【「朝霧JAM2024」終了 】 森山直太朗さんの名曲に、身じろぎもせず
静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は10月12~13日に富士宮市で行われた野外音楽フェスティバル「朝霧JAM2024」から。
「朝霧JAM2024」が13日、無事終了した。リポートは後日アップするが、本日は2日間を通して、最も心に残った楽曲について記したい。
それは、2日目レインボーステージに登場した森山直太朗さんの「生きてることが辛いなら」である。実はこの曲、同じ静岡県で今年5月に行われた「FUJI&SUN」でも最終曲として演奏された。会場に霧が立ちこめる中、ギターの弾き語りで届けられたこの曲、感極まった観客からの大きな拍手がステージの解体作業開始後も鳴り止まなかった。
約半年ぶりにフェス会場でこの曲に再会したわけだが、朝霧JAMでも森山さんの「気」の入りようは凄まじいものがあった。今回はピアノ伴奏だったが、だらりと両手を下げ、少しずつ、少しずつ左右に体の向きを変えながら語りかけるように、力を抜いて歌っていた。
第一声から会場はしんと静まりかえり、上空を飛ぶジェットの音が鮮明に耳に届いた。間奏時も「直太朗!」の無粋なかけ声以外は、客席から一切音がない。皆、全身全霊で森山さんの声を、言葉を聞いている。
伸びやかな歌声の最後の一音が消えた瞬間、観客から嵐のような拍手。顔を伏せる人、目頭を押さえる人。誰もが確かに、この曲に体が反応していた。「また会う日まで。それまでお元気で」。にこやかにステージを去る森山さんに、拍手はいつまでも終わらなかった。
森山さんは、2024年の静岡県富士山麓に2度、とてつもない感動を持ち込んだ。こんな雰囲気を作り出せるアーティスト、そうはいない。(は)