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アスリートの盗撮問題とは?選手や企業が「新しいウェア」で対策に乗り出す

TBSラジオ

今月26日に開幕するパリオリンピックを前に、今さまざまなスポーツに注目が集まっています。そんななかで、選手や業界を悩ませている問題があります。選手を狙った盗撮です。

アスリートの盗撮問題とは?

特に体操や陸上競技などの女性の選手を狙って、性的な視点で撮影された写真がSNSなどに投稿されるというものです。

こうした問題を受けて、体操競技では長らく大会で、一般のお客さんの撮影を全面禁止していました。しかし、最近新たな動きがありました。

日本体操協会・業務執行役の遠藤幸一さんにお話を伺いました。

「2004年に大会では一般の撮影はすべて禁止という形にさせてさせていただいたんですね。それから20年経ったところで、ずいぶん減りました。なので昨年末から、試験運用という形で体操競技の大会のみ、撮影を許可制にするということに踏み切ったという状況です。

何よりも体操競技の場合ですね、『見せるスポーツ』になっております。なので、『目に焼き付ける』というよりも、『写真で残しておきたい』というニーズも過去からありました。今のところ試験運用で大きな問題はないという状況になっています。」

今回協会が取り入れた許可制というのが、本人の情報を事前に登録して、千円を支払って撮影許可証を得られるというもの。カメラの種類に制限があるほか、過剰に拡大した写真が撮れないように望遠レンズにも制限が設けられています。

また写真が適切に使われているか協会が把握できるように、SNSのアカウントの登録も求めています。

協会は20年以上前から盗撮に頭を悩ませていて、何度もルールを調整して試行錯誤した結果が、一般のお客さんの撮影全面禁止でした。でも純粋なファンの方のニーズが高まっていることや被害が減ってきたことで、試験的に許可制に踏み切ることになりました。

「ファンの方の撮影はうれしい」選手の気持ち

では、こうした流れについて選手はどう感じているのか。体操競技でリオオリンピック、東京オリンピックにも出場した杉原愛子選手に聞きました。

「盗撮されてSNSのDMだったり、画像が送られてきたり、今はないですけれども結構あったりしたので、そういう目で見られているのかなっていう嫌な気持ちにはもちろんなりますね。やっぱり全員が全員がルール守りきれてない部分は、100%守り切れないのかなとは思います。

そうですね、写真が撮れなかったときはファンの人とかが「残念だな」っていうツイートとかしたりしていて、撮れるようになってからはすごく素敵な写真をたくさん投稿して拡散していただいてりしているので、ファンの人が撮ってくれたっていうのもうれしくてやっぱりリポスト(拡散)したりもします。」

大会に来ていない人にも競技の魅力を伝えるには、やっぱり写真の力は大きいんですが、被害があったことからも「選手が気持ちよく競技に集中できる環境作りが大事」と杉原選手も話しています。

選手視点で「新しい選択肢を」

こうした背景からも、杉原選手は選手の視点から新しい形のレオタード「アイタード」のプロデュースを始めました。再び、杉原選手です。

「通常体操選手って基本的にレオタードを着用するのですが、やっぱりハイレグのところで気になったり心配もあったから、『アイタード』はショート丈のスパッツをはいているような長さで開発しました。ある意味ズボンをはいているような感じですかね。

そうですね、やっぱり選択肢を広げたいなっていう思いがあったので、安心して普段と同じ着心地で大会にも臨める、プラス、盗撮とかもあったりするから、自分自身・選手自身で守れることもできるんじゃないかと感じました。」

一般的なレオタードはハイレグタイプのものですが、「アイタード」は競技の規定に対応する範囲で、足の付け根から2センチ以下の長さで作られており、短いスパッツのような形をしています。

肌の露出が少なくなって、体操をやりたいという子どもの保護者からも好意的な反応がもらえているそうです。

「赤外線カメラ」での盗撮にも対策

杉原選手の取り組みは、選手側の安心感や自分で自分を守るための取り組みとしてユニフォームの「形」を変えていますが、一方で、「素材」を変えるという対策も始まっています。

というのも、「赤外線カメラ」による盗撮という問題もあるんです。先月、「赤外線カメラ」への対策もほどこしたウェアの販売を開始した、ミズノ株式会社でアパレル素材を開発している田島和弥さんに伺いました。

「赤外線カメラによる盗撮の被害の内容としましては、普通のカメラと見た目はあまりわからないような赤外線カメラを使用して、私たちが普段目に見えない服の内側を透けて写して盗撮できてしまうと。今回ウェアに赤外線を吸収する特殊な鉱物を練りこんだ糸を使用しておりまして、防透け性が向上するというところになります。

ミズノ株式会社提供

アスリートの方は、やはりそういった盗撮の問題もあったんですけど、どうしてもパフォーマンスに影響があるのであれば、赤外線の防透け性がなしでもいいですよとなってくるので、今回本当に触ってもらうとわかるんですけども、普通のスポーツウェアと全く変わらない、伸縮性や吸水性など実現できているので、そういったところが弊社の生地の特別な点かなと考えています。」

赤外線カメラの盗撮もさまざまな競技で問題になっていて、今回の素材は女子バレーや女子卓球などのウェアで取り入れられています。

ミズノ株式会社提供

また、JOC(日本オリンピック委員会)では、アスリートを傷つけるような写真がインターネットで公開されていた場合、報告できるフォームも設けられています。さまざまな立場から「盗撮は絶対許さない」という姿勢を示していくことが、選手が安心して競技に集中できる環境につながっていくのです。

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