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【倉敷市】【1/31まで開催】くらしきアーキツーリズム2024 〜 名もなき建築家たちの軌跡をたどる倉敷物語

倉敷とことこ

【1/31まで開催】くらしきアーキツーリズム2024 〜 名もなき建築家たちの軌跡をたどる倉敷物語

歴史と文化の薫るまち、倉敷美観地区で「くらしきアーキツーリズム2024」が開催中です。

毎年秋から冬にかけて開催される「くらしきアーキツーリズム」は、倉敷のまちなみを形成する建物にスポットを当て、普段は見過ごしがちな魅力を再発見できるイベントです。

2024年のテーマは「2つのメイン通りにある名もなき建築家たちの建物」。本町通り倉敷川沿いという2つのメイン通りに建ち並ぶ、「名もなき建築家たち」が手がけた建物をめぐりながら、歴史とモダンが織りなすまちなみを堪能しませんか。

開催期間は2024年10月1日(火)〜 2025年1月31日(金)です。

くらしきアーキツーリズム2024の概要

倉敷美観地区の中で、5つの建物にスポットを当てて紹介する「くらしきアーキツーリズム」。紙製の「おもいでファイル」を手に入れて各建物に置いてある「たてものカード」をファイルしていくイベントです。

「くらしきアーキツーリズム2024」でスポットを当てられた建築は以下の5か所です。

・大橋家住宅
・語らい座 大原本邸
・倉敷珈琲館
・井上家住宅
・楠戸家住宅 atelier&salon はしまや

たてものカード」はそれぞれの建物に2枚あり、合計10枚集めていくことで倉敷の魅力を再発見できるカードです。

たてものカードは表面と裏面があり、表面にはそれぞれの建物の写真と詳しい説明が記載されています。
裏面には、倉敷市出身の鳥瞰図絵師、岡本直樹(おかもと なおき)さんの鳥瞰絵図(ちょうかんえず:高い位置から見下ろしたような絵)が描かれていて、それぞれの建物を中心に描いた鳥瞰絵図は、建物の構造や周辺環境を理解するのに役立ちます。

たてものカード表面
たてものカード裏面

くらしきアーキツーリズム2024の楽しみかた

まずは「おもいでファイル」をGET。おもいでファイルは「たてものカード」が収納できるほかに各施設の入場券などを入れておくにも便利で、1冊500円(税込)です。

おもいでファイルは以下の施設で購入可能です。

・観光案内所(倉敷館)
・倉敷物語館
・大橋家住宅
・井上家住宅
・楠戸家住宅(atelier&salon はしまや内)
・倉敷珈琲館
・語らい座大原本邸(ブックカフェ内)
・倉敷アイビースクエア

おもいでファイルは300冊限定です。

倉敷美観地区の建築物

今回(2024年)のくらしきアーキツーリズムは「名もなき建築家たち」にスポットライトを当てていることが最大の特徴です。

倉敷美観地区周辺はさまざまな時代の建物が混在していて調和がとれているといわれ、設計者も有名なかたが多くいます。

たとえば、大原美術館などを手がけた薬師寺主計(やくしじ かずえ)、倉敷国際ホテル・倉敷公民館などを手がけた浦辺鎮太郎(うらべ しずたろう)など、設計者の名前の知られた建物が多いです。

大原美術館(薬師寺主計)
倉敷公民館(浦辺鎮太郎設計)

いずれも、倉敷のまちなみを構成するうえで欠かせない建物ですが、古くから現存する建物のほとんどは設計者のわかっていないものが多いそうです。

名もなき建築家たち」の建物も倉敷を語るには欠かせない存在。

今回のイベントで、スポットを当てられた5か所を「おもいでファイル」片手に「たてものカード」を集めながら実際にまちを歩いてみました。

倉敷まちあるきマップ

おもいでファイルを開くとWebサイト「倉敷まちあるきマップ」を見られる二次元コードがあり、アクセスすると岡本直樹さんが描いた鳥瞰絵図を見ながら散策できます。

倉敷まちあるきマップには美観地区周辺のおもな建物が表示されていて、クリックorタップすると建物の解説が見られます。

鳥瞰絵図は1963年と2005年があり、見比べながら歩くと現在の「倉敷のまち」との違いを実感できるのではないでしょうか。

「まちあるきマップ」の歩きながらの利用は大変危険です。立ち止まって利用してください。

おもいでファイルは、散策を楽しませる内容が詰まっていて「探してみよう!倉敷の町屋にある秘密」もそのひとつ。町屋のちょっとした建築豆知識にかわいらしいイラストが、散策をより一層楽しくさせます。

実際にめぐってみました

倉敷まちあるきマップを利用しながら「大橋家住宅」から「語らい座 大原本邸」、「倉敷珈琲館」、「井上家住宅」、最後に「楠戸家住宅」の順番でめぐりました。入館見学の時間をのぞけば20分あればすべてまわれます。

大橋家住宅
語らい座 大原本邸
倉敷珈琲館
井上家住宅
楠戸家住宅

5つの「名もなき建築家たちの建物」をめぐってみて

「おもいでファイル」を入手してまちをめぐってみたのですが、書かれている建築の豆知識やかわいらしいイラスト、「たてものカード」に書かれている建物の詳しい説明や裏面に描かれている倉敷の鳥瞰絵図が、散策をより楽しいものへと導いてくれました。

また、「おもいでファイル」はあえて紙を使用してあり、温かみを感じられます。「入場券」「レシート」などもファイルしておくと「おもいで」として残ります。

自宅の部屋に置いて、後から思い返すのも楽しいかもしれませんね。

企画を立案した株式会社浦辺設計河本二郎(こうもと じろう)さんに、企画の経緯や目的、イベントに込めた想いなどを聞きました。

「くらしきアーキツーリズム」についてのインタビュー

浦辺設計 河本二郎さん

「くらしきアーキツーリズム」はどのようにして始まったのか

──「くらしきアーキツーリズム」のきっかけは?

河本(敬称略)──

「倉敷まちあるきマップ」を作ったことがきっかけです。

2019年に倉敷アイビースクエアで「建築家・浦辺鎮太郎の仕事」というイベントをさせていただいたときに、東京都江戸東京博物館館長の藤森照信(ふじもり てるのぶ)さんや神戸大学名誉教授の重村力(しげむら つとむ)さんなどの、建築業界では名だたるかたがたに「倉敷のように文化が積み重なっているようなまちは他にないからちゃんと紹介するべきだ」といわれました。

それで倉敷市まちづくり推進課と一緒に「倉敷まちあるきマップ」というものを作りました。マップに表示されている建物をクリックorタップするとその建物がどういったものかがわかるものです。

マップは鳥瞰図絵師の岡本直樹さんの作品です。

倉敷まちあるきマップ

文化が積み重なっている倉敷は、まちを形成しているバックボーンとなる建物や建物ができる経緯、関わった人のことも知ってまわるともっと楽しくなるのではないかと思いました。

そして、時間系列で倉敷の建物を知るとさらに楽しくなるのではないかと思い、倉敷市観光課に「くらしきアーキツーリズム」という企画をしたいと相談したところ「面白いからやってみよう」ということになったんです。

「くらしきアーキツーリズム」は年ごとにテーマを決めて、よりわかりやすく倉敷の建物や文化を知ってもらえるようになっています。

「アーキツーリズム」のテーマ

──アーキツーリズムはいつから始まったのでしょうか。

河本──

くらしきアーキツーリズムが始まったのは2022年で、今年で3回目となります。

──過去2回の「くらしきアーキツーリズム」のテーマは何ですか。

河本──

2022年のテーマは浦辺設計 創業者の建築家・浦辺鎮太郎が大切にした「新旧調和」で、浦辺鎮太郎が手がけた5つの建築物を紹介しました。

倉敷市出身の浦辺鎮太郎は、1962年に倉敷レイヨン(現 クラレ)内に、当時の社長大原總一郎(おおはら そういちろう)の協力で倉敷建築研究所現 浦辺設計)を設立し、大原總一郎の構想する「倉敷のまちづくり」を建築家として支えた人物です。

2022年対象建築物

・倉敷考古館 増築
・大原美術館 分館
・倉敷国際ホテル
・倉敷公民館
・倉敷アイビースクエア

そして翌年の2023年は総社市出身の建築家・薬師寺主計が手がけた建築物を中心に、5つの建物を紹介しました。テーマは「建築家・薬師寺主計と町の移り変わり」です。

2023年対象建築物と設計者

2022年、2023年とも建築家にスポットを当てて、手がけた建築物を紹介することで倉敷のまちのことを知ってもらおうといったものでした。

──今年(2024年)のテーマ「名もなき建築家」とは。

河本──

名もなき建築家」という名前は、鳥瞰絵図を提供してもらっている岡本直樹さんからの提案でした。

もともと「アーキツーリズム」の企画は、最初に「浦辺鎮太郎」、次にその先輩にあたる「薬師寺主計」、2024年は古い建物を…と、時代を遡(さかのぼ)るかたちで数年にわたって紹介するつもりでした。

岡本直樹さんからも「古い建物を手がけた職人や大工、棟梁(とうりょう)が作ったまちとして紹介してもよいのではないか」といった言葉もあり、「名もなき建築家」が2024年のテーマになったんです。

──テーマにある「2つのメイン通り」とは。

河本──

パンフレット裏面に記載しているとおり「本町通り」と「倉敷川沿い」を「2つのメイン通り」としています。

パンフレット裏面

倉敷はかつて「吉備の穴海(きびのあなうみ)」と呼ばれる海域で、現在の美観地区の近くまで海が広がっていました。その後、干拓によってまちは発展します。

パンフレットの地図にもある「鶴形山(つるがたやま)」はかつて「」であり、海の近くで発展した「本町通り」。

一方、干拓後に、運河として使われた倉敷川により発展した「倉敷川沿い」と合わせて「2つのメイン通り」とすることで、時代の流れを感じていただけるのではないかと考え、テーマを「2つのメイン通りにある名もなき建築家たちの建物」にしました。

「2つのメイン通りにある名もなき建築家たちの建築物」の「5つの建築物」をめぐっていただければ、倉敷の時代の流れや文化を体感してもらえると思います。

「おもいでファイル」へのおもい

──「おもいでファイル」とは、どういったものでしょうか。

おもいでファイル

河本──

紙製のファイルで、中はビニール製のポケット形式になっていて、今回対象になっている建物に置いてある「たてものカード」をファイルできるものです。

たてものカード収納例

──「スタンプラリー」やスマートフォンなどを使ったデジタル方式のほうが手軽で参加しやすいのではないでしょうか。

河本──

たしかに「スタンプラリー」のようにスタンプを集めながらまわるといったイベントも多いですが、「くらしきアーキツーリズム」は少し違います。

私は「旅はおもいで作り」だと思っていて、「おもいでファイル」を片手に普段は入らない建物に入ってみる。
出てきたときに少し知識が増えて出てきた自分が「おもいで」になっている。

目的の建物に向かう途中の美しいまちなみを写真に収めたり、カフェでおいしい珈琲を味わったり、お土産屋さんで素敵な工芸品を見つけたり…と、まち歩きを通してさまざまな「おもいで」が生まれます。
だから「おもいでファイル」と名付けました。

また、スマートフォンを使用するデジタルではなく「おもいでファイル」をあえて紙製にすることで温かみのある演出をしました。

紙をめくる感触や「たてものカード」を1枚ずつビニール製のポケットに入れる作業など、デジタルでは味わえない感覚を楽しんでいただけます。そのほうがより「倉敷らしい」のではないかと思いました。
ちなみにこれ、手作りなんです。

たとえばこの(上画像)のマルチタック(紐でとめられる丸部分)は穴パンチで穴を開けて、ひとつひとつ1円玉で押し付けます。続けていくと指が痛くなるんですよ。

でもこのクラフト感を無くしてしまうと、倉敷らしさみたいなものがなくなってしまうのであえてこだわっています。

中のポケットは12枚あり、5か所すべてのたてものカードを入れても2枚余るんです。その2枚のポケットに何を入れるかはご自身で考えていただき、結果的にそれも「おもいで」になるんです。

おもいでファイルを開いたところ

──読者へのメッセージをお願いします。

河本──

倉敷は白壁で黒瓦の、いわゆる古いまちといわれますが、その中に新しいものをきちんと取り入れながら進化しているまちなんです。

古いといわれている蔵や町家をめぐりながらまちを歩くことで、現代アートやモダンな建築を発見してもらえると、より旅の幅が広がると思いますし、歴史と現代が調和する倉敷の魅力を、より深く味わえる旅になると思います。

ぜひ「くらしきアーキツーリズム2024」の「おもいでファイル」片手に、「倉敷の物語」を体感してみてください。

おわりに

倉敷美観地区が美しいといわれる理由のひとつに、「古い建物(江戸時代の町家など)」から「近代の建物(大正時代の洋館など)」までが混在している絶妙なバランスといわれています。
歴史的な景観を保ちながら現代の生活にも調和しているまちなみは、倉敷の歴史や文化を感じとれます。

筆者も実際にそれぞれの建物をめぐってみました。どの建物にも新しい発見があり、江戸時代の商家の暮らしを垣間見たり、明治時代の建築技術に感嘆したり、大正時代から昭和初期の発展など、まちを歩きながら時代の流れを体感できました。

スポットを当てられた5つの建物をめぐれば、「倉敷の物語(商人のまちとして栄えた倉敷の物語)」を感じられる「くらしきアーキツーリズム2024」。

「おもいでファイル」片手に、自分だけの「倉敷の物語」を発見してみませんか。

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