ブラン・ド・ブランの代表作『シャンパーニュ・サロン』はシャンパーニュの中のシャンパーニュ
『シャンパーニュ・サロン』と『シャンパーニュ・ドゥラモット・コレクション』を楽しむ試飲昼食会が、ディディエ・ドゥポン社長(写真左)を囲んで、パリ「ホテル・デュ・クリヨン」の中庭で開かれた。
※右はホテル・ド・クリヨンのシェフソムリエ、グザヴィエ・テュイザ氏
「サロン キュヴェS」は20世紀初頭、ウジェーヌ・エメ・サロンが自身と友人のために最高品質のシャンパーニュを追求して生み出したブラン・ド・ブランの傑作である。当時はテロワールやヴィンテージの概念が今ほど明確ではなく、一般的なシャンパーニュの品質は平凡なものが多かった。この状況に満足できなかったエメ・サロンは、極上のシャルドネを産出するコート・デ・ブランのル・メニル・シュル・オジェに自ら畑を購入。単一品種、単一年、単一畑によるシャンパーニュ造りに挑戦した。
最初のヴィンテージは1905年、市販開始は1920年である。サロンが一躍名声を得たのは1928年、当時パリで最も著名なレストラン「マキシム」のハウスシャンパーニュとして使われるようになってからだ。しかし、原料をグラン・クリュの最良の畑に限定していること、また、この100年の間に造られたのは37のヴィンテージのみで、出荷ボトルの数が極めて限られていることから、戦後も長く一部の熱狂的なブラン・ド・ブランの愛好家の間でのみ消費されてきた。シャンパーニュ・サロンの現在の世界的名声が確立されたのは、1997年にディディエ・ドゥポン氏がサロンの運営を担当するようになってからである。
先日、ディディエ・ドゥポン社長を囲み、サロンの異なる個性を持つ三つのヴィンテージ(『シャンパーニュ・サロン 1997年』『シャンパーニュ・サロン 2002年』『シャンパーニュ・サロン 2013年』)と、同じくドゥポン氏が手掛けるシャンパーニュ・ドゥラモットのコレクション・キュヴェ(『シャンパーニュ・ドゥラモット・ブラン・ド・ブラン・コレクション 2007年』『シャンパーニュ・ドゥラモット・ブラン・ド・ブラン・コレクション 1999年』)を楽しむ試飲昼食会が、パリのホテル・デュ・クリヨン内のレストラン「ノノス」で開催された。
シャルドネの完璧な表現とサロン独特のピュアで繊細な味わいは常に感動を与えるが、特に今回印象的だったのはシャンパーニュ・サロン 1997年の卓越した酸とフレッシュさである。その味わいは、小柄ながら均整のとれた、今なお少年のような佇まいを持つドゥポン氏を彷彿とさせるものだった。25年以上の熟成を経てもなお、鮮やかな酸と若々しさを保つこのヴィンテージは、サロンの卓越した品質と長期熟成能力を如実に示している。
一方、シャンパーニュ・サロン 2013年は、張りのある力強さと調和のとれた味わいが特徴的だ。比較的若いヴィンテージながら、すでに複雑性と深みを備え、幅広い愛好家を魅了する完成度の高さを見せている。シャンパーニュ・サロン 2002年は、顕著な変化を遂げており、シャルドネ特有の複雑で奥深い熟成香と、長く余韻が続く興味深い味わいが印象的な仕上がりとなっていた。2002年は特に優れたヴィンテージとして知られており、サロンの真価が存分に発揮された年だ。
これらのサロンに対し、シャンパーニュ・ドゥラモットは明確に異なる個性を示していた。同じブラン・ド・ブランでありながら、ドゥラモットは中盤の味わいに豊かさと膨らみがあり、フィニッシュの印象が大きく異なっていた。特にシャンパーニュ・ドゥラモット・ブラン・ド・ブラン・コレクション 1999年は、四半世紀の熟成を経てもなお鮮明で新鮮な味わいを保ち、堂々とした味わいで、記憶に残る1本となった。
ドゥポン氏は1964年、フランスのロワール地方トゥールに生まれた。高等商業学校を卒業後、1986年に「ローラン・ペリエ・グループ」に入社。パリ地域の販売を担当した後「ローラン・ペリエ・ディフュージョン」の責任者として、グループ内の多様なワインとスピリッツの流通を統括した。1994年にマーケティング責任者に就任し、成果を上げた。そして、戦後、プレスティージュ・キュヴェ『グラン・シエクル』を世に送り出し、ローラン・ペリエ・グループを大きく発展させたオーナーのベルナール・ドゥ・ノナンクール氏の信頼を得て、1997年11月にシャンパーニュ・サロンとシャンパーニュ・ドゥラモットの社長に任命された。
サロンはドゥポン氏の指揮下で、ルミュアージュ(瓶内の澱を集める工程)を熟練職人の手作業で極めて丁寧に行うなど、あらゆる生産プロセスをさらに洗練させた。また、木樽や酵母を使用せず、シャルドネの純粋な香りを保つことにより一層の重点を置くようになった。さらに、ドゥポン氏は品質基準を一段と厳格化した。その結果、2000年以降、生産されるヴィンテージの頻度が減少し、平均して3年~4年に1回程度のリリースとなっている。これは、完璧な品質のシャンパーニュのみを市場に出すという厳格な方針の表れだ。
マーケティング戦略においても、ドゥポン氏は高級レストランやエアラインのファーストクラスでの提供など、プレミアム戦略を強化。ブランドの希少性と価値を高めることに成功し、サロンは「シャンパーニュの中のシャンパーニュ」という卓越したブランドイメージを確立した。さらに、ドゥポン氏の戦略により、古いヴィンテージの価値が高騰し、オークションで高額取引されるようになった。その結果、サロンのヴィンテージシャンパーニュは、ワイン投資家やコレクターにとって特に魅力的な対象となっている。
シャンパーニュ・サロンの生産量は極めて限定的で、広報担当者によると各ヴィンテージ約60000本とのことだ。日本が最大の割当国で、輸出全体の30%を占めている。食事会の席で、ドゥポン氏は次のように語った。
「サロンの国際的な名声は日本市場に負うところが大きい。特に、日本の輸入代理店であるラックコーポレーションの矢野映氏、ソシエテ・サカグチの代表、坂口功一氏らの尽力により、JALのファーストクラスに採用されるなど、日本で確固たる地位を築いたことが、その後の世界展開に大きく寄与した」
シャンパーニュ・サロンは2000年以降、ドゥポン氏の指揮下で、品質へのこだわり、生産プロセスの洗練、国際市場での展開、サステナビリティへの取り組み、デジタル化への対応など、多岐にわたる戦略的変革を実施。伝統を守りつつ現代のワイン市場の要求に適応し、ブランドの価値と評判を一層高めることに成功し、発展を続けている。