富士山登山の死者数が大幅増加 ルール違反も 「県外・海外の訪問者は甘く見ている」
■静岡県側の登山者5.6%減少 死者数は2人から6人に増加
富士山の夏山シーズンが9月10日に終了した。静岡県側の登山者数は昨年から5%余り減少した一方、死者数は増加。県外、海外の登山者への注意喚起が課題となっている。
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今夏の富士山は閉山し、登山道が閉鎖された。環境省によると、9月4日時点で静岡県側の3つのルートを合わせた登山者数は7万4803人で昨年から5.6%減少した。ルート別では富士宮が前年比101.2%、御殿場が68.8%、須走が97.7%だった。
登山者数は減少したにもかかわらず、死者数は昨年の2人から今年は6人に増加した。県は今夏の富士登山を次のように総括した。
「ウェブを活用した事前登録システムを試行した結果、夜間登山者数の減少など一定の効果があった。一方、死亡事故の増加や夜通し弾丸登山、軽装登山などルール・マナー違反が引き続き散見された」
静岡県は今夏、登山時間や山小屋の宿泊予約を事前登録するシステムを試験的に導入した。通行料の徴収や登山者数に上限を求める入山規制をスタートした山梨県とは対応に違いがあった。
■関係者は懸念「規制や罰則を設けなければ状況悪化」
県や関係機関などは毎シーズン、天候が悪い時や体調がすぐれない時の登山は控え、弾丸登山や軽装登山のリスクを繰り返し広報している。だが、県外や海外からの訪問者に登山の危険性が伝わっていない課題があると県の関係者は話す。
「今年に限らず、ルール違反によるけが人や病人、死者に静岡県民はほとんどいません。登山中に体調を崩して救助要請をするのは仕方がありませんが、県外や海外からの登山者は富士登山を甘く見ている人が少なくありません。現在は性善説で登山者自身のモラルや判断に任せている面が大きいですが、ある程度の規制や罰則を設けなければ状況は悪化する一方と懸念しています」
こうした事情を受け、静岡県の鈴木康友知事は来夏からの登山規制する方針を明らかにした。10日の定例会見で、こう述べている。
「山梨県と足並みをそろえた条例による登山規制および通行料の徴収を検討することといたしました。今後、国や地元市長、関係者と協議を進め、ゲート設置のための現地調査や入山管理システムの構築業務を行っていきます」
今夏から条例で通行料2000円を義務化した山梨県は登山道が県道なのに対し、静岡県は県側の登山道が県道ではないため対応が遅れている。来夏に向け、夜間の入山規制や今夏に試験導入した事前登録システムを活用した入山管理システムを構築していくという。
(SHIZUOKA Life編集部)