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pachae「アイノリユニオン」インタビュー――「僕らは僕らの愛には敵わない︕」というストレートなメッセージ

encore

──『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL2024』や『TREASURE05X 2024』など、大型イベントに初出演を果たした今夏。フェスやイベントに出演することで得たものや感じたことはありますか?

バンバ(Gt)「7月に「ダンシング・エモーション」というコール&レスポンスの多い曲を出して、それを引っ提げてフェスに出たので、お客さんから来るレスポンスや自分たちのライブ運びなど、すごく勉強になりました。以降のライブでも活かせているかなと思いますね。非常にいい経験をさせていただきました」

さなえ(Key)「まず“こんなにたくさんの方がpachaeを見てくれているんや!”ということに感動しました。そんな皆さんが楽しんでくださっている表情を見て、さらに私も楽しくなりましたし、記憶に残るすごくいい日でした」

音山大亮(Vo Gt)「“夏フェスに出る!”ということを目標にやってきたわけではないですけど、夏フェスはいつか通る道だと思っていましたし、それをこんな早いタイミングで経験させてもらえて嬉しかったです。ステージの見え方やライブのやり方は、もちろん普段のライブとは全然違ったのですごく勉強になりました。今後、他のイベントでもフェスみたいに盛り上げられたらなと思うきっかけにもなったので、pachaeにとって確実に必要な1歩だったと思います」

──そんな夏を経て、新曲「アイノリユニオン」がリリースされました。この曲はTVアニメ「妻、⼩学⽣になる。」のオープニングテーマですが、最初にアニメのオープニングテーマを担当すると聞いたときはどう思いましたか?

バンバ「そりゃもう、テン上げですよ! こんなありがたいことはないです」

音山「僕はアニメがめちゃくちゃ好きなので、すごく嬉しかったです。さらに原作漫画を読ませていただいて、“初タイアップがこの作品でよかったな”と思いました。原作者の村田椰融さんの価値観でもあると思うんですけど、作品の登場人物たちの考え方、彼らの思う愛の形が僕の思う愛の形と似ていると思いました。だからこそ歌詞は、書きやすい部分もあれば逆にめちゃくちゃ悩んだ部分もあるんですけど…。でもこの作品に携われてよかったと思いました」

さなえ「私も、こんなに素敵な作品に携われるなんて、ありがたいなと思いました」

──音山さんが登場人物にシンパシーを感じるというお話をしてくださいましたが、ではこの作品のオープニングテーマを作るとなったときには、この作品のどの部分からインスピレーションを受けて楽曲を作り始めたのでしょうか?

音山「アニメのタイアップって、アーティストが自分の気持ちを入れるものと、キャラクターが歌っているような目線で書くものとどちらのパターンもあると思うんですが、今回は後者だなと思ったので、原作を読みまくって、このキャラクターたちの気持ちを歌にしようと思いました。展開がたくさんあって複雑なんですけど、テーマは一つ。“愛ってなんだろう?”ということだと思ったので、“愛とは何か?”をテーマに曲を書きました。ネタバレになってしまうので詳しくは話せないですけど、見終わったあとに聴いてもらうと余計にこのテーマが伝わると思います」

──タイアップならではの面白さや難しさは何か感じましたか?

音山「大学生の頃から、好きな作品に対して“俺だったら主題歌、こんなの作るかな?”って勝手に曲を作っていたんです。だから作ること自体はいつもと変わらないんですけど、今回はそれがきちんと作品のタイアップとして世の中に出る。嘘じゃなく、本当に作品に関われているというのが嬉しいです。勝手に作っているときもそうでしたけど、自分の人生では経験していないこと、作品を通してしか描けない感情があるから、そういう意味で、タイアップはありがたいです。今回は家族愛がテーマですけど、それも「妻、⼩学⽣になる。」があったから書けたテーマなので」

──サウンド面で、アニメのオープニングテーマということを意識したことはありますか?

音山「昔から“pachaeの音楽はアニメっぽいかな?”と思っていたので、“pachaeっぽさ=アニメっぽさ”だと思って、特段意識はしなかったです。ただ、アニメでこの曲を好きになってフルバージョンを聴いてくれた人が飽きないようにしたいと思って構成には少しこだわりました。2番以降に全然違うパートを入れたり。「妻、⼩学⽣になる。」という作品も展開が多いので、曲にも転調とかいろんなセクションを入れるというのも意識しました」

──サビはとびきりキャッチーですが、そこはどういった意図で?

音山「このサビのメロディは結構前から自分の中にあって、どのタイミングで使うか自分の中でも悩んでいたんです。かなりキャッチーなメロディだからこそ、“ここぞ!”というタイミングで使いたかったので。そう思って使っていないメロディは山ほどあるんですが、その中でも一番出し惜しみしていたメロディだったので、“好きな作品のタイアップだったら後悔はないだろう”と思ってここで使いました」

──さなえさん、バンバさんはこの曲を初めて聴いたときどう思いましたか?

さなえ「イントロから畳み掛けるような展開で、“次、何が来る?”、“「こう来るんだ!”ってずっとワクワクしました。歌詞も「妻、⼩学⽣になる。」のドラマを見てから聴いたので、物語を思い出させてくれると思いました」

バンバ「タイアップに寄りすぎる曲になっていなくて、良いなと思いました。ちゃんとpachaeの曲で、いい塩梅だなって思いました。それでいてアニメにも寄り添えてるっていう」

──では演奏する際のこだわりや意識したことは?

バンバ「まず、ムズい!(笑)」

音山「楽器は、これまでの曲の中でもトップ・クラスにムズいですね。パッと聴くとそこまで難しくなさそうなんですけど。例えばイントロは、一聴しても簡単ではなさそうだとは思うんですけど、いざ弾くと、想像の10倍くらいムズいです。これは“pachae現象”です(笑)」

バンバ「ギターは何気にグリッサンドとかチョーキングとかビブラートとか…いろいろやっていますし。そういう細かいところまで聴いてもらいたいです。頑張って弾いたので(笑)」

──中でも特に気に入っているフレーズはありますか?

バンバ「アウトロかな? あとはギターソロで、“ティティティティ”って急におバカになるところも好きです」

──pachaeは各楽器のフレーズを音山さんがデモの時点から考えるパターンと、各々で考えるパターンがあるとのことですが、今回はどちらですか?

音山「今回は全部僕が考えました。その曲、そのセクションにおいてベストなフレーズを出しているだけで…つまり僕が作ったわけじゃなくて、宇宙には存在していたものなんですよ」

──その曲に最適なフレーズがそれだったという。

音山「そうです。だから弾く人の気持ちは考えていません(笑)。演奏できるようになってもらうしかないんです」

──でもそんな難しいフレーズを演奏するのが、皆さん楽しいんですよね?

バンバ・さなえ「はい!」

音山「ちょっとゲーム感覚みたいなところもあるんちゃう?」

バンバ「うん、もはやRPG!」

──出会った難しいフレーズを練習して、進んでいくような?…なるほど。さなえさんは、「アイノリユニオン」でお気に入りのフレーズはありますか?

さなえ「やっぱりイントロの展開は、他にない感じがしていいなと思います。あと、サビは歌詞も含めてすごく好きです」

音山「僕もイントロは特に気に入っています。このイントロも、結構前からあって出し惜しみしていたものなんです。それが奇跡的にこの曲に結びつきました。この曲にはそうやって自分の中でずっと出したかったものがいくつも入っているので、自分もすごく嬉しくて。いい作品にできたなと思います」

──ちなみに今回のタイトル「アイノリユニオン」は造語ですが、どういった意味を込めた言葉なのでしょうか?

音山「“愛”とか“相乗り”、“union”などいろんな意味があるんですが、それもアニメのネタバレになりそうなので詳しくは秘密で(笑)。ジャケットにちょっとヒントが隠されているので、注目してみてください」

──音山さんは、これまでも“この主題歌だったら…”という曲の作り方をしてきたとおっしゃっていましたが、アニメの主題歌や挿入歌は、作品にどのような効果を生んでいると思いますか?

音山「曲を聴いて自分の好きなアニメを思い出して、そこからその作品を見ていた時期の生活とかも思い出したりします。そういう効果があるのかな?と思いますね。相性が良いと、作品も曲もより好きになるので。もちろんメインは作品ですけど、アニメと音楽は隣にいると思っています。作品にもよりますけど、シーズンごとに曲が変わる作品の、テーマソングをまとめたアルバムが出ることってあるじゃないですか。僕、あれってすごいと思っていて。だって全然違うアーティストの曲、しかも全部A面の曲、抜群の歌メロがある曲しか入っていないんですよ? 曲を作っている人はみんな聴いたほうがいいと思います。誰目線?って感じですけど(笑)。僕はアニメ『銀魂』のアルバムを全部持っていました」

──アニメに限らず、作品と音楽のリンクがいいなと思う作品があれば、皆さん教えてください。

バンバ「アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』と、エンディングテーマの「Secret Base~君がくれたもの」。あれはもう完璧な相互作用が働いていますね」

音山「あー、それはちょっともう段違い!」

バンバ「レジェンドですよね。あともう一つ。映画『aftersun/アフターサン』の劇中歌でクイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」が流れるんです。あれは神! この記事を読んだ人全員に観てほしいです」

さなえ「私はちょっと違うかもしれないんですけど…『のだめカンタービレ』です。クラシックの音楽をあまり知らない方でも親近感がわく作品だなと思って、すごく好きで見ていました。あれをきっかけにクラシックを始める人も多いんじゃないかな?」

音山「僕が最近一番感動したのは、アニメ『【推しの子】』とYOASOBI「アイドル」(オープニングテーマ)。あれは歌詞も含めて天才的でした。あとアニメ『SPY×FAMILY』のOfficial髭男dism「ミックスナッツ」(1期オープニングテーマ)、Ado「クラクラ」(2期オープニングテーマ)。あれも、スパイとしてもファミリーとしても、完璧な曲だなと思いました」

──「妻、⼩学⽣になる。」はさまざまな家族の形を描くことで人のつながりの大切さを伝える作品。皆さんがこれまでの人生や活動において、印象的な出会いや、自分にとって大きかったなと思う出会いはありますか?

さなえ「私はエレクトーンです。小・中学生のとき、あまり人との関わりがうまくなくて、一人でいることが多かったんですけど、そういう時にエレクトーンに救われたんです。コンクールに出たり、エレクトーンのグレードの試験を受けたりするときはうまく弾けなくて嫌な気持ちにもなりましたけど、でもそういう時も、自分はエレクトーンに救われたという気持ちがあったから続けられて…。ヤマハのデモンストレーターになるというのが1つの目標だったので、デモンストレーターになれたのもすごく嬉しかったです。それをきっかけに、音山さんと出会ってpachaeになって今があるので、“全部エレクトーンが繋げてくれたんだな”って思って、感謝しています」

バンバ「“バンドを続けたい”、“バンドで何かしたい”という気持ちに火をつけてくれたという意味では、YAJICO GIRLですね。高校の軽音楽部の先輩なんです。と言っても学生時代がかぶっていたわけじゃないんですけど、OBとしてちょくちょく部活に遊びに来てくれて、いろいろおしゃべりさせてもらっていて。身近にこんなにカッコいいバンドがいるということが、自分の気持ちに火をつけてくれたのかな?って、今振り返ると思います」

音山「一番自分の人間性を形成したと思う出来事は、海外で生活したことです。20歳のときに1年くらいロンドンで暮らしていました。典型的ですけど、海外で生活したことで、日本の良くないところはもちろんですけど、日本の良いところも見えて…それはすごく自分の価値観に影響がありました。もともと僕は海外の人っぽい価値観で生きてきていたと思うんですが、実際に海外に行って、日本の良さを知ったからこそ、より癖が強くなりました。より変態になったというか…ロンドンが僕を仕上げました(笑)。ありがとうロンドン! “イギリスにお礼を述べた音山は、少し微笑んだ”って書いておいてください(笑)」

(おわり)

取材・文/小林千絵
写真/野﨑 慧嗣

RELEASE INFROMATION

2024年10月7日(月)配信

pachae「アイノリユニオン」

LIVE INFORMATION

2024年11月20日(水) 愛知 CLUB UPSET
2024年11月22日(金) 大阪 OSAKA RUIDO
2024年11月28日(木) 東京 shibuya eggman
全日程共通
対バン有り
OPEN 18:30 / START 19:00
チケット¥3500- /学割 ¥2800-(D別)

pachae presents『Trick or Trick』 vol.3

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