特殊詐欺の「中心地」ミャンマー中国系人身売買の実態…1万人の外国人を監禁、16歳日本人が救出される
今月12日、ミャンマーにある中国系犯罪組織の拠点で特殊詐欺に加担させられていた日本人の16歳の少年が、タイ北西部メソトの国境付近で保護された。タイ当局は少年を邦人初の「人身売買被害者」としている。
【写真】中1女子に2万円渡し性的暴行…逮捕されたロリコン維新元議員は小中高の元教員
少年は昨年12月、SNSで見つけた仕事に応募し、日本からタイに渡航。ミャンマー東部カイン州のタイ国境近くの拠点に連れて行かれ、日本に住む日本人をターゲットにした特殊詐欺に従事させられていた。
特殊詐欺の「中心地」として知られる国境地域では、昨年だけで人身売買の加害者と被害者、合わせて5万3000人の中国人を送還。現在も複数の拠点に中国人約4000人を含め、23カ国、推定1万人以上の外国人が拉致監禁され、日本人も26人いるとみられている。多くが「かけ子」などの実行役をさせられている可能性が高い。
タイ当局は1月にも、特殊詐欺の拠点で働かされていた17歳の日本人の高校生を救出。高校生はオンラインゲームで特殊詐欺の運営に関与した疑いのある藤沼登夢容疑者(29)と知り合い、用意されたチケットでタイに渡航したところ拉致監禁された。
タイ当局は今月7日、犯罪組織の構成員として、ミャンマーに滞在していた日本人の男4人を拘束している。
「ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、内戦が続いています。その混乱に乗じて、タイとの国境付近では複数の少数民族武装勢力が分割支配し、一部勢力が中国人の犯罪組織と手を組み、規模を拡大した。偽の求人広告にだまされて連れて来られたアジアやアフリカなどの外国人が国際的なオンライン詐欺を強要されています。中国系犯罪組織の稼ぎは年間10兆円に上る。1月初旬に発生した中国人の俳優の拉致事件をきっかけに、タイ当局が対策を強化。今月5日には犯罪組織の通信環境を遮断させる目的でミャンマー側への電力供給を停止し、外国人約300人がタイ側に引き渡された。停電による地域の混乱を収拾するため、少数民族勢力が当局の要請に応じて外国人を解放したとみられています」(現地関係者)
■知らないうちに「買い取られる」
犯罪組織はマッチングやオンラインゲーム、偽の求人広告で高収入の仕事などを持ち掛け、「かけ子要員」をタイに呼び寄せていた。
「ミャンマーとタイの国境付近は、犯罪組織が拠点を構える上で、これ以上ない条件がそろっている。情勢が不安定で危険なことから一般人は近づかず、身を隠しやすい。軍や警察関係者はワイロで簡単に抱き込めます。バンコクから北西約500キロの距離に位置し、人や物流の拠点になっていて、連れ去りやすい。特殊詐欺は言葉が重要だから、ネーティブの方がだませる。犯罪組織に売り渡す時、日本人はいい値段がつきます。拉致されるとマンションに閉じ込められ、銃を持った見張り役が常に監視。厳しいノルマを課され、達成できないと暴行を加えられる。役に立たないと判断されれば、売春組織に売り飛ばされたり、臓器移植用に人身売買されることもある」(捜査事情通)
本人が知らないうちに海外の犯罪組織に「買い取られる」とは、恐ろしい話だ。