薪窯と自家製粉機を備えた工房を新設、さらなる美味しさを追求する【ベーカリー&レストラン沢村 旧軽井沢】(長野県・北佐久郡軽井沢町)
“森林の緑に囲まれ清流がせせらぐ沢のある村”、という軽井沢町の風土に敬意を込め、「ベーカリー&レストラン沢村」は2009年に開業しました。
「沢村」ブランドは、2023年にオープンした「沢村ロースタリー 軽井沢」を含め軽井沢・都内・名古屋に10店舗、どこも行列のできる人気店です。
そんな「沢村」が新たな取り組みをされるとお聞きし、「旧軽井沢」店へ伺いました。
薪窯と自家製粉機を備えた工房を新設
店舗に隣接して薪窯と自家製粉機を備えたベーカリー工房を新設。薪が積んであり、大きな窓からは窯も製粉機も見ることができます。
薪窯は200年以上の歴史を持つフランス「Le Panyol」社製。
薪は地元・軽井沢産の楢(なら)の木を使用。
午前4時から火を起こし、2~3時間経つと500℃に到達するので火を止め、庫内の余熱でパンを焼いていきます。
300℃に下がるまで2時間ほど冷まして温度帯に合わせたパンを焼くのですが、その間の待ち時間がもったいないと考えついたのが“無垢のパン”。
沢村で元々作っているハードトースト生地を軽く丸め、370~380℃で3分で焼き上がるのだそう。
薪窯の解説をする森田良太シェフ
薪窯で焼く今回の7種類の新商品はすべて薪窯に合わせてレシピを考案されたそう。
「電気オーブンなら好きな時に好きな温度で焼けるけれど、薪窯はそうはいかないから大変です。でもそこが難しくもあり面白くもあるところです」と。
庫内の様子。一度に焼ける量は30cmのバゲットなら約20本。
焼き上がっては並べられるパン達
石臼式自家製粉機はオーストリア製(オストチロル社)。
右上のレバーで歯車を調整することで、落とす穀物の量を調整できます。
3種類のふるいで細挽き、中細挽き、粗挽き、ふすまに分けられます。
デモンストレーションでは無農薬の「農林61号」をその場で挽き、粉の状態で味見をさせていただいたのですが、「甘い!」。
石臼でゆっくり挽くため高温にならず、小麦本来の香りや風味が失われることがないのです。
毎日必要な分だけを製粉するので常に挽きたての粉で作られたパンが店頭に並びます。
7種類の新商品ってどんな味?
右:信州りんご酵母のサワードウ、左:農夫のパン、上:くるみ35
左:バゲットクラシック、上:小諸産有機全粒粉パン、右:無垢のパン
グラノーラ クッキー
前述したように、薪窯は500℃まで温度を上げたら火を止め、2時間くらいかけて下げた後の余熱で、以下の順に温度帯に合わせた商品を焼いていきます。
“無垢のパン”(約380℃)→“農夫のパン”“くるみ35”(300℃)→バゲット(270℃)→有機全粒粉パン→サワードウ→クッキー。
電気オーブンには出せない薪窯ならではの食感や香りが特徴。
石釜の遠赤外線効果で中心から火が入るから、ボリュームも出やすくしっとりと焼き上がるのだそう。
◆バゲットクラシック
埼玉県産無農薬「農林61号」と三重県産「にしのかおり」を使用。
湯ゲルにして練り込むことで小麦の甘みを引き出し、むっちりぷるんという食感。
クラスト薄く、やわらかい仕上がり。後味に農林61号の力強い風味が感じられます。
◆小諸産有機全粒粉パン
長野県小諸産の無農薬小麦「ゆめかおり」を全粒粉で使用。
「製粉会社さんから仕入れた「ゆめかおり」はあまり特徴がなく他の小麦を引き立てるもののように使っていたが、自家製粉することで風味が強く出ていると思う」と森田シェフ。
湯種製法でしっとり、もっちり。ふすまをまぶしてあるので小麦の香りが強い!
一見硬そうに見えますが、ソフトでほんのり甘みがあってとても食べやすいです。
◆信州りんご酵母のサワードウ
前田農産のキタノカオリを全粒粉にしたものと、ふるいにかけたものを使用。
北海道産ライ麦はアグリシステムの「ハンコック」というオーガニック転換期間中のものを15%使用。
りんご種、ライサワー種、レーズン種の3種の酵母を使い、あえてキュッとする強めの酸味にしたのだそう。
キタノカオリの甘みを感じたと思ったら後から酸味が追いかけてきて、吸水率は高いのにさらりとほどける食感。
肉料理など濃い味のものと合わせるのも美味しそうです。
◆農夫のパン
北海道産「キタノカオリ」の濃い甘みに、ひまわりの種、ライ麦、胡麻、亜麻仁などのマルチシリアル(雑穀)を焙煎したものを加えることで、クラストからは出汁のような濃い旨味を感じます。
ぷるんとみずみずしいクラムの食感も相まって食べる手が止まらない美味しさ。
◆くるみ35
農夫のパンに丁寧な下処理を施したくるみが35%も入っています。くるみのコクのある旨みを一番に感じられます。
◆無垢のパン
全体的に赤みを帯びた焼き色の濃いパンが多いなか、これはクラストもクラムも色白。
断面を見るとリュスティックのよう。むっちりもちもち食感でいろいろな食事に合いそうです。
◆グラノーラクッキー
マルチシリアル(雑穀)によるザクッと心地よい食感、クランベリーやカレンツの甘酸っぱさ、シナモンの風味など食べていて楽しく美味しい。
腹持ちがいいので忙しいときの栄養食にもなりそうです。
あえて手がかかることをやるのが「沢村」流の美味しさの追求
「パン生地を味わってほしい、食事パン系を食べて評価してほしい」と「沢村」の立ち上げ当初からずっと思っていらした森田シェフ。
鎌倉「BREAD IT BE」では自家製粉機を導入し、より粉の風味を楽しめるパンを焼けるようになったけれど、「薪窯で焼いたらどう変わるのか?」という想いが今回の薪窯&自家製粉機を備えた工房の新設に繋がりました。
店舗数が増えても常に美味しさを追求し進化し続ける姿勢が、多くのお客様から愛される理由なのだと感じます。
『軽井沢で創業したお店を今以上に知ってもらい、地域とのつながりをさらに深めたい』という会社の想いも込められた薪窯工房。
ここから生まれるパン達は今までの「沢村」にはない、新しくて格別な味や食感です。
夏休み、軽井沢旅行などされる際にはぜひ足を運んでみてくださいね。
私たちが口にするパンがどのような工程を経て作られるのか、知るとより美味しく感じられると思います。
※7/1現在、薪窯で焼く7種類の新商品は旧軽井沢店での店舗販売(パン販売の一区画に“薪窯パンコーナー”を設置)のみとなります。
SHOP INFORMATION
【店名】ベーカリー&レストラン沢村 旧軽井沢
【住所】長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢12-18
【電話番号】0267-41-3777
【営業時間】
<ベーカリー>7:00~21:00 ※冬季(12月3日(火)~2月28日(金)) 8:00~21:00
<レストラン>7:00~22:00 (L.O.21:00) ※時間帯メニューの切り替え準備のため、10:00~11:00までの間、レストランフロアはご入店いただけません。※冬季(12月3日(火)~2月28日(金) 8:00~22:00 (L.O.21:00)
※写真の商品の種類、価格は、2025年6月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。