今だから言える、宝塚時代のマサカの失敗談~ 大地真央さん
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
大地真央さん
元宝塚歌劇団月組のトップスター。中学卒業の後1971年、宝塚音楽学校に入学し、1973年に59期生として入団。男役スターとして早くから注目され、1985年9月1日に退団してからは女優として、『風と共に去りぬ』のスカーレット役、『マイ・フェア・レディ』のイライザ役など、ミュージカルや舞台を中心に活躍しています。映画「ゴッドマザー~コシノ・アヤコの生涯」では、主人公の小篠綾子さん役を演じました。
出水:大地さんは兵庫県洲本市、淡路島のご出身ですよね。パッと頭に浮かぶ風景はどんなものですか?
大地:やっぱり海と山と空、あとお花とか。お野菜もおいしいし、もちろんお魚もおいしいし。あと淡路牛っていう牛も。本当に豊かですね、田舎ですけれども。でもその中でも「淡路島の東京」と言われている洲本市生まれなので(笑)周りに田んぼがあるとかそういう環境ではなかったんですよね。
出水:どんな少女でいらっしゃったんですか?
大地:山をロッククライミングみたいに登ったり、そのくせタイツを頭に巻いて「ロングヘア!」とか、タオルケットを腰に巻いて「トレイン!」とか。ままごとする時も相手のセリフを決めて「こんなことしながら入ってきて」とか・・・
JK:演出家ですね!
大地:お芝居でホステスになったりとか。4歳ぐらいで(笑)「あら、いらっしゃ~い」「あ~さんたら、アァーン」とか言ってました。
JK:へぇ~すごい! 映画館なんかの影響ですか?
大地:テレビと映画館しかないですからね。「シャボン玉ホリデー」とかクレイジーキャッツさんとかが大好きで。みんなは若いアイドル的な人が好きなのに、私は植木等さんが好きで・・・あとはやっぱり吉本新喜劇で育ったところはありますね(笑)
JK:やっぱり大阪ね! 関西です(^^)
出水:しかも3人きょうだいでいらっしゃるんですよね。
大地:そうなんです、3姉妹の私は末っ子です。上2人が年子で、私は9歳離れてるんですよ。だから一番上の姉に髪の毛を結ってもらった高校へ行ったりとか、なんかちょっとお母さん的なところもあったりして、末っ子なんだけど1人っ子的なところもあったり。姉たちがファッションとかに興味を持ち出した頃に、私も一緒になって。
出水:ご両親はどのような方々だったんですか?
大地:母は専業主婦で、お料理上手で、全部手作りしてくれて。私はわりと元気なんですけど、人間ドックの先生に「人っていうのは12歳までにベーシックな部分が作られるから、本当にご両親に感謝ですね」って言われたことがあって。
JK:美味しいものを食べてたから? やっぱり健康の秘訣ですよね、食べることって。お料理はお母様の影響?
大地:私はあんまりできないんですけど(^^;)姉が母の味を受け継いでやっていますね。とくに私が好きだったのはちらし寿司。「お混ぜ」って言っていろんな具材が何十種類も入るんですけど、それを別々に煮たりするんですよね。それを酢飯に混ぜて、錦糸卵でわーっと。宝塚で初めて主役をやらせていた新人公演の時とか、トップお披露目の時も確か母が持ってきてくれたと思います。
出水:お父様は軍関係の方?
大地:職業軍事で、敗戦した後淡路島に戻って学校の先生をやって、その後ガソリンスタンドをやって。でも土日には実家に帰って、私の祖母の畑を手伝ったりとかやってました。
JK:畑って何を採るんですか?
大地:うちは庄屋っていうんですかね、いっぱい田んぼとを持っているというか。農地改革の農地は少なくなりましたけど、私も「田んぼを持っている女優」って言ってた時期があったんです(笑)道路が新しくできるということで、県の方に売ったんですけど。
JK:初めて聞いた!! 私も新潟で田んぼをもらったんです。どれくらいの大きさかな? とにかくもらったけど、もらってどうしたらいいのかわからなくて、誰かに「お米を作って」って。最初だけ植えたんですよ、長靴履いて。それもNHKの取材(笑)
大地:やられたんですか! 私そういうのやったことない! 素敵ですね! そういう時、ファッションは何なんですか?
JK:長靴履くっていうので、パンツスタイルで。結構腰が大変ですよね。コシノ・イタコさんですよ(笑)真央さん、マサカいっぱいあるでしょ?
大地:今まで長く生きてきたので、あるかと思うんですけど(^^;)直近では小篠綾子さんの生涯を演じさせていただいたことが大きいですね。
JK:そういう仕事が来た時、どう思いました?
大地:普通14~15歳のところは、その辺の年齢の方がやって、3人ぐらいでやるかと思うんですけど、「1人の人間の人生を1人の役者が演じるということに意味があるんだ」って最初にオファーをいただいて。「え、映像ですよね?!」みたいな感じから入ったんですけど・・・もう、これはやるしかないと思って。でもやり始めたら本当に楽しくて。
JK:私の役をやった子役のゆなちゃんっていたでしょ?どんな感じでした?
大地:ゆなちゃんね! お母さんがみんなをレッスンに行かせますよね。クラシックバレエに行かされて「これは仕返ししなきゃ」みたいな感じで、ドロドロになって「先生に怒られた~」みたいに帰ってくる。その撮影がスタートするまで、頭をクチクチクチクチって自分でやってるんですよ、役作りで。
JK:何歳でしたっけ、6歳? 7歳?
大地:当時は7歳で、今8歳です。浜辺のシーンでは、お母ちゃんをパッと見上げる顔が何とも言えない表情なんです。確かにそういう心境のシーンなんですね、嬉しいとか悲しいとか、クエスチョンもあるし。この人すごいなって思うところでした。
JK:その浜辺のシーン、私ちょっと監督にも言ったんですよ。うちのお母ちゃんがね、お父ちゃんが浮気したのか何とかで腹が立って、浜辺に行って・・・
大地:先生、それネタバレかもしれません(^^)まだ映画見てない方がいらっしゃるから! でもその時のゆのちゃんの表情がすごい良かったんです。
出水:ジュンコさん役だから、ちょっとおてんばな感じもあってね。
JK:三姉妹で真ん中でしょ、だからうちのお母ちゃんが「あんたさえいなければ世の中うまくいくのに」って。
大地:それも映画で言ってます! 私もセリフで言いました(笑)
出水:例えば宝塚の舞台に乗っている時に、こんなハプニングがっていうのは?
大地:失敗談はいっぱいありましたね! とくにトップになる前、デニムのファスナーを開けたまま出ちゃったりとか、靴をポーンとオケボックスに飛ばしちゃったりとか(^^;)
JK:あららら。
大地:カツラが絡まっちゃったりとか、袴の同じところに両足入れちゃって、片側ピラピラしながらタイトスカートで立ち回りみたいな殺陣をやったりとか。もうそれからは「1、2!」って言って履くようにしました(笑)
出水:左、右!ってですね。
大地:でもトップになってあんまり失敗がなくなったので、上級生が「つまらんなぁ」と(笑)めちゃくちゃありました、もう数知れず! カツラが取れちゃったときはどうしようかなと思いましたけど、すました顔をしてやり通しました。確か真矢みきちゃんが見てた日だったと思います。「お得でした!」みたいな(^^)舞台ってライブだから、本当にそういう意味では何度も見ていただきたいですけど。
出水:ちょっとプライベートの話もよろしいですか? ご主人でデザイナーの森田恭通さんにもゲストでお越しいただいたことがあります。
JK:人もいいし、お友達もいいし。なんかいいですよね、あの人の周りの環境。
大地:やっぱり類は友呼ぶんでしょうかね?
出水:ご主人がデザインした家で、お気に入りの空間はどこでしょう?
大地:いつもいるダイニングとかリビングとか。お風呂が全部、小さいモザイクタイルになってるんです。天井も全部。ところどころプラチナみたいな、少しキラッとしたりするんです。
JK:おしゃれ! 画鋲のお店もあったわよね! 壁が全部画鋲!
大地:私が50周年の時も、画鋲で屏風を作ってくれたんですよ! 私の顔を描いてくれて。
JK:見ました! シアタークリエ入った正面のところにバーンってね!
大地:それを終わった後、倉庫とかに入れちゃうと入れっぱなしになるので、うちの1階の廊下にぴったしのサイズだったんです! ここを考えて作った?っていうぐらい、よくできてたんですよ。おあつらえ向きっていうんですか?
出水:廊下に屏風! 素敵ですね~! おうちにいるだけでも感性がさらに磨かれますね。
大地:やっぱり結婚してからインテリアとか、お店の雰囲気とか気にするようになりましたね。自分がデザインするわけじゃないのに、そういうことも興味が出ましたね。
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)