純血但馬血統の黒毛和牛を塩のみで味つけした最上のローストビーフ
お取り寄せのローストビーフには、勇気が必要です。というのも、たいていの場合、どんな牛を、誰がどう熟成・保存させ、どんな味に仕上げたか、よくわからないからです。結局のところ、われわれ生活者は最終発送者で選ぶしかありません。
ローストビーフの味の決め手は主に3つです。
1. どんな牛の肉か
2. どんな保存・熟成がなされたか
3. どんな調理・調味がされたか
通販の場合、たいていは3が重視されます。もちろん調理や調味は大切なポイントですが、調理工程がシンプルなローストビーフの場合、1と2もとても大切な要件となります。むしろ3は仕上げと言ってもいいくらいで、味の土台は1と2で整えられます。ローストビーフにとって、どんな牛を誰が保存・熟成したかはおいしさの前提条件となるのです。
京都・伏見を本拠とする「京中式」は4代続く牛の取り引き家系です。初代と2代目は博労(ばくろう)という、牛を見立て、農家や精肉店との橋渡しをしていました。3代目ご夫婦が精肉店を立ち上げ、精肉の水分を調え、味を凝縮する「熟成」へと歩を進めます。
血統書付きとも言える家庭に育った当代の加藤謙一さんは肉を知るため、アメリカのコロラド州立大学でミートサイエンスを学び、帰国後には現場で自らの体を通した経験を蓄積。2023年に熟成精肉店・肉サロン「京中 田園調布」をオープンし、「牛・肉・人」をつなぐ精肉を仕立て続けています。
だからこそ「京中」が仕立てるローストビーフは信頼できるのです。牛を選ぶ目利きとして牛肉好きなら誰もが垂涎の純血但馬血統の牛を仕入れ、受け継いだ食肉店の知見に科学的な裏付けを加えて熟成肉を仕立て、スパイスやハーブさえ使わず塩のみでローストビーフに仕上げる。そうして人の口がほころぶ一切れができ上がるのです。
精妙な火入れがなされた一切れは、適度な噛み応えのある肉の繊維の間から、おいしい肉汁がじゅんわり染み出します。その後も噛むほどに清澄な旨味が膨らみ、無限に続くかのような幸せが口内いっぱいに広がります。するりと飲み込んだのど越しまでもおいしく、舌の上に残った余韻にまたうっとり。ああ、このお肉がなくならなければいいのに!と願いますが、そうは問屋が卸してくれません。
愛情たっぷりに育てられた、いい血統の黒毛和牛の肉にいい保存・熟成をかけ、塩のみで調味した、仕上がり抜群のローストビーフ。昨年、とある雑誌のお取り寄せ企画に推薦させていただいたのですが、撮影時に現場で試食された方々の間でも、人気ダントツだったそう。
ちなみに今回は「上」をおすすめしますが、「並」(部位はブリスケットやトウガラシなど)、「特上」(赤身はイチボ三角かクリ半月かシンシン半月。霜降りはモミジかザブトン)、「極上」(赤身はクリかシンシンかランプ。霜降りはロースかイチボ)など、好みで肉のグレード……というか肉のタイプを選ぶことができます。
弾力ある噛み応えの並から、上、特上、極上とグレードが上がるにつれて、肉の繊維はやわらかく、きめ細やかになっていきます。グレードと赤身か霜降りかを選んだら、あとは届いてからのお楽しみ。ああ、待つ時間さえも楽しみです。
ちなみにこの原稿のタイトルに「最上」という表現を使っていますが、当初「極上」や「特上」と書きかけて、商品名とかぶることに気づいてあわてて変えたのはここだけの話です。
商品名:ローストビーフ 上 300g(赤身か霜降り)
販売:京中
文:お取り寄せの達人:松浦達也さん(フードアクティビスト/ライター/編集者)