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「いけばな発祥の地?」京都・六角堂に伝わる聖徳太子の伝説と華道のルーツ

草の実堂

画像 : へそ石 wiki c
画像 : 六角堂 wiki c Yanajin33

京都市中京区に位置する六角堂(紫雲山頂法寺)は、日本の歴史や文化において重要な役割を果たしてきた寺院である。

創建については、聖徳太子(厩戸皇子)が建立したとの伝承がある。
しかし、発掘調査の結果、飛鳥時代の遺構は今のところ確認されておらず、実際の創建は10世紀後半だったのではないかとも考えられている。

古来より人々の信仰を集めてきたこの寺は、単なる宗教施設にとどまらず、日本の伝統文化「いけばな」の発祥の地としても知られている。

六角堂の起源と聖徳太子の伝説

六角堂の創建については、前述したように聖徳太子(厩戸皇子)にまつわる伝説が伝えられている。

画像 : 『絹本著色聖徳太子勝鬘経講讃図』(鎌倉時代)より、聖徳太子の部分 public domain

用明天皇2年(587年)、太子は四天王寺(大阪市)の建立のための木材を求めてこの地を訪れた。

太子は、持仏である如意輪観音像を木の枝に掛けて休息していた。

すると、観音像が突然重くなり、動かなくなった。

太子はこの出来事を神聖な兆しと受け止め、この地に六角形の堂宇を建立して観音像を安置したという。

こうした創建伝説が語り継がれる六角堂は、現在でも本尊として如意輪観音像が安置され、信仰を集めている。

へそ石

画像 : へそ石 wiki c Yanajin33

六角堂には、他にも興味深いエピソードがある。

その一つが「へそ石」と呼ばれる六角形の石である。

この石は、かつて六角堂の門前にあったが、明治時代初期に境内へ移された。
六角堂が古くから京都の街の中心に位置しているとされていたことから、「京都の中心を示す石」としてこの名がついたと伝えられる。

また、六角堂の北側には、聖徳太子が身を清めたとされる池の跡があり、現代になって新たに整備された池には白鳥や鯉が泳ぐ姿が見られる。

この池のほとりには聖徳太子を祀る太子堂があり、太子騎馬像などが安置されている。

いけばなの誕生

画像 : 聖徳太子沐浴の古跡 wiki c Yanajin33

この池跡のほとりには、かつて僧侶たちが住んでいた。

この住坊は後に「池坊」と呼ばれるようになり、いけばなの発祥と深く関わる地とされている。

当時、池坊の僧侶たちは本尊である如意輪観音像に供える花を工夫し、その美しさや技法が評判となっていた。
その供花の過程で独自の美意識と形式が生まれ、それが「いけばな」の原型となったと考えられている。

特に、室町時代後期に活躍した池坊専応(いけのぼう せんおう)という僧侶は、「池坊専応口伝」という花伝書を編纂した。
この書物は、いけばなの理論を体系化した最古の花伝書の一つであり、現在でも華道の基盤として重要視されている。

専応の理論化によって、花を供える行為は単なる宗教儀礼にとどまらず、芸術としてのいけばなが確立する契機となったのだ。

いけばなの普及

六角堂がいけばなの発祥の地として知られるようになった背景には、前述した「池坊」の活動が大きく関わっている。

特に江戸時代には、池坊家元が京都から全国へとその技法や理念を広め、いけばなが庶民にも広く親しまれる文化へと成長した。

現在、六角堂の隣には華道家元池坊本部ビルがあり、その中にある「いけばな資料館」では、花伝書、花器、いけばなの絵図、六角堂の古文書や什物など貴重な資料が、常時展示されている。

こうした展示を通じて、華道の歴史や精神も垣間見ることができるだろう。

現代の六角堂

画像 : 六角堂俯瞰 wiki ©

六角堂本堂は1877年(明治10年)に再建され、京都市指定有形文化財に指定されている。

その特徴的な六角形の建築は、隣接するビルWEST18の上階から、京の町並みとともに眺めることができる。

現在も六角堂は信仰の場として多くの参拝者を集めており、商売繁盛や縁結びの祈願に訪れる人も少なくない。また、毎年さまざまな伝統行事が行われ、特に華道発祥の地としての文化的な役割は、今なお受け継がれている。

六角堂は、単なる歴史遺産ではなく、京都の精神文化を支える重要な存在といえるだろう。

参考 : 『紫雲山頂法寺HP』他
文 / 草の実堂編集部

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