佐々木尽が挑戦する世界ウェルター級王者ブライアン・ノーマン・ジュニアの実力は?左右ともパワー十分の強打者
6月19日に国内で36年ぶり世界ウエルター級王座挑戦
プロボクシングのWBOウエルター級2位・佐々木尽(23=八王子中屋)が6月19日、東京・大田区総合体育館で同級王者ブライアン・ノーマン・ジュニア(24=アメリカ)に挑戦することが決まった。
19勝(17KO)1敗1分けのハードパンチャー、佐々木は世界初挑戦。ミニマム級からミドル級までの13階級で唯一、日本から世界王者が唯一誕生していないウエルター級で初のベルト奪取を狙う。
世界で最も権威があるとされる老舗ボクシングメディア「ザ・リング」が毎月更新している、全階級を通じて「最強」を決めるパウンド・フォー・パウンドランキングには、2位にスーパーバンタム級の井上尚弥(大橋)、8位にバンタム級の中谷潤人(M.T)、10位にフライ級の寺地拳四朗(B.M.B)と3人の日本人ボクサーが名を連ねている。
それだけでも日本ボクシング史上に残る凄いことなのだが、いずれも軽量級だ。日本人には重いリミット147ポンド(66.68キロ)のウエルター級では、まだまだ世界の壁は厚い。
世界王者が誕生していないどころか、世界挑戦すら難しいのが現実。佐々木の挑戦は、2009年10月にウクライナでWBAウェルター級王者ビチェスラフ・センチェンコ(ウクライナ)に判定負けした佐々木基樹(帝拳)以来、実に16年ぶりなのだ。
さらに国内での世界ウエルター級王座挑戦となると、1989年に東京・後楽園ホールでマーク・ブリーランド(アメリカ)に4回TKO負けした尾崎富士雄(帝拳)以来、なんと36年ぶり。いかに日本人ボクサーに縁遠い階級か分かるだろう。
無敗のサンティランを左右アッパーでKO
佐々木が挑むブライアン・ノーマン・ジュニアとはどんなボクサーなのだろうか。
2024年5月、ジョバニ・サンティラン(アメリカ)に10回KO勝ちでWBOウェルター級暫定王座を獲得すると、正規王者だったテレンス・クロフォードがベルトを返上したため、ノーマン・ジュニアが正規王座に昇格した。
2025年3月にはデレク・クエバス(プエルトリコ)に3回TKO勝ちで初防衛に成功。ここまで27勝(21KO)2無効試合と無敗を誇る。
身長は173センチと佐々木とほぼ変わらない。右構えでガードが堅く、スピードもパワーもある。
無敗対決だったサンティラン戦では10回に右アッパーでダウンを奪い、左アッパーでノックアウト。サンティランが背中から倒れた瞬間にレフェリーがストップする、背筋が凍るようなKOシーンだった。日本ではアッパーの名手が少なく、佐々木は十分に対策を練っておかないと餌食になる危険性がある。
王者を下がらせれば勝機も
また、クエバスは右フックからの左ストレートで倒しており、左右パンチともパワー十分。佐々木も左フックの強さでは引けを取らないが、足を止めての打ち合いはリスクが高い。
佐々木は力むあまりフックが大振りになり、相手に見切られることも少なくない。その点、ノーマン・ジュニアはインサイドから攻める接近戦も得意で、まともに勝負すると世界ウエルター級王者の実力をまざまざと見せつけられることになるだろう。
おそらく勝つにしても負けるにしてもノックアウト。普通に予想すれば、日本人初のウエルター級王者誕生の可能性は低いと言わざるを得ない。
佐々木が勝機を見出すとすれば、相手を下がらせる展開に持ち込むこと。得意の左フックは警戒されるので、左ジャブや右の使い方がカギになる。判定勝負は考えず、序盤から飛ばして自分のペースに持ち込めば番狂わせが起きる可能性もある。
36年ぶりに日本で行われる世界ウェルター級タイトルマッチ。ボクシングファンならずとも、歴史的一戦をまぶたに焼き付けておくだけの価値があることは間違いない。
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記事:SPAIA編集部