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「高校生になっても放デイに通い続ける?」中3まで週4以上通った自閉症息子の答えは

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「高校生になっても放デイに通い続ける?」中3まで週4以上通った自閉症息子の答えは

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

学童へ行かなくなった太郎

ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、小学1年生から放課後等デイサービス(以降、放デイ)と学童に通い始めた。小学校2年生の途中から、太郎が学童へ行かず帰宅することが増えていった。

学童では、太郎が一人浮いている感じがあった。太郎に対して一人のスタッフが付いている状態であると、学童の先生から困り顔で報告があった。困り顔をされると私も心苦しくなるので、きっと太郎も居心地が良くない状況だったのではと今となっては思う。

困り顔で「特に周りの子どもたちに何かするわけでもなく、どこに座ろうかと長いことクルクルと動き回っている」と報告を受けた時は、回らせておいてくれれば良いのでは……と正直思った。

プールの催しの時は、「サポートで来ていたスタッフから離れませんでした。独占欲が強いですね」と嫌な感じで言われた。それは太郎が水が怖いからなのに……事前に伝えたことを覚えてくれていないのか。太郎は独占欲が弱いし、私への執着も薄くて寂しいくらいなのに……と私は思った。

そうして、「子どもを見る視点がどうも違うな」という気持ちが大きくなっていった。

放デイでの先生たちとの出会い

放デイでは、困り顔で太郎の行動について報告されることはなかった。「面白いことがあったんです」「かわいいです」などポジティブな報告が多かった。保護者のメンタル援助を考えているのかと想像したが、それでも先生たちの子どもを見る視点がやはり違うと感じた。

時には、太郎の特性によるこれからの課題について真剣な報告もあったが、決して困り顔ではなく、太郎や私の将来を考えてくださっているのを感じとることができた。

専門的知識を持ったスタッフの方の存在、個性を認めてれる環境が、私と太郎にとって居心地がとても良かった。

その後、学童に通うのはやめた。放デイは、通わない時期もあったが、小4から再び通い始めて今に至る。

放デイが、いつしか太郎の心の拠り所に

太郎と放デイのスタッフの方々の関係性は、日を重ねるにつれて深まっている。自分の特性を理解し、サポートしてくれる先生方の前では素の自分を出している様子だ。放デイに「毎日でも行きたい」という気持ちがあるようで、中学生になっても、ほぼ休むことなく、週に4~5日通っている。

同級生には秘密にしている「コマが好き」ということも、放デイの先生たちには伝えているし、放デイ内でコマの大会まで開催してもらっているようだ。その日、帰宅した太郎は「全然勝てんかった。先生は強かった」と悔しそうに、そしてどこか楽しそうに感想を聞かせてくれた。

「高校生になってからは、放デイどうする?」数ヶ月前に太郎に聞いてみた。
すると太郎は「うん」と、すぐに返事をした。

もちろん今と同じ放デイに。

まとめ

ここまで太郎が放デイに通い続けている理由は、やはりデイサービスの先生たちとの信頼関係にあると思います。先生たちは自分を受け入れてくれる安心できる人たちであり、放デイという場所もまた居心地がいいものとなっているようです。

高校に進学後も、今と変わることなく、週に4日~5日通う予定です。家族のようなつながりができているため、私も頼りにしている場所になっています。あと3年間、きっとあっという間ですが大切に通所をしていきたいと思います。太郎自身は、あと3年という期間をどう思っているのか……気になるところです。

執筆/まゆん

(監修:新美先生より)
放課後等デイサービスの利用について聞かせていただきありがとうございます。
放課後等デイサービスの利用年齢は制度上は原則6才~18歳となっています。事業所によってまちまちではありますが、ほかに高校生の姿があまり見えなくても、継続利用は受け入れているという事業所は多いので希望があれば聞いてみるとよいかもしれません。

慣れた人間関係があり、信頼できる職員のいる放デイに、思春期以降も通いたいとご本人が思えている場合、小学生の時はただ楽しく遊ぶだけだったのが、ちょっとした日常のことや進路のことなどを話したり相談したりといったことがしやすい場になるかもしれません。家庭でも学校でもない第三の居場所(サードプレイス)として、ホッと一息できる場所はかけがえのないものです。多くの場合は中学、高校と年長するにつれて、放デイはもういいよと言われることが多いかもしれませんが、お子さんご本人が行きたいと思える場に放課後等デイサービスがなっているのだとしたら、よい関係が築けていてラッキーといえるかもしれません。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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