いま平成レトロがアツい! 山下メロさんに聞くGWに楽しみたいポップ&ファンシーな世界
1980年代後半~バブル時代の「平成初期」に流行したあれこれが、いま再びのブームに。
お出かけ派もインドア派も、「平成レトロ」でポップ&ファンシーなGWを!
IMA HEISEIRETORO GA ATARASHII YO (今、平成レトロが新しいよ!)
山下メロさん 1981年生まれ、平成レトロを提唱する「記憶の扉のドアボーイ」。全国の観光地を回って「ファンシー絵みやげ」の保護・研究に勤しむ。『週刊プレイボーイ』に「山下メロの平成レトロ博物館」連載中。 ホームページ/https://www.fancy80s.com/
手間が掛かるからこそ「エモい」平成レトロ
私が「平成レトロ」を提唱し、TBS系列『マツコの知らない世界』に出演したのが2020年8月、東京キララ社から『平成レトロの世界~山下メロ平成コレクション~』を出版したのが22年11月。『週刊プレイボーイ』の連載は23年の7月から始まりました。
令和になり、メディアで「平成を振り返る」みたいな企画や特集が増えました。
それで30年前の平成ひとケタの時代を「あー、あんなの流行ったな~」と懐かしむムードが高まって、さらに当時その流行の真っただ中にいた人たちの子どもたちが、ちょうど新しいものに敏感な世代だった、という巡り合わせが今の「平成レトロ」ブームが起こった原因の一つでしょう。
ブームの始まりは、昭和末期に誕生した使い切りカメラのリバイバルだったと思います。
「フィルムを手動で巻く」「撮れる枚数が限られている」「現像するまでどんな写真が撮れたか分らない」「ピント調節機能もない」、それはスマホ世代にとって「新鮮な体験」だったのかもしれません。
その背景には、スマホの進化がある程度落ち着いてきていることがあると思います。形もほとんど変わらないし、大きな新機能も出てきていない。そんな中でフィルム時代を知らない世代にとっては、写真を撮って現像するという手間をかけ、デジタルデータではなく手に取れる形になることに心が動いた。
手間をかけると愛着が湧くという経験をした。
そしてピントが甘く、鮮明過ぎない写真に、スマホで撮る写真にはない「エモさ」を感じるのでしょう。
初代の「たまごっち」、CDラジカセにMD、ルーズソックスに厚底ブーツも、当時の流行を知らない世代にとっては全部新しいものですから、新鮮に感じます。
当時を知る世代にしてみれば、進化によって不便だったものが便利になって今がある。
写真はスマホで何千枚も撮れるし、高解像度で高精度の加工もできる、音楽はサブスクで高音質で聴ける。今さらあの面倒で手間がかかる、持ち運びにもかさばるフィルムカメラやCDラジカセの時代に戻りたくないですよね。
ルーズソックスや厚底ブーツも、当時を知る世代が「ダサい」と思うのは、ブームが終わった後のイメージが残っているから。
その先入観がない世代であれば、そこに新しい価値を見出せるのです。
今テレビCMなどでもあの時代のヒット曲がよく使われていますが、懐かしさよりも純粋に新しく聞く楽曲としての魅力を感じる人が多いのではないでしょうか。
探してみよう! ファンシー絵みやげ
「ファンシー絵みやげ」をご存じですか?
ファンシーな絵に、なぜかローマ字表記のメッセージ、バブル期日本の象徴のような観光地みやげを「ファンシー絵みやげ」と命名し、保護活動に努めています。通称「ファみ活」。
千葉では房総エリアが「豊作地帯」ですね。「実家の押し入れにあるかも」と思い当たる人もいるのではないでしょうか?
私が20代の終わり、2010年頃に、いつも通っていたフリーマーケットで偶然ひとつのキーホルダーを見つけたのです。
「そういえば、こういう観光地みやげ、昔よく売られていて買ってもらったなぁ」と思って、そのころ世の中に80年代リバイバルの機運が出始めていたので、「ウケるかも」と思って購入したんですね。
で、懐かしいからちょっと集めたくなったんですが「誰かがもう集めてるんだろうな」と思ってネットで調べようとしたんですが、「そもそもこれって、なんて名前なんだろう?」と。
名前が分からないから検索ができない。思いついたワードで片っ端から検索してみたんですが、全然ヒットしない。ネットで誰もこれについて言及していなかったんですね。
怖くなりました。
あの時代、どの観光地に行っても必ずと言っていいほど売られていた超メジャーなお土産だった、確かに一時代の「文化」だったはずなのに、世の中から消えようとしている。物理的にも、人々の記憶からも。
どうしてなのかと考えたら、やはり「名前がない」からだと。私が検索しようとしてもできなかったように、名前がないと話題に出すことができない。観光ペナントや提灯のように定期的に話題に上らないんです。
なのでまず、「ファンシー絵みやげ」とジャンル名を付けました。
そして、あんなにメジャーだったものが消失することがあるとするなら、逆に自分一人の動きでそれを覆すこともできるんじゃないか、と。自分が各地で探し出してきて体系化すれば、再評価の機運を起こすこともできるんじゃないかと思って、集め始めました。
なんせネットで調べて何も出てこないわけですから、観光地に直接出向いて足で探すしかない。なかなか大変なんですが、当初は1000個、2000個くらいでゴールできるんじゃないかと高をくくっていたんですよね。
これがとんでもない。ファンシー絵みやげ、めちゃくちゃ種類があるんですよ……。
あの時代、バブル期に、日本全国の観光地で毎年のように新作が作られているんです。それぞれの地方のメーカーが独自に作っているので、とにかくバリエーションが多い。当時に比べると土産店もかなり減少していますし、営業していてもほぼ店頭で売られていないので、見つけるのは想像以上に大変でした。
今でこそ、メルカリやフリマサイトでも出品が増えてきましたが、それでも直接現地に行かないと手に入らないものが多くあります。鉄道に乗って船に乗ってバスに乗って、観光協会やお店の人に話を聞き、そして交渉ばかりです。
この活動を始めたおかげで、学生時代に苦手だった日本史や地理などを熱心に勉強するようになりました。例えば京都なら新選組や坂本龍馬が対立しているものが多いのですが、歴史を知らないとそれが何を意識して作られたものなのかを語ることができないので、いろいろな知識が必要なのです。
また、歴史上の人物やご当地の有名人だけじゃなく、例えば能登の輪島では「朝市のおばあさん」がモチーフの「ファンシー絵みやげ」があります。
「ファンシー絵みやげ」には、その土地に根付いた文化や風習が「記録」されているのです。地域の文化・風習を正しく理解していなければその価値も理解できません。
そういった郷土資料ともなり得るというのもまた「ファンシー絵みやげ」を「保護」する理由です。
いずれ「ファンシー絵みやげ」の価値が高まることで、公的機関がサポートしてくれるようになれば助かります。博物館を建てて管理してくれるなど。今、私の家には「ファンシー絵みやげ」のキーホルダーだけで2万個以上ありますから、そのうち床が抜けるんじゃないかと心配されています。
「平成レトロ」の話で、「手間が掛かる」ことが今の世代にとって「新鮮な体験」になっているといいましたが、この「ファンシー絵みやげ」の保護活動も手間が掛かります。
非効率的とも言えますが、足で探した「自分だけの体験」に勝るものはありません。例え何も見つからなかったとしても、その結果も大切な体験であり、「なかった」ということも重要な情報になります。
ネット検索で何でもすぐ知ることができる時代ですが、そこで得た情報をいくら蓄積しても、それは自分だけが持つ情報、体験にはなりません。
今、「手間が掛かる」平成レトロに魅力を感じるのは、みんな本当は「体験」したいからなのかもしれません。今年のGWはそんな「体験」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
平成レトロで楽しむGW
家で遊ぶなら…
人気テレビ番組「伊東家の食卓」から生まれた「伊東家UNO」。
UNOカードを使った、番組オリジナルの新しい遊び方が12種類楽しめます。
旅先で見つかるかも!?
出掛けた先で「ファンシー絵みやげ」を探してみませんか。
私も全国で調査を続けています。見つけたら教えてください!
ちなみに知人からは「観光地に行くと否が応でもメロさんの顔が頭に浮かぶ」って苦情を言われます(笑)