公共工事やり直し 1800万円の「無駄」認定 賠償請求は「早急に結論」
前市長の指示で行われたとされる公共工事のやり直しを巡り、大和市は18日、弁護士や一級建築士による第三者調査の結果を公表した。報告書では、調査の対象となった5件のうち3件で違法性や不要な工事のやり直しがあり、約1800万円分の工事に「合理性がない」と断じた。
記者会見には古谷田力市長、両副市長らのほか調査を受託した木村保夫弁護士も同席し、報告書について説明した。
調査は昨年12月に始まり、現地調査や関係記録の精査にくわえ、大木哲前市長を含む関係者へのヒアリングも行われた。
報告書によると、調査対象となった工事は、【1】市民交流拠点ポラリス(中央林間)の「全体」【2】やまと防災パーク(南林間)の「芝生の張替えに関する部分」【3】大和ゆとりの森(福田)の「仲良しプラザの床材に関する部分」【4】高座渋谷駅前複合ビルIKOZA(渋谷)の「壁の塗り直しに関する部分」【5】文化創造拠点シリウス(大和南)の「全体」の5つ。
このうち、【1】ポラリスに併設する「星の子ひろば」で行われた複合遊具の色の変更について、「合理性のない変更であり、無駄」と認定した。前市長の度重なる変更指示は約款違反で、約1536万円が無駄になったとした。
さらに、契約締結前に遊具の塗り替えを含む付帯工事をさせたことについては、地方自治法違反だと指摘した。
同様に、【3】仲良しプラザの床材の変更で約175万円、【4】IKOZAの外壁の塗り直しに約80万円が使われたが、これらについても合理性は認められなかった。
一方で、【2】やまと防災パークは「芝生張替えの事実は存在しない」、【5】シリウスの工事については「合理性あり」とした。
「多選も一因」
この調査は、前市長の市職員に対するパワハラ問題を巡り、大和市議会の「前副市長辞職等に関する調査特別委員会」(解散)が2021年10月、管理職を対象に実施したアンケート調査に端を発する。
アンケート結果の中には「前市長の判断による公共施設の工事や契約内容の変更、やり直し、予算の無駄」があったという回答があり、これを重くみた市議会が、古谷田市長に調査を促した。
市は23年度補正予算に771万円の調査費を計上し、弁護士らに調査を要請した。
報告書では、前市長のパワハラ言動にすべての原因を求めることは避けたものの、「思いつきで指示、変更の検討を提案することを繰り返し、現場に大きな混乱をもたらした」とも明記。市職員への態度を「強圧的」とし「4期16年にわたる多選も一因である可能性」と独自に分析した。
議会や職員の責任にも言及
報告書は市議会について「市長の行動を抑止、是正すべき責任は議会にある」とし、「それを是正できなかった議会にも問題があった」と言及。市議会がチェック機能を果たす方策として、議会が公共工事に関わる決算について十分な審議を行うため、審議資料に詳細な記載を義務付けることなどを提言した。
市職員に対しても、最高責任者である市長の指示に従う義務があることに一定の理解を示した一方で、公職にある者として、公共工事を市のガイドラインやマニュアル、各種規定に従って遂行する義務はあることから、一連のやり直し工事に関わった担当職員の行動にも問題ありと判断した。
記者会見で古谷田市長は、調査報告を「重く受け止めている」と語った。前市長への損害賠償請求については「市議会と調整し、顧問弁護士とも相談して早急に結論を出す」とした。
工事に関わった職員については「トップから命令され、断れなかったのが実情だと思う」と見解を述べ、「(関わった職員を)不問に付すということではないが、(処分の在り方について)スピード感をもって検討していく」と話した。
コンプラ推進へ庁内に組織新設
再発防止にむけて古谷田市長は、弁護士による外部相談窓口の設置などを掲げた。
市政策総務課によると、今年10月をめどにコンプライアンスの推進や、地方自治法が定める内部統制に関する体制づくりに取り組む課を創設する方針だという。