【静岡市歴史博物館の「仏像のヒミツ」体験会トークタイム】 静岡県が誇る仏像の語り部3人による極上のエンタメ
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡市歴史博物館で2月2日に開かれた「仏像のヒミツ」体験会のトークタイムを題材に。
静岡県が運営する文化財ポータルサイト「レガシズ」に県内の国指定文化財、県指定文化財の仏像の高精度立体画像が公開されたことを記念したイベント。歴史博物館の学習支援・市民活動スペースには、仏像を3Dデータ化する技術を紹介する展示や3Dで再現されたレプリカに触れるコーナーが設けられた。
トークタイムには今回の仏像撮影に関わった上原美術館(下田市)の学芸員で県文化財保護審議会委員を務める田島整さん、浜松市美術館学芸員の島口直弥さんの2人に、SBSラジオ「ラジオEAST」のパーソナリティーを務めるアナウンサー久保沙里菜さん(富士市出身)が加わった。県内の仏像好きにはおなじみの3人が顔を合わせる貴重な機会とあって、観覧申し込みは座席定員を超えたという。
レガシズには県内7カ所、32体の仏像が収められているという。イベントでは、普段見られる「正面から」だけでなく、上から、背後から、下からなどさまざまな角度から仏像を紹介した。含蓄に富んだ丁々発止のやり取りはまさにエンタメ。客席を埋めた仏像ファンにとってはたまらない時間になったことだろう。
「ラジオEAST」さながらの田島さんと久保さんの対話は、仏像鑑賞のツボを突くものと言えた。南禅寺(河津町)の「木造薬師如来坐像」を巡っては、こんな会話の行き来があった。
(横からの画像を見て)
久保:おなかの厚み、張り出しているところが好きなんです。
田島:奥行きを出すためにわざわざ木を足していますね。平安時代の特徴なんです。
(上からの画像を見て)
久保:すごい衣紋(えもん)線!この角度から見るとよく分かりますね。
田島:結構深くて、先端がとがっているんですね。
久保:(指の間に)水かきが付いているのも分かりますね。皆をすくい上げるという意味が込められているんですよね。
島口さんは浜松市美術館で過去2回同館で開催した「みほとけのキセキ」展の経験を踏まえ、仏像の基礎知識や遠州エリアの仏像の特徴について語った。
レガシズの画像では、仏像を下からも眺められるため、中をくりぬいてある様子もよく理解できる。田島さんと島口さんは「一木造り」「寄せ木造り」などの構造を分かりやすく伝えた。
1時間があっという間だった。3人が互いの役割をはっきり認識しているため、トークがきれいに流れていく。聴く側にしてみると、仏像についての基礎知識がスッと頭に入ってくる。いわゆる「座持ちがいい」という状態。県外にも「輸出」したくなる「一座」だった。
(は)
<DATA>
■今後の「仏像のヒミツ」体験会
出演者:田島整さん、島口直弥さん
○2月24日、浜松市美術館
住所:浜松市中央区松城町100-1
時間:午前10~11時、午後1~2時
参加費:無料
○3月2日、かんなみ仏の里美術館
住所:桑原89-1
時間:午前10~11時、午後1~2時
参加費:無料