」第1期生の発表公演、『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』の開幕まで間もなく。初日の約1週間前の3月12日、マスコミを招いての公開稽古が開催された。松尾スズキによる新作書き下ろし、杉原邦生の演出で送る新作ミュージカルは、名もない “アンサンブル”俳優を題材とした青春群像劇。この日公開されたのは1幕3場、いろいろな舞台人たちが集まる隠れ家的な店「BAR TORIDE」の場面だ。♪店の誰か とにかく誰か 時に人間ですらない 右の脚立を左に移動させるだけ……無名の俳優たちが抱えた悲哀と本音を、陽気に歌って踊る姿はおかしくも真剣そのもの。登場人物たちの姿と思いは「まだ何者でもない」生徒たちの姿と二重写しとなり、台詞の全てがリアルに響く。松尾が生徒たちへの愛ある叱咤激励を物語に織り込み、杉原がそれを丁寧に演出し、役者たちもそれに真剣に応えてきたことが伝わってきた。

公演は3月20日(木・祝)から23日(日)、休館中のBunkamuraシアターコクーンを特別に復活させて上演される。この舞台をきっかけに、明日の演劇界を担う人材が誕生するかも――舞台を愛する多くの演劇ファンに、若者たちの晴れ舞台を見届けてほしい。

稽古後に行われた松尾スズキ(主任/演技基礎、『アンサンブルデイズ』作・音楽)と杉原邦生(演技基礎、『アンサンブルデイズ』演出・美術)の会見コメントは以下の通り。

ーー1年間を振り返っての感想

松尾:第1期生はとにかく、レッスンが終わっても質問攻め。アグレッシブに食らいついてくれる生徒ばかりでした。周囲の演劇人は自分を含めシャイな人たちばかりでしたし、こういったタイプの人たちと巡り合うこと自体が新鮮な体験。最近の大人計画の稽古場なんて、稽古が終わって少しスタッフと打ち合わせしている間に「もう誰もいない……」なんて寂しい現場ですから。時間も労力もいとわず頑張る彼らの姿に、「ああ自分たちも昔はそうだったな」と初心に戻るような日々でした。個性がバラバラの彼らが1年をかけて徐々に団結してくれましたし、演劇は1人では成立しないので、この姿勢を培ってくれたことはありがたいです。

杉原:大学で演劇を教えたことはこれまでに何度かありましたが、養成所という場所で演劇を教えるのは今回が初めて。スタート時は僕も生徒もお互いに手探り状態でしたが、刺激し合いながら、段々といいレッスンができるようになったと実感しています。松尾さんもおっしゃるように、とにかく質問が止まらないんです(笑)。卒業公演はとにかく思いっきりやってほしいですし、僕も思いっきり彼らと向き合って、最後まで諦めずに取り組みたいです。

ーー台本を読んだ印象

杉原:第一印象は「すごい本」です。彼らが演じることで深まる要素がふんだんに盛り込まれていて、全員に見せ場があって、社会の不条理に対して真っ向からぶつかっていく松尾さんらしさも盛り込まれている。同時に、生徒たちに対してはもちろん、劇場、演劇界……さまざまなことへの愛情をすごく感じて、あたたかい本だなとも思いました。

ーー劇作について

松尾:若い登場人物がたくさん出てくる芝居を書いたことがなく、かなり苦しみましたが、楽しんで書きました。あと、キャスト24人全員に見せ場がある作品を……と考えると自分で書くしかなかったという(笑)。まあ、今後のために残しておきたかった気持ちもあります。また一流の講師陣に参加していただいたので、レッスンの成果が出せるようなミュージカルシーンも入れたかったんです。まだ何者でもない俳優を、何者でもない俳優が演じる残酷さを、自分たちの身で味わってほしいという思いもあります。

ーー生徒たちが舞台に立つこと、観客の目にさらされることへの期待

松尾:長年劇団をやっていて身にしみて感じるのが、とにかく人の目にさらされることが一番の修行だということ。そして笑いの要素がここまで必要とされる発表公演はまずないでしょうね。全部が全部ウケるとは考えていないですし、「スベり散らかすんじゃないか……」という不安はありますが、スベることも知らずに旅立つのは「面白くなりたい」と願う俳優にとって不幸なことですから。スベることも修行の一つ、お客さんもそこは温かく見守ってください。

杉原:今日も記者の皆さんにご覧いただくことで、いつもの彼らとはまた違う表情が見られました。芝居はお客さんとのコミュニケーションでつくり上げていくもの。稽古場では「自分たちの中だけで成立させないで」「とにかく前(観客)に開いて」と言い続けてきました。本番で彼らがどこまでこれを実践できるか、達成できるか、大いに期待しています。

ーー「朱雀ver.」「玄武ver.」二つの配役それぞれの魅力や特徴について

杉原:朱雀は演技をきっちり構築するタイプの俳優が多く、輪郭がしっかりしていると感じます。玄武は比較的、動物的な感性の俳優が多く、勢いのある印象です。両方に出る俳優もいますが、相手役の違いによって変化する部分もありますし、両バージョン全く違うものになると思います。

松尾:S席で3,800円、A席で3,000円、コクーンシートが2,000円と、そもそも価格破壊を起こしているような値段ですし、ぜひ両方を観比べていただきたいですね。

ーー観客へのメッセージ

松尾:シアターコクーンの舞台で2カ月以上稽古をし、そのまま同じ場所で本番ができるという、なかなか稀有な企画。劇場というものが身に染みた人たちの肉体が一体どういうものになるか、僕自身も楽しみですし、ぜひ演劇ファンの皆様にもご注目いただければと思います。

杉原:フレッシュな俳優たちがシアターコクーンの大舞台で暴れ回る青春群像劇です。一度でも夢を持った経験がある方、そして、挫折したり諦めた経験のある方……全ての皆様に届く作品に仕上がるはずなので、ぜひ劇場にお越しください。

(左から)杉原邦生、松尾スズキ

取材・文:川添史子

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