県高校総体前特集 バレーボール女子(3)国東 力を伸ばすため、焦らず準備中 【大分県】
県高校総体まで残り1カ月を切った。4月に行われた全九州バレーボール総合選手権(九州総合)の女子県予選では、絶対王者・東九州龍谷が貫禄の優勝を果たしたものの、大分商業が第2セットで健闘し、確かな成長を示した。国東や臼杵も着実に力をつけており、上位争いは激しさを増している。第3回は経験不足を糧に、着実な成長を見せる国東の現在地を探る。
九州総合の県予選で、国東は3位に食い込み、見事本戦(九州総合)への出場権を獲得した。順風満帆というわけではなかったが、苦しみながらも手にしたこの結果は、チームの今を象徴している。
辻郁徳監督が掲げてきたテーマは「守備力の底上げ」だった。県高校新人大会後の2カ月間はひたすらレシーブの強化に取り組み、拾ってつなぐバレーの基盤をつくった。攻撃はその先にあり、ボールが上がらなければ勝負にならないという当たり前を、徹底して突き詰めてきた。
しかし、九州総合県予選では練習の成果をそのまま発揮することはできなかった。試合の中で飛んでくる予測不能なボールに対応しきれず、戸惑いがプレーに表れる場面も多かった。日々の練習だけでは埋められない「経験の差」。それが、この大会で浮き彫りになった。
守備力の底上げでチームの基盤をつくった
それでも、辻監督はチームの現在地を冷静に捉えている。「今は成長途中。経験のない選手が多い分、伸びしろは大きい」と語る。特にエース候補として期待を集めるのが、2年生の黒木春奈だ。左利きのアウトサイドヒッターとして、高さとパンチ力を兼ね備えたポテンシャルの持ち主。監督は、波のあるプレーもキャリアの浅さゆえと受け止め、「卒業する時にバレーが好きでいてくれたら」と、長い目で育てている。
チームを束ねるキャプテンは高橋愛海(3年)。真面目で素直な性格だが、勝負どころでの弱さが課題だった。しかし今大会では、そのリーダーシップに変化の兆しが見られた。試合中の立ち振る舞いには、キャプテンらしい自覚と責任が芽生えつつある。
辻監督はこの大会を「ホップ」、県総体を「ステップ」、そして春の高校バレー県予選を「ジャンプ」と位置づける。選抜経験者がいない今のチームは、春や夏の段階ではまだ勝負できる状態にはないと見ている。だからこそ「無理に勝負を仕掛けるのではなく、焦らず、化学反応が起こるその瞬間を見極めたい」と静かに燃えている。
エースとして期待される黒木春奈
(柚野真也)