DJ KOOが語る小室哲哉 ①【最新インタビュー】TK SONGS RESPECT NIGHT の魅力
小室哲哉が手がけた数々の名曲、“TK SONGS” を愛する人たちのイベント『TK SONGS RESPECT NIGHT 03』が、2025年8月3日に開催される。2023年にスタートしたこのパーティは、小室哲哉プロデュースのアーティストが多数参加し、オーディエンスとともに小室作品への “愛と感謝とリスペクト” を捧げる熱いイベントだ。
今回、本企画のオーガナイザーであるDJ KOOにインタビューを敢行。小室哲哉との出会いから現在までの交流に加え、小室サウンドの魅力、その制作プロセスの秘密までを存分に語っていただきました。
フロアには愛が溢れていました
――『TK SONGS RESPECT NIGHT 03』の開催決定、おめでとうございます。今回は会場が品川ステラボールと、過去2回に比べてグッとキャパが大きくなりましたね。
DJ KOO(以下:KOO)前回前々回とクラブでの開催でチケットが取れなくて残念な思いをされた方が多いと聞いて、今回はクラブで無く会場のキャパを広げて開催することになりました。ステラボールは僕もイベントで出演したことがありますが、ステージからもお客さんのレスポンスがいい感じで返ってくる、一体感が出しやすい会場だと思います。
―― 最初に開催された時の、フロアの熱気はどんなものでしたか。
KOO:愛が溢れていました。僕は今年でDJキャリア45周年になるんですが、いろいろなクラブなどの現場や、イベント、盆踊りなどでもやらせていただいている中でも、このイベントはスペシャル感がありました。小室さんの曲を、長年愛し続けてきた人、ずっと聴き続けてきた人たちが集まってくるので、もう “自分の曲です!” ぐらいに思われている方たちが、爆音で聴いて歌ったり、踊ったりしてくれるのはすごく楽しい。元々僕もずっとやりたかったことですし、それまでもいろいろな場所でやってきている小室さん縛りのイベントが、オフィシャルという形でここに結合した感がありますね。
―― 世代的には、やはり小室さんプロデュースワークの全盛期をリアルタイムで体験した方が多いのでしょうか。
KOO:僕も、最初はリアルタイムの方たちが、青春時代を振り返ってお越しになるのかと思っていたんですが、蓋を開けてみると意外に幅広い世代が参加してくれているんです。今の30代だと、90年代にはまだ生まれてなかったりする方もいますが、そういう方たちも多くて新鮮でした。
―― やはり小室さんの楽曲が、日本の音楽シーンに定着したことの証明でもあるんでしょうか。
KOO:そうですね、それに、サブスクなどいろいろな形でアウトプットの方法があるので、音楽の聴き方が多様になった時代背景もあると思います。
小室哲哉との出会いは1992年
―― ところで、DJ KOOさんと小室さんとの出会いは、いつのことになるのでしょう。
KOO:1992年の初めです。新山下に『横浜ベイサイドクラブ』という店があって、そこで小室さんがレイヴイベントをやることになり、その時、僕がDJとして参加しました。ご挨拶させていただいたのは、そのイベントの少し前、trf(現:TRF)のファーストアルバムのレコーディングの最中です。
もう何曲かできあがっている中で、スタジオでご挨拶しましたが、本当に衝撃でした。今まで自分はDJとしてやってきて、リミックスもたくさん作ってきて、ずっとアンダーグラウンドのシーンで活動していたため、ちょっと斜に構えていたところもあったんです。それが小室さんとお会いした時 “この人のオーラがすごい” と感じました。噂には聞いていたけれど、その佇まい、存在感に衝撃を受けたんです。
―― まずはその人となりに衝撃を受けたと。音楽制作の現場もその際にご覧になったんですか。
KOO:ええ。僕もダンスリミックスを作る時は、プリセットといってシンセサイザーに内蔵されている音源を使っていたんですが、小室さんはプリセットではなくゼロから作るんです。ホワイトノイズといって、ノイズをいろいろなノブやつまみで調整しながら音を作っていく。その時は “ミニモーグ” というアナログ・シンセサイザーでベースの音を1から作っていて、その姿がアインシュタインみたいな科学者に見えました(笑)。といっても “ほら、見てごらん” みたいな感じではなく、静かに淡々とやっている。その姿が、余計にインパクトが大きかったんです。それから小室さんに心酔してしまい、レコーディングの見学に行き、そのまま押しかけ弟子のような形で、小室さんのそばで勉強させてもらいました。
メンバー意識は「BOY MEETS GIRL」あたりから
―― その時のアルバムがTRFのファーストアルバム『trf 〜THIS IS THE TRUTH〜』になるんですね。TRFは当初、メンバーが流動的だったそうですが、最終的な5人になったのはいつのことでしたか。
KOO:1993年の秋にシングルを3枚、ほぼ同時にリリースした頃です。ジャケット撮影を5人で行ったので “これから5人でやるらしいよ” なんて話になったんですが、当初はパーマネントなユニットになるかも分からなかったんです。それに僕は小室さんの弟子みたいな形で参加していたので、メンバーというより、そこにいればいいのかな、という感じでした。
なので、TRFの最初の頃はhitomiがデビューしたりglobeが始まったり、そこをお手伝いしている感覚でした。同じ頃、“EUROGROOVE”という、よりダンスに特化したプロジェクトが始まり、そこでもご一緒させていただいたり。小室さんのレコーディングにも同行して、ロンドンやニューヨークにも連れて行ってもらい、スタジオで色々と勉強させていただきました。
――メンバーとしての意識を持ち始めたのはいつ頃からですか。
KOO:1994年にアルバム『BILLIONAIRE 〜BOY MEETS GIRL〜』を出して、単独でホールツアー(trf TOUR '94 "BILLIONAIRE 〜BOY MEETS GIRL")をやることになった頃ですね。その前にやっていたクラブツアーではメンバーが流動的で、自分もそこまでメンバーという意識はなかったです。
「寒い夜だから」を歌うYU-KIは幸せだな
―― TRFでラップをやることになった理由というのは。
KOO:1枚目のアルバムをレコーディングしている時、小室さんに “KOOちゃん、ラップできる?” と言われ、その前に活動していたThe JG’sで少しやっていたので “じゃあこれ入れてみて” と。そこから何曲か任されるようになりました。リリックも自分で作りましたが、まだこの時代、今のように “J-ラップ” なんて全然なかったし、当時いた2アンリミテッドというユニットに近い、四つ打ちのテクノに乗るようなラップを意識して作りました。
―― それまでの、アンダーグラウンドでの活動から、メジャーの世界に移る際、ご自身の中での葛藤はありましたか。
KOO:いえ。気持ち的には、僕は小室さんのやることを吸収していきたいと思ったし、それが正解だと思っていました。一方で、DJの世界って偏った部分もあって、ポップに行くとか邦楽寄りになるのは “魂を売った” 的な見られ方をしたこともありました。だけど、小室さんに付いていく気持ちが強かったですから。
感覚的にも「寒い夜だから」をレコーディングしている時、ああ、これは今までやってきたものと違うな、ユーロビートでもテクノサウンドでもないと思いました。でも僕はそこに拒否反応もなく “いい曲だな” “これを歌うYU-KIは幸せだな” と思えたんです。ダンスミュージック一本でやってきた僕が、小室さんの曲っていいな、と思えたナンバーですね。
―― それ以前にはTM NETWORKなど小室作品は聞いていたんですか。
KOO:それがまるっきり洋楽寄りの人間だったので、邦楽畑で起きていることに、そんなに意識を向けていなかったんです。だから邦楽で今、何が流行っているのかは知らなかった。でもTM NETWORKだけは知っていました。バンドというより、コンピュータを使った打ち込みの新しい手法を取り入れている、という部分で興味を持っていましたね。
カラオケに行ったら「EZ DO DANCE」が流れていた
―― TRFの活動で、ご自身がブレイクの実感を得たのはいつのことでしょうか。
KOO:『EZ DO DANCE』(1993年7月21日発売)のアルバムが出た頃でした。うちの奥さんから “カラオケに行ったら「EZ DO DANCE」が流れていた” と聞いて、自分たちの曲がカラオケという、一般の人たちの目の触れるところに出ているという経験が、僕のキャリアの中では初めてのことだったので、“あれ、これはもしかしたらすごいぞ” と思いました。カラオケで歌われることの広がりって、洋楽やダンスミュージックを超えた、また別の感覚でしたね。
―― 1994年から1995年にかけてはいろいろなアーティストが小室哲哉さんの楽曲を歌うようになり、“小室ファミリー” という呼び方も定着していきました。この頃、KOOさんは、他の小室ファミリーのアーティストでかっこいい、と思われた方はいましたか。
KOO:globeのKEIKOはすごかったです。1995年に『avex dance Matrix ’95 TK DANCE CAMP』という小室さんがオーガナイザーを務めた伝説的なイベントがあって、そこがKEIKOのデビューの舞台でした。そのステージで実際に「Feel Like dance」を生でやる、その初リハーサルのことは本当に忘れられない。
野外会場でしたが、声を出した1発目から思い切り空に抜けていくような、本当に素晴らしい声で、物おじせず堂々と歌い上げるKEIKOには感動しました。あとは「SWEET PAIN」の時に、僕がKEIKOのボーカル・レコーディングのディレクションをやったんです。遅い時間から入り、始めたら歌うごとにどんどんいいテイクが出てくる。声がヘタることもなく、ディレクションをやっているこちらがワクワクするような歌がグイグイと出てくるので、すごいボーカリストだと感じました。ましてやまだ新人なのに、それだけの声が出てくるのはすごいことですよね。
hitomi、マーク・パンサーの印象は?
―― この『TK SONGS RESPECT NIGHT』に、KOOさんと並んで第1回から参加されているhitomiさん、マーク・パンサーさんについて、それぞれ当時の印象はいかがでしたか。
KOO:hitomiは、TRFのレコーディング現場で、打ち合わせをしたり詞を書いていたんです。最初はモデルをやっていたので、ファッションリーダー的なところから入ってきて、TKサウンドをしっかり牽引している頼もしい存在でした。アイドルでもなく、今までにない新しいスタイルを見せてきたところがありました。マークも元々モデルをやっていたのですが、やはり存在感があります。マーク独自の語りかけるようなラップというのは、KEIKOの説得力のあるボーカルといい対比になっていて面白いなと思いました。
―― 各グループやアーティスト間で、お互いファミリーではあるけどライバル意識もあったのでしょうか。
KOO :仲間意識の方が強かったとは思います。ただ、曲に関しては小室さんの取り合いでした。篠原涼子さんの「恋しさと せつなさと 心強さと」なんて、これいい曲だな!TRFに欲しいな!と。あ、globeの「Feel Like Dance」も、うちに欲しい!と思いましたね(笑)
後半では、DJ KOOの音楽的ルーツを深掘り。そして小室サウンドの秘密を徹底解説します。
▶︎ 開催概要
SUPER PREMIUM PARTY
TK SONGS RESPECT NIGHT 03
・日程:2025年8月3日(日)
・時間:OPEN 14:30 / START 15:30
・場所:品川ステラボール
・出演者:DJ KOO / 浅倉大介 / マーク・パンサー(globe)/ hitomi …and more
・チケット及び詳細:オフィシャルサイトまで