Aile The Shota「向日葵花火」インタビュー――Aile The Shota が春夏秋冬に贈るラブソング、夏。
──「SAKURA」に続く春夏秋冬シリーズ第2弾シングル「向日葵花火」がリリースされました。夏ソングの制作における出発点から聞かせてください。
「まず、“春夏秋冬、全部恋を歌おう”というコンセプトで、タイトルとテーマを考えていって。お花をいろいろ調べていたんですけど、“みんなが知らない花だと意味ないな“っていうのが前提であって…」
──誰も知らない花だと違う?
「そうですね。共感性の高いものにしたいと思っていたので、いろいろと調べた結果、“向日葵”を使った何かがいいと思ったんです。ただ、「SAKURA」と同じようにローマ字で「HIMAWARI」は違うと思って。かつ、“花火”を歌いたかったのもあったので、“向日葵”と“花火”をつなげた造語にしました」
──タイトルから作っているんですか?
「そうですね。<向日葵花火>ってフレーズがハマるような人に対して想いを馳せる曲にしようって考えていました。当初は「さよならシティライト」的な逆の目線で書き始めていたんですけど、なかなかしっくりこなくて…結局、主人公を男の子にしました。かなり苦戦しました」
──どんな意味の造語と言ったらいいですか?
「曲の中で言っている<向日葵のように笑うから>っていうか…「Foolish」と同じく、憧れてしまうような眩しさをもった女の子の光に当てられちゃっている感じかな?」
──花火はどんなモチーフですか?
「一番儚いものだと思います。そのバランスですね。煌びやかなものと儚いもの。その恋心を<向日葵花火>にして。そういう、なんとなくのイメージから作っているので、あとは、この曲を聴いてくれた人がそれぞれでキャッチしてほしいですね。もともとない言葉なので、正解はないんです。<向日葵花火>って聞いた時に、今後、何が浮かぶかは聞き手次第でいいと思っています。それが故に、その他の部分ではすごく補っていて。歌詞で全部の説明がついている状態で、“存在しない言葉をパスする“みたいなポップスの作り方はありだと思います。曲としては、一番近い距離の親友に対する恋心の曲ですね」
──今年1月に配信リリースした「アノナミダ」に続き、☆Taku Takahashi(m-flo)さんとのコライトですね。
「実は去年の夏頃にこの曲のデモがあって、「アノナミダ」と同じくらいの時期に作っていたんです。☆Takuさんの2stepが大好きだったので、“2stepで夏の曲作りましょう”っと言って、メロディもある程度入れていたデモをいろいろ練り直して、何度もセッションを追加させてもらいました。歌詞やメロディ、展開もすごく迷いながら変えたんですけど、0から100まで全てこだわり尽くしました。ミックスの音も☆Takuさんがアレンジしてくれたものをもらって、自分が組み替えてみたりとか…。今の音楽シーンだと、ビートメーカーのことをプロデューサーと呼んだりもするんですけど、僕にとっては、Chaki Zuluさんと☆TakuTakahashiさんはいわゆるプロデューサーとしての側面が強いです。ボーカルディレクションもしっかりしてくれますし、最初から最後までずっとセッションしあいながら、一緒に曲の正解を探し出していくので、すごく育ててもらいました」
──☆Takuさんとの関係性を少し振り返ってもらってもいいですか?
「最初はBMSGのオーディション『THE FIRST』の最終審査課題曲「Shining One」のときです。そこで初めて会ったあと、BE:FIRST「First Step」にライターとして参加して…僕にとってそれがほぼ初めての楽曲提供の体験だったんです。僕とSKY-HI、Novel Core、☆Takuさんとで制作したんですけど、その時はまだ自分自身がライターとしてそんなに開放されていなかったので、そんなに打ち解けていない状態ではあったんです。その後に、eillやRUNG HYANG、向井太一君とか、共通の知人たちとで集まる機会があって。そこに☆Takuさんも来てくれて、一緒にカラオケも行きました。プライベートでお会いするようになって、そこからちょこちょこ現場でお会いしたり、☆Takuさんがやっているインターネットラジオ局『block.fm』でレギュラー番組持たせてもらったりして、ようやく“曲、やりましょう”ってなりました」
──それが「アノナミダ」ですよね。
「そうです。その頃、☆Takuさんといい曲について話し合う機会がたくさんあったんです。「アノナミダ」の歌詞は一日で一気に書いたんですけど、サビはレコーディング日をリスケしたりとかするくらい書き直して…。リリースされている「アノナミダ」は4つめのメロディーなんですよ。☆Takuさんのトラックはコードがすごく動いてくれるので、メロディのアイデアが浮かびやすいんですよ。“すごくいいの、出た”ってなっても、“もっとありそう”って思えちゃうトラックで。だから、「アノナミダ」も「向日葵花火」も共通して、そこは大変でしたけど、そうじゃないと、これほど“いい曲だな”って自分でも思えるメロディは浮かばなかったと思います」
──☆Takuさんと話す中で、“いい曲”の定義は固まりましたか?
「言語化は難しいんですけど、やっぱりメロディの魅力だと思います。心がグッとくるメロディかどうか。さらに、カラオケで歌いたいか?、歌えるか?、歌って気持ちいいか?、みたいなことは、このセッションの頃はよく考えていました」
──この「向日葵花火」はより歌ものになっていますね。
「“鼻歌で歌える曲ってすごく大事だよね“ってことも話していました。今回、これまでと一番違うのは、ディレクションの部分です。歌い方が今までの曲と圧倒的に違うんですよ。自分の中ですごく強く出していて。それがポップスの強い要素の1つなのかな?って思うようになりました。声の芯がしっかりと強く出ています。僕の曲はダンスミュージックで、トラックも踊れるものだから、ビートが強い曲が多くて。そうなった時に、イージーリスニングとして馴染んでるボーカルも好きですし、それを今まではずっと出していたんですけど、そこに負けないものというか…」
──ボーカルが一番前にある感じがしますね。
「それをやり始めたのはChakiさんとのセッションからなんです。「踊りませんか?」の時に、Chakiさんに“ボーカルをもっとドライで前に出したいから、Shota、もっと強く出してほしい”って言われて。そこから約1年くらい、いろいろとライブを重ねていく中で、今年3月の『Oneman Live “REAL POP”』でりょんりょん(ヴォーカルトレーナーの佐藤涼子)と一緒に作った自分の声のポジションが見つかりつつあって。「向日葵花火」はその後に歌入れをしたんですけど、ライブ後にりょんりょんのボイストレーニングに行った時に聞いてもらったら、大絶賛でした。“りょんりょんが大絶賛するなんて、なかなかないですよ”っていうのも嬉しくて(笑)。歌手としての自覚というか、ボーカリストとしての表現力の幅は、最近、教える機会も多くなっていて。昨日、スタジオいたらたまたまBMSG TRAINEEが練習をしていたので、声が出にくそうなところをこそっとディレクションしてきました」
──そうなんですね。
「カルチャーを軸に置いている事務所だからこそ、そういった部分も継承しなくてはいけない立場だと思っています。歌い手としての自覚というか、“頑張らないと!”と思っているタイミングでもあったので、いい歌い方ができたと思います」
──ブレスからピアノとボーカルにアコギが入ってくるシンプルなトラックから始まりますが、ビートはサンバに展開していきます。
「そうなんです。もともとは、“☆Takuさんのシグネチャーの2stepやりたいです”から始まって。ギターを入れてみて、“サンバなんじゃない?”ってなって、☆Takuさんが鬼アレンジして。ただ、最初のアレンジがサンバすぎたので、僕の中の解釈でのポップスに落とし込みました。☆Takuさんの頭の中にはアーカイブが驚くくらいあるんでけど、僕にすごく自由にやらせてくれるんですよ。たくさん材料をくれて、“どれがいい?”って提案してくれます。遠慮なく言える関係値を作ってくれますし、繊細な部分にも付き合って、向き合ってくれます。超優しいい☆Takuさんと妥協なしのポップスが作れて、自分自身一番好きな曲になりました」
──あの“パーリヤ~”のブラジリアンなコーラスは最初からあったんですか?
「“コーラスパートは欲しいよね”って話はしていました。僕が意識している時代のJ-POPの夏の曲を聴いていて、“こういうパートを作りたいね”と思って、セッションの時になんとなく雰囲気で歌ってみました。あと、あのコーラスで終わらずに、裏メロがあることがすごく自分ぽいです。裏メロもすごく気に入っていて…美メロ研究家として、やり尽くした感じです」
──打ち上げ花火も入っていますよね。
「はい。今後は多分ないです。最初で最後の花火の音だと思います。花火の音を入れてしっくりくる曲って相当難しいんですよ。でも、5分尺あって、Dメロがあった後だからこそ、しっかりと意味のある花火の音を入れることができました。“夏の曲だから花火を入ればいいじゃん”、ではないものをやれたのは、納得いきましたし、花火の音もすごくミックスしているんですよ。“もう少しこもらせたい”とか、“残響をここまで伸ばして、ここで切りたい”とか。トラックの1つの音として、花火を使えているのは、☆Takuさんとだからできたと思います」
──歌詞は片想いですよね?
「片想いとは書いていないですけど、片想いですよね。“みんな、片思いしてるじゃない?”っていう(笑)。“実らない恋の方が多くないか?“っていうところから書いています。”片想いが一番心が動いている瞬間かな?“と思ったんです。“片想いの状態で、しかも相手が親友というシチュエーションだからでしか書けないことが絶対にある“っていうのに途中で気づけて、とてもしっくりきました」
──相手側はどう思ってるんでしょうね?
「“いや、わかんないっすよね。あははははは“っていう曲です。片想いをしている女の子だった場合、この主人公側で聴けると思うんです。<僕>を<私>に変えるだけで聴ける…」
──<僕>は最後しか出てこないですよね?
「迷ったんですよ。なるべく一人称を入れていなくて…このフレーズを使うか否か、すごく迷って。<僕だけの君を 愛したい>っていう1行があるかないかで大きく変わるので入れました」
──どうして入れたんですか?
「…なんかね、自分でしたね。結果、Aile The Shotaでした(笑)。⭐︎Takuさんに“歌詞でもっと感情を出してほしい”っと言われて。“サビの歌詞でもっと心の叫びみたいなのが入るといいなぁ“って言われて書き直したのが<お願い 他の誰かの君にならないでよ>というフレーズだったんです。もともとはもっと情景っぽかったんです。でも、結果的にはやっぱり自分を出した方が声も乗りましたし、MV撮影でも今までで一番いい顔をしています」
──リップシーンでは何を想像していましたか?
「恋してる顔をしてましたよね。あはははは。頑張って恋してました」
──(笑)。
──MVはドラマ仕立てになっています。
「(島村)雄大にピンポイントでオファーしたんですけど、もともと友人なんです。この曲を書き終わって時間ができたので、やっと彼が出演していたNetflixの恋愛リアリティショー『オフライン ラブ』を見れて。“会いたいな”と思って会って、「向日葵花火」を聴いてもらったら、彼が涙を流してくれたので、“MVには絶対に雄大に出演してもらおう“って思いました。雄大、すごくいいやつなんです。近い部分があるから、何を考えてるかがわかるんですよ。”なんでこんなにいい人でいられているのか“とか、”何が辛いのか“とか、なんとなくキャッチできる部分があって。そういう心の向き方が「向日葵花火」のリリックに合うと思っていたんですけど、本当に大正解でした。MVのドラマシーンの最後のカットが終わった時に、”雄大でよかった!“って話をした時にも、またあいつ、泣きそうになって。その感じもすごく愛おしいですし、かわいいやつなんです」
──相手役の牧野真鈴さんはまさにひまわりみたいな子でしたが、女子はどういうつもりで“明日ひま?”って連絡を送るんでしょうね。
「いや、分からないですよ。だから、第2話を見たいMVになりました。「向日葵花火」のMVを見た後に、MVの終わりと同じように、“次いつ会える?”って好きな子に送りたくなる…このMV自体が“夏の魔法”だったらいいなと思います」
──あの後の返信がどう返ってくるかですよね。
「文字の内容も全部考えているので、すごくこだわりました。最初のやりとりから何まで、絶妙な言い回しで、ほんとうに変わるので。もともとは、最初の“明日ひま?”をもう一回そのまま返す予定だったんです。でも、“次いつ会える?”が一番リアルじゃないかな?と思って。僕が思うリアルなので、自分の主観でもあって、そういう部分にAile The Shotaらしさが反映されていると思うんです。リアクションがほんとうに楽しみです」
──楽曲の世界観より一歩進んでいますよね?
「そうなんですよ。すごくいいMVです。キュンキュンしすぎちゃって、もう見れないくらいです(笑)。僕が尊敬してやまないドリカムの正さん(中村正人)も以前、言ってくれたことがあるんですけど、ああいう、ときめきに触れるものを作るってことはすごく大事だと思っています」
──どのシーンが一番ときめきましたか?
「雄大の笑顔かな? 恋してる男の子の顔だったんです。特に最後の花火の時の雄大の笑顔は大好きです」
──ちなみにShotaさんは“夏”っていうとどんなイメージですか?
「<夏の匂いに浮かれる>って書いているんですけど、浮かれられる季節だと思うんですよね。「Foolish」でも言ってますけど、考えすぎている人とか、気遣いな人が、ちょっと魔法にかかることができる季節だと思います。しっかり<夏の魔法>って言えちゃうところとか、<バカなふりして>みたいなのが、自分の中では夏かな? でも、憂いがあって、切なくも儚くもあって。“ひと夏の恋”とかもあるじゃないですか?」
──この曲を聴くと、きっとみんな、恋をしたくなると思います。
「それが一番嬉しいです。さっきも言いましたけど、ほんとうにこの曲自体が“夏の魔法”になればいいなって思います。そのためにも夏に鳴っていて欲しいです。やっぱり音楽の聴き方って変わったじゃないですか」
──先ほど、“僕が意識している時代のJ-POP”という言葉がありましたね。
「僕が今、思い出しながら作っている時代は、2005年から2012年の7年間。自分が小学生だったくらいの頃なんです。車でラジオを聴いたり、テレビ番組を通してヒット曲が生まれるような頃。「向日葵花火」はTikTokライクじゃないですけど、僕は改めて、“こういう曲が好きなんだ“と思いました。本質的にY2Kの曲というか…。こういう曲を届けたいですし、みんなの思い出になってほしいと思っていて。数年後に”夏の思い出の曲は何?“って聞いた時に、「向日葵花火」ってあがるとすごく嬉しいです。懐かしい曲になりたいんです。でも、短期的なヒットだと、思い出になる曲って生まれないと思うんですよね。いわゆるバイラルだと、”TikTokのあれね“ってなります。僕としては腑に落ちない部分も少しあるので、みんなの夏の思い出の曲になったら嬉しいです」
──最後に、春夏秋冬シリーズの次作、秋ソングに向けた予告をもらっていいですか?
「もうメロディもトラックもあるんですけど、まだ迷っています。普段からいろいろと思慮深く考えている方向性を歌にできたらいいなと思いつつ、メロディ感や展開をもうひと練りしたいです。ラブソングとして春夏秋冬ってなった時に一番、たそがれになるんじゃないかな?とは思います。そして、どんな花にするかもすごく迷っていて…。“何の花が秋に合うんだろう?“ってまだ考え中ですけど、名プロデューサーとJ-POPのど真ん中に行くので期待して待っていてください」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
RELEASE INFROMATION
2025年6月18日(水)配信
Aile The Shota「向日葵花火」
LIVE INFORMATION
8月2日(土) 東京 代官山UNIT
OPEN 14:30 / START 15:00
OPEN 18:00 / START 18:30
8月31日(日) 大阪 梅田Shangri-La
OPEN 14:30 / START 15:00
OPEN 18:00 / START 18:30
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