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小金井・三鷹で暮らす人から考える農業の未来。地元野菜をよりおいしく、より気軽に、より楽しく

さんたつ

PARITALY 福菜屋11

武蔵小金井・三鷹にパッチワークのように点在する農地。その豊かさに気づき、地元野菜の伝道師となったのは街に暮らす人たち。農家から野菜を仕入れるだけじゃない。身近に農業を感じる2つの取り組みを追った。

量り売りとまちの台所 野の

地元野菜を食べて、畑を残す援護がしたい『PARITALY 福菜屋』【武蔵小金井】

ショーケースに並ぶのは、小金井野菜の日替わり総菜約8種100g300円〜。味の濃淡、食感が多彩で、おかずにも、酒の肴(さかな)にもピッタリ。加工品各800円も揃え、ラペにはみかんジャムを、トマト煮には自家製ケチャップをと、レシピを聞けば目から鱗。味わいの深みにも驚く。

野菜の移動販売を経て、総菜店を開いた江頭みのぶさんは「地元の旬野菜をいつも食べたいだけ」と食いしん坊の一面をのぞかせる。農家さんとの付き合いは自身の体験農園から。その後「農家さんの伝手(つて)で」と縁の輪がつながった。

旬野菜の宅配に向かう江頭さん。
『PARITALY 福菜屋』の総菜。

それぞれの農家には得意分野があり、例えばニンジンなら『大澤農園』、西洋野菜は『庭田農園』、変わった野菜なら『金菜屋』、イチゴなら『鴨下農園』と、2025年1月時点で8軒と取り引きしている。

『PARITALY』で宅配野菜をセット中。
新聞バッグがキュート。

だが、コロナ禍でピンチが訪れた。

「学校閉鎖で給食用の野菜が出荷できなくなったり、直売所の時短営業などで野菜の販売機会が減少したんです」

農家の窮状、遠出できない街の人たちの買い物事情をくみ、江頭さんと若手農家が編み出したのが「畑いち」だった。農家に野菜を積んだ軽トラを出してもらい、江頭さんは総菜や加工品を用意し「人が出ないなら、出向こうじゃないか」と開催。知り合いの商店にも声をかけると、店と地元の交流が始まり、地域のつながりも生まれた。そんな考えを小金井市も応援。市内各所の地域商店と農家主体の「道草市」として公園を活用し、定番化している。

道草市が縁で出展する『養えい堂』は大澤農園のサツマイモや白菜を用いた肉まん・あんまんが人気。
中身はあんがぎっしりだ。

それだけじゃない。農家の野菜を用いた月1の『まろん食堂』や、収穫&野菜を用いたワークショップ、遊ぶといつの間にか農業や地元農家のことが覚えられる農業トレカ「やさいじん」なども企画。「小金井市では毎年1〜2haずつ畑が減少しているんです。多くの人の口に野菜を運んで、畑が残るように援護したい」と江頭さん。農家や商店、そして小金井の野菜を愛する仲間を増やして、今日も野菜と地域をつないでいる。

収穫イベントは100年続く『大澤農園』の桜さんから手ほどき。
収穫!
子どもに人気のイベント。
ニンジンの絵の具作り&お絵描きワークショップ。講師はやさいじんのイラストレーター。
葉を潰して緑色作り。
「やさいじん」は『PARITALY 福菜屋』の棚にも。

PARITALY 福菜屋(パリタリーふくさいや)
住所:東京都小金井市本町5-39-23 Tコーポミナミ/営業時間:11:00~14:00・15:00~18:00(変動あり)/定休日:土・日・不定(週末はイベント出店)/アクセス:JR中央線武蔵小金井駅から徒歩10分

地元の実りを必要な分だけ手に入れる『量り売りとまちの台所 野の』【三鷹】

三鷹・武蔵野に暮らす8人のメンバーで運営する店は、オーガニック製品などそれぞれの個性を生かして集めた商品を取り揃え、シェアキッチン(まちの台所)やイベントなども運営。八百屋ほどの品揃えはないものの、地元野菜もピンシャンした姿で並ぶ。

『量り売りとまちの台所 野の』。
シェアキッチン(まちの台所)。

現在、店で扱うのは三鷹市、武蔵野市の農家野菜。開拓と集荷も任務の一つで、武蔵野市の『清水農園』を見つけたのは、メンバーの小林まどかさんだ。

「通り道にあって、以前から気になっていたんです。でも直売所がなくて」と諦めかけていたとき、友人から保育園の芋掘り畑だと教えてもらった。意を決して談判すると、「自分で掘ってもらうので良ければ」と付き合いが始まった。

『清水農園』での集荷。自らの手で立派な大根を収穫。

近隣の落ち葉にぼかしを加えた自家製堆肥を入れ、3代目の清水さんいわく「微生物たちの力を借りる」有機農法で育てる野菜は、年間約70種。集荷時には4代目のもとゐさんと畑に出て、食べごろ、品種違いなどを吟味し、売り切り分だけ自ら収穫する。

『清水農園』4代目のもとゐさんから掘り方のコツを教わる。
大小のカブを引き抜く。

大小とり交ぜるのは「お客さんが、自分にちょうどいいサイズを見つけられるように」という配慮から。「ロスを出さないことも大事ですから」と話す。採れたてを店に運び入れる寸前に、通りがかりの客から「その大根、買った!」と声が掛かることもあるとか。

収穫後、みんなで野菜を包む。
農園の作業場に干された大根の葉。
清水親子に見守られて出発。

開店と同時に並べた野菜ははだか売り。他にも、三鷹・武蔵野産に関わらずメンバーがほれた調味料や酒類、乾物などもあり、必要な分だけをg単位で購入できる量り売りだ。また、不要なキャベツや白菜の外葉は、キッチンで出る生ゴミともども店頭のコンポストで堆肥にし、農家に回したり『野の』の畑で使ったり。無駄なく、とことん使い切る姿勢にも頭が下がる。

『野の』は周辺地域の商品も量り売り。
三鷹産の乾物野菜を発見。
三鷹産ドライ柿。セルフで使う分だけを新聞紙の袋に入れるスタイル。

さらに「まちの台所」でも野菜を重宝。メンバー運営の「野のごはん」や、まどかさん担当の「かっか屋」など、店で扱う調味料と一緒に用いられている。ランチで味の深みを知ったあと、即ゲットできるのもうれしい。

「まちの台所」の木曜は「野のごはん」。ランチ1200円は地元野菜満載。料理は時々で変わる。

量り売りとまちの台所 野の
住所:東京都三鷹市下連雀3-33-8/営業時間:11:00~18:00(土・日は10:30~。「まちの台所」は曜日ごとの店舗で異なる。「野のごはん」は木の11:30~13:30LO)/定休日:無/アクセス:JR中央線三鷹駅から徒歩7分

取材・文=林さゆり 撮影=鈴木奈保子
『散歩の達人』2025年2月号より

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