ネットでは見えない景色『スター・ウォーズ セレブレーション』には愛と熱狂があった
2025年4月18日〜20日に幕張メッセで開催された『スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025』の会場を取材して、私は驚き、胸が熱くなった。ネットやSNSで日常的に見かける『スター・ウォーズ』への罵声や冷笑とは真逆の、まっすぐな愛情と熱狂に溢れていたからだ。
海外からもメディアが集まり、米の記者も参加していた。彼女は自身の記事にこう記している。「極端に言えば、『スター・ウォーズ』のファンダムは今、最も有害なファンダムだと言われることが多い。長年ここで活動してきた者として、私はこのファンダムにおいて信じられないほど残念な瞬間をいくつか目撃してきたが、同時に最高の瞬間もいくつか目にした。しかしながら、今年の『スター・ウォーズ セレブレーション』で得られた教訓に比べられるものはない。事実、今年のセレブレーションはこのファンダムに多くの希望を与えてくれた」。
『スター・ウォーズ』ファンダムの過激さを示す事例は、枚挙にいとまがない。顕著な例は1999年公開の『エピソード1/ファントム・メナス』にまで遡る。インターネットが普及していない時代のこの作品に登場したジャー・ジャー・ビンクスはファンの嫌悪の対象となり、演じたアーメッド・ベストは世界中から絶え間なく届く誹謗中傷に心労し自殺未遂ともなった。
ディズニー買収後の『スター・ウォーズ』銀河はSNS時代と重なり、作品の出演者や製作者には差別的な言説も多分に含む誹謗中傷が相次ぎ、問題となっている。YouTubeで「アコライト」と検索して、そこにどんな文字が並んでいるかを見てみよう。
2024年にで配信された実写ドラマ「スター・ウォーズ:アコライト」は、有害なファンダムによって最も過激な批判に晒された作品の一つだ。確かに「アコライト」は賛否を呼ぶ作品だった。だが、どんな作品にも完璧はあり得ない。
個人的な失望を誇大解釈して他人にも押し付ける必要はない。ところがオンライン上では、作品に関わったすべての人間が再起不能になるまで叩きのめさなければ気が済まないような人々による極端な言説ばかりが目立つ。実際にルーカルフィルムは、早い段階で「アコライト」を打ち切り終了すると発表した。元々、シーズン更新の約束などなされていなかったにも関わらずである。
しかし筆者が「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン2025」の現場で見たのは、作品を温かく称える笑顔のファンたちだけだ。特に印象的だったのが、2日目のLIVEステージに「アコライト」ストレンジャー役のマニー・ジャシントが登壇したトークショー。ジャシントは熱狂的なファンの拍手と歓声で迎えられ、ステージでは作中に登場したストレンジャーのレプリカマスクが手渡された。「被って!」とのファンのリクエストに応えてジャシントは着用し、歓声を浴びながら高々と右手を掲げた。
「アコライト」ストレンジャー役マニー・ジャシントがLIVEステージに登場!ストレンジャーのヘルメットがサプライズで手渡されました。
熱狂の観客からは「Season2! Season2!」の大合唱!— THE RIVER (@the_river_jp)
「セレブレーション」に来場した10万人(期間中合計)の来場者たちも、それぞれ『スター・ウォーズ』の一部に受け入れがたい想いを抱いているかもしれない。しかし、「セレブレーション」に足を運ぶようなファン ──とりわけ、会場の7割ほどを占めていた海外からの来日客たち── は、わざわざネガティブなことを口にしない。「セレブレーション」で筆者が見た景色は、隅々にまで行き渡った正統な愛と、文化や世代を超えたすべての人々が『スター・ウォーズ』を自発的に保護し、独自に表現する姿だった。会場の熱狂ぶりは、以下の公式動画によく現れている。
ネット上のファンダムの姿と、現実の人間の姿は違っていた。「アコライト」打ち切りと報じられた時、オンラインで特に目についたのは「ざまぁみろ」と嘲笑する声だった。対して「セレブレーション」のステージからジャシントが去ろうとする時、大勢のファンたちは「シーズン2!シーズン2!」と大合唱した。「混沌はなく、調和がある」。ジェダイの戒律の一文である。
ファンダム自体が作品の保護者ともなり、同時に破壊者ともなり得る。この銀河にはまだ温かさがたくさん残っている。「スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン」で真のファンダムを目撃した筆者は、そのことを強く再確認した。希望は、死なない。