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初彼女ができた高2発達障害息子。恋愛や性についてどう話す?親としてわが子に一番伝えたいことは…【専門家コメントつき】

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初彼女ができた高2発達障害息子。恋愛や性についてどう話す?親としてわが子に一番伝えたいことは…【専門家コメントつき】

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

子どもに性についてどう伝える?わが家の場合

わが家はひとり親家庭で母1人、息子1人で15年以上生活をしてきましたが、周りの家庭に比べると、かなりオープンに性の話をするほうだったのではないかと思っています。

おそらく、性の話をし始めたのは、まだコチ丸が保育園に通っていた頃。私は生理痛やPMS(月経前症候群)が重く、生理になるとついコチ丸に当たってしまうことがありました。しかし、訳もわからず八つ当たりされてしまうのはコチ丸にとって理不尽だなと思い、「ママ、今日はお腹が痛い日なんだよね」「調子が悪かったから、すぐ怒っちゃったんだ。ごめんね」と伝えるようにしていました。

母には母の事情があるということをちゃんと伝えておけば、子どもながらになにかしら察してくれるんじゃないかなという都合のいい(汗)解釈から、生理について簡単にではありますが話すようになりました。とはいえ、保育園児のコチ丸に生理の話をしたところで実際には「何のこっちゃ」だったと思います。

小3でASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されたコチ丸は、その頃から学校を休みがちになり、やがてほぼ不登校になりました。そのため、おそらく小学校では性教育の授業を受けていなかったと思います。本屋で「親から子どもへ伝えたい性教育」といった本を立ち読みして「そのうちしっかり話したほうが良いんだろうなー」と思いつつ、わざわざ話す機会も持てませんでした。私が伝え方を間違えて、発達障害の独特なこだわりや偏りを持って、変な形で性にのめり込んでしまっても良くないし……という不安もありました。

そんな中で私が疑問に思ったのが、「何のために性教育をするのか?」ということでした。果たして性教育って学校で伝えているようなことが全てなのか?と……。

性教育のきっかけは、親子共通の趣味「オタ活」だった!?

そんなコチ丸と私が堂々とまるで男子高校生のように(笑)、性の話をオープンにするようになったきっかけはアニメでした。中学生になり、地元から離れた私立中学校へ通うようになったコチ丸は、友だちも増えました。その中で特に多かったのがアニメやゲームが好きな「オタク」友だちです。学校帰りにはみんなでアニメグッズの専門店に通ったり、漫画を全巻買い漁ったりと、なかなかのオタ活をしていたコチ丸。

それに加えてもらいたくて(笑)ウズウズし出したのは同じく中学の頃から、アニメ好きでオタ活もしていた私でした。コチ丸の買ってきた漫画を一緒に読んだり、アニメを見たり、時には同人誌即売会に一緒に足を運んだり。そんな中で、ちょっとアダルトな漫画を読んだりしていたコチ丸に「ママにもそれ見せて」と一緒になって読むうちに、その漫画の感想を言い合うようになり、下ネタも堂々と言い合う仲になりました(笑)。そんなきっかけがあり、日常会話の中で性に関わる大事な話もアウトプットできるようになりました。今では2人で話している会話を聞いて、周りが「息子とそんな話までするの?」と呆れられるくらいオープンな話を親子でしています。

保育園の頃はよく分からなかった生理痛も、中学生になる頃にはコチ丸もその理由を知り、生理の時には母にぶっきらぼうながらも優しい言葉をかけてくれたりするようになりました。

「何のために性教育をするのか?」わが子に大切にしてほしいこと

「何のために性教育をするのか、してほしいのか?」と考えた時に、犯罪に巻き込まれないためとか、依存しないためとか、いろいろあると思います。

私たち親世代が学校で教わったような、知識としての性教育ももちろん必要だと思いますが、私がコチ丸に一番伝えたいと思ったのは、誰かを好きになることができ、その人を自分なりの方法で愛して、その気持ちを純粋に伝えられるようになってほしい、ということでした。

私自身のことを振り返ると、男女関係・学校・仕事に限らず、「誰かに思いを伝える」ということがとても苦手でした。コチ丸が生まれた時、「私のような人間が育てたら、この子も愛情の伝え方が分からないまま育ち、後々私のように壁にぶつかってしまうかも……」という不安がありました。

そこで、私は自分自身を子育ての中で変えていくことを決めました。コチ丸が小さい頃から、鬱陶しいくらい(笑)、「コチ丸大好きだよ」という言葉を意識して声に出して伝えたり、抱きしめたりするようにしました。私の愛情が伝わることで、コチ丸の自己肯定感が高まり、自分も相手も愛せるようになったらいいな……と思ったからです。そうしているうちに、私自身もだんだんと人に気持ちを伝えることに抵抗がなくなってきました。コチ丸も、大事な人に大事だよということを言葉で恥ずかしがらずに伝えられていると良いなぁと思います。

心配は尽きないけれど……温かく見守っていきたい

電話などで時には恋愛相談もしてくれるものの、遠く離れた地で寮生活を送っているコチ丸が、彼女とどんな恋愛をしているのか知ることはできません。

2人のお付き合いを温かく見守りたい……と思う反面、ちょっとした失敗もありました。連休中に彼女の家に泊まりに行くと言い出したコチ丸。あちらのご両親も了承しているのなら……と最初はOKしたものの、日が近づくごとに心配になり、ついつい間際で「やっぱりコチ丸はホテルに泊まったら?彼女の親御さんにも印象が良くないと思うよ」と中途半端に口を挟んでしまい、温厚なコチ丸を珍しく怒らせてしまいました。

「何で今さらそんなこと言うの?」というコチ丸に「しまったな……」と後悔しました。とはいえ、親の言葉を振り切ってでも選んだ行動ならそこに責任が伴うことも理解してほしい、若い2人はそこまでは考えていないかもしれないですが、やはり2人が長く幸せに続いてほしいからこその私の思いを、改めて伝えて、その上で「2人でよく考えて行動して」という話で締めくくりました。

一緒にいたい思いが先行してしまう気持ちも、私も若い頃に通ってきた道なのでよく分かります。しかし、親の立場となった今、当時の私の親の気持ちも痛感した出来事でした。どこまで私が親として大事なことを伝えられたのかは分かりませんが、それはこれからコチ丸が感じていってくれることなのかなと思い、心配しつつも楽しみでもある今日この頃です。

執筆/あき

(監修:初川先生より)
コチ丸くんに彼女ができたことをきっかけに性教育や恋愛について考えられたエピソードをありがとうございます。性教育や恋愛について、ゆくゆく考えなきゃと思いつつ、なかなかどう扱っていいか分からず悩まれている保護者の方は多いと思います。今の大人世代は、学校や家庭で性教育をしっかり受けてきた方は少ないように感じます。知識としての第二次性徴や妊娠、避妊等はあれども、どうやって妊娠に至るのか、どうやって男女関係をうまく築くのかなどは、教育や家庭外の、インフォーマルな場面(友だちから、本から、あるいはアダルト向け商品から)で知識を得た方も多いと思います。特に、発達障害や知的障害(知的発達症)などがある子にどうやって伝えようという面からすると、より一層難しく感じますね。

今回のコラムでは、あきさんがご自身の生理についてコチ丸くんが幼い頃から説明してきたとあります。生理にまつわる気持ちの不安定さや体調不良、あるいは一緒にお風呂に入っている際に経血を見られた場合など、何も知らない子どもは「自分が悪い子だからお母さんはすごく怒っているのだ」「お母さんから血が出てる。おなか痛いって言ってたし。お母さんは大きな病気やケガをしているのかもしれない」と感じるかもしれません。そうではなくて、お母さんの事情で心身の不調や出血が起きているのだということは、お子さんの発達段階に合わせて説明できるといいと思います。

性教育全般に関しては、まずは大人がその知識をアップデートするのが最善です。今は保護者向け性教育本(コミックエッセイになっているものも多いです)が多く出版されているので、ぜひ書店で手に取っていただき、読みやすそうなものを読んでみてください。そこで書かれている説明や話の持っていき方を参考にするとよいでしょう。子ども向けに書かれた絵本やコミック形式の本も増えてきました。大人が知識を入れたうえで、読んでみて、お子さんに渡す・一緒に読むということができるとよいと思います。

知的にゆっくりな子への性教育は、特別支援学校の中で扱われることがあったり、自治体の子ども向け講座やNPOや助産師会などが主催する講座などもあります。ぜひそうしたものを探して親子で参加できるかみてみるのもよいでしょう。

性教育というと、性行為のことを思い浮かべる方も多いと思いますが、性行為はその広い内容の中の1つでしかありません。ベースとなるのは、人権です。自分の体をまず大事にする(親であっても、子の体に勝手に触ってはいけないなどの境界線についてなども含まれます)。そして、自分の体を大事にすると同時に、相手の体も大事にする。好きだからといって、勝手に触ったり、勝手に自分の「好き」を押し付けたりしてはいけません。相手が求めてきても自分がそれを受け入れたくない場合は断ってもいい。同じく、相手が断ってきても自分が不機嫌になったり怒ったりしない。自分も相手も大事にすること。それが性教育の基本です。このあたりは、性に関することのみならず、日常生活のさまざまな場面に通じることでもあります(人権についての理解がベースにあるため)。

性教育は、子どもが幼少期からその発達段階に合う形で始めることがよいとされています。まだお子さんが小さい方も、ぜひ性教育に関する本を読んでみてください。また、あきさんのように、お子さんが思春期でまさに男女交際が始まるという段階では、いよいよ性行為に関する正しい知識(例えば、アダルト映像作品は男性優位に描写されているため、実際にあのようにやると女性を心身共に傷つける可能性があると知る/避妊や性感染症に関する正しい知識など)を得る段階です。親子でその会話をすることが難しい場合はなおのこと、よき本や良き説明動画(専門家が解説している動画も多くあります。まずは保護者がご覧ください)を紹介するなどして、自分も相手も大切にするあり方を学んでほしいと感じます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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