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海と山を繋ぐ、神戸の新スポット!設計の裏側に迫る TOTTEI PARK 緑の丘建築物の設計を手がけた一級建築士・畑友洋さんインタビュー 神戸市

Kiss

2025年4月に開業予定の『ジーライオンアリーナ神戸』(神戸市中央区)と一体運営される『TOTTEI PARK』は、神戸ウォーターフロントの新エリアとして新港第二突堤(愛称:TOTTEI-トッテイ-)の先端部に整備される “神戸の海と山並みを五感で楽しめる” パークエリア。

海からの「TOTTEI PARK」のイメージ 写真提供/株式会社One Bright KOBE

6月より工事が始まったパーク内の緑の丘建築物の設計を担当した、畑友洋建築設計事務所の代表・畑友洋さんにインタビューを実施!TOTTEI PARKに込められた思いや、設計のプロセスについてお話を伺いました。

一級建築士・畑友洋さん

―TOTTEI PARK 緑の丘建築物の設計を受けるまでの経緯を教えてください!

アリーナのできる新港第二突堤エリア(TOTTEI)の南端部に、国の港湾緑地に指定されたパークエリアが整備され、そこは港町・神戸にとって重要な場所になると、ジーライオンアリーナ神戸とTOTTEI PARKを運営する株式会社One Bright KOBEの渋谷社長からお話を伺ったのが始まりです。

「この場所にどんなものを作るのがふさわしいか一緒に考えてほしい」とお声がけをいただき、提案の検討を進めることになりました。

「TOTTEI PARK」イメージ 写真提供/株式会社One Bright KOBE

―畑さんはこれまでも『三宮プラッツ』や『JR灘駅南側駅前広場』など公共空間の建築設計を手がけていますが、構想段階から加わることは珍しいのでしょうか?

公共、民間を問わず、ガイドラインがある程度固まった状態から設計していくことが多いですね。今回のように枠組みから一緒に考えるケースは珍しいと思います。そのため、私たちにとってこのプロジェクトは非常に刺激的な機会であったことは間違いありません。

―正式に受注が決まった時はどんなお気持ちでしたか?

神戸の街に存在する貴重な “親水空間” に新たに人が集うための場所ができることは、私たちにとっても一つの悲願だったので、それを自分たちの手で作り上げることに対するやりがいと責任の重さを感じました。

―One Bright KOBEの渋谷社長はアリーナについて「次の神戸の50年、100年の間、市民に愛され・必要とされる場所を目指す」と語っていますが、TOTTEI PARKに関しても同じ考えをお持ちなんでしょうか。

はい、一時的な賑やかしのためではなく、“新しい港の拠点” として、市民の方や観光で訪れる方がこの場所を育て、長い時間をかけて皆さんにとって愛される場所を目指すことは、私たちも最初から考えていたので、「アリーナとともに50年、100年という長いレンジでこのエリアに賑わいを作りたい」、そんな思いで設計を進めました。

―畑さんが手掛けたエリア内の緑の丘建築物の設計が、どのようなプロセスで進んだのか教えてください!

最初に行ったのは「世界中の港町を知ること」で、ヨーロッパやアジアなどもれなくリサーチし、愛される場所としてうまく機能している港や、逆に様々な課題を抱えている港に関する学びを得ました。また並行して神戸の港や海沿いの場所が現在どんな風に使われていて、どんな課題があるかも調べました。

その結果、港単体ではなく街全体を総合的に見た時に “その街らしさ” というものを最大限伝えられるように設計した港が、街の魅力を伝えるシンボリックな存在になり得るという考えに至りました。

街の魅力そのものを増幅させる、そういうものをダイレクトに伝えるような作られ方をしている港町というのは非常に魅力的で、それは地域の人にとっての「シビックプライド」にも繋がりますし、逆に外来者の人にとっては、その街の魅力がダイレクトに伝わってくる場所になるんです。

そこで私たちは「海と山の両方を備えた雄大な神戸の風景」こそが、この街の魅力の重要な点だろうと考え、その魅力と地続きにつながる場所を作ろうと思ったのが着想の原点ですね。

―開業1年前発表会で語っていた「海と山の景色が繋がる」というコンセプトは、かなり初期の段階で決まっていたんですね!

シンボリックで人目を引くようなオブジェクトを置くのではなく、この街の魅力をそのまま伝えたいと思ったんです。穏やかな瀬戸内海と六甲山系の美しい山並みが地続きになっている都市景観こそが神戸の魅力なので、とにかくこの光景を多くの方に味わっていただける場所にしたいと考えました。

イタリアのタオルミーナのギリシャ劇場と海 photoAC

そして、そんな海から山につながっていく雄大な風景について考えた時に思い出したのが、シチリアのタオルミーナにある『ギリシャ劇場』でした。地中海に面した丘の上にある古代の屋外劇場で、自然の地形に馴染むように、丘の斜面を上手く使っており、その先には空が広がっています。そこに初めて訪れ、客席に座った時、自分が海から丘へ、丘から空へと繋がっていく “目の前の風景の一部” になったように感じられました。

その時の空間体験を神戸の皆さまにも味わってもらえるような場所にしたいと思い、「港を拠点とした屋外劇場のような場所を作ろう」と、具体的な設計について考え始めました。

資料提供/畑友洋建築設計事務所

―建築物のデザインを詰めていくプロセスについてもお話を聞いてみたいです!

海と山の風景が一望できる場所を考えた時、建物をピクニックシートのようなものに見立てて、シートをつまみ上げるような形で丘を作れば、広場と地続きな場所ができると考えました。先ほどお話したタオルミーナの劇場のように、みんなが集まれる劇場のようでありながら、背後に広がる六甲山の山並みも一望できるだろうと思ったんです。けれど、どんな風につまみ上げれば良いのか具体的な正解があったわけではないので、ここからはひたすら模型を試作し、検証を行いました。

資料提供/畑友洋建築設計事務所

どの角度からどう見れば山並みを一望できるのか、どの方角に傾いた丘だったら綺麗に景色が見えるのか、徹底的にリサーチしました。屋外劇場のように多くの方が一堂に会し、みんなで海を囲む、山と地続きになれることが大事だと思っていたので、ベストな高さや角度を決めるために、丘のあり様をひたすらにスタディすることも、重要なプロセスのひとつでしたね。傾斜が急すぎると座れないし、緩すぎると山並みが一望できる高さになりませんから。

「緑の丘」の内部イメージ 写真提供/株式会社One Bright KOBE

次のフェーズでは、夏のすごく暑い時や雨が降っている時、風が強い日など、どんな季節・天候の時にもパークエリアに訪れていただけるように「丘の中」の空間について議論を行いました。外の広場と一体的に使えるような空間にするために、中と外をどのようにつなげるか考える必要があり、丘に切れ目を入れてみたり、色々なところから持ち上げてみたりするなど検討を重ねました。

ーどんな風に検討を重ねていったのでしょうか?

模型は内部のレイアウトも詳細に設計されていました

様々なパターンの模型を作成し、自分の体が小さくなって模型の中に滑り込んだようなイメージを持って、内部を想像しながら議論を行いましたね。ほかにも、One Bright KOBEの皆さんに意見をいただいたり、バーチャル・リアリティ(VR)の技術を駆使して、仮想空間の世界に構築した建物の中を歩きまわったりもしました。そこで得た感覚や知見をチームで共有しながら検討を進めていきましたが、この「みんなで考え、議論すること」が重要なんです。

みんなの意見を集約する、というイメージとは少し違うんですけれど、「なんとなくこっちの方が良いよね」というような、言葉ではうまく説明できない魅力について議論を重ねて、少しずつ答えに近づけていきます。その様子は、“研究開発” に似ているかもしれません。

―ザっと数えただけでも50以上の模型が置かれていますが、それだけ多くの試作と議論が行われたんですね…!

時間の許す限り、すべてのパターンを検討するのが理想だと私は思っています。最初から「これだ!」と決まるよりは、様々なタイプを比較したり、異なる方向性のものを用意したり。そうすることで思ってもみなかった発見があったりもするので。これは違うと思った場合も「なぜ良くないのか」をしっかり議論するようにしています。

―今回設計された緑の丘建築物と、過去に畑さんが手がけてきた建築物に共通点はありますか?

建築物は点として独立して存在しているわけではなく、周囲に広がる街や外の環境と地続きに存在するものと私は考えており、建築にとっては建物が構成する空間よりも、周辺の環境との関係性の方が重要だと思っています。

今回のプロジェクトは神戸という街の二大景観資源である海と山と、訪れる方々の関係性そのものが主題となっており、そういう意味では、根幹となる考え方は今までの作品と共通しています。

―建築に対する考え方は共通している中で、新たな取り組み、挑戦と言える部分もあるのでしょうか?

第二突堤という、海にせり出した場所に建築を設計すること自体が非常にトライアルな要素でした(笑)。

ちなみに、神戸の都心と言えば三宮ですが、その三宮における南北の一番大きなシンボル軸が「フラワーロード」で、TOTTEI PARKのできる新港突堤エリアは、そんなフラワーロードの一番浜側に位置しています。だからこそ、「都心のシンボル地区の一番港側の拠点だからこそ、市民の方や神戸を訪れた方が街の魅力をしっかり味わえる場所にしないといけない」という思いも強く持っていました。

TOTTEI PARKは国土交通省の港湾環境整備計画(みなと緑地PPP*)の国内第1号でもあるので、神戸市港湾局の皆さんとも一丸となって、官民の境目なくお互いに情熱をもって議論を重ねてきました。

*みなと緑地PPP(港湾環境整備計画制度)
官民連携によって「みなとの賑わい空間を創出する」ことを目指し、港湾緑地等において、カフェ等の収益施設の整備と収益の一部を還元して緑地等のリニューアルや維持管理を行う民間事業者に対し、緑地等の行政財産の長期貸付け(概ね30年以内)を認める認定制度。

緑の丘から見たTOTTEI PARKイメージ 写真提供/株式会社One Bright KOBE

海風が吹き、荒天時には波が打ち寄せる過酷な環境の中で植物を定着させ、それを立体的に建築として実現させる試みには大きな困難が伴いますし、私たちの力だけで実現できるとは思っていません。

だからこそ、TOTTEI PARKの完成後、市民の皆さまにこの場所を愛していただき、自分たちの手でより良いパークにしていきたいと思ってもらえるような場所になれば嬉しいです。

―先日、柴田工務店によるPARKの工事がついに始まりましたが、畑さんたちの仕事はまだまだ続くのでしょうか?

「工事管理」と言って、着工してからも工事と並行しながら色々な部分の設計を続けていきますし、私たちの設計と違いなく建設が進んでいるかの確認や検査も行います。

設計図に書かれている通りに作ろうとしても、そんなに簡単には作れないのが建築というものなので、「これはどうすれば実現するのか」という部分が出た時に、施工主の柴田工務店さんと一緒になって「こうすればできるでしょう」「こうやったらどうですか」ということを連日連夜、竣工するまでやり続けることになります。

畑さんとTOTTEI PARK 緑の丘建築物設計チームのみなさん

なので、実際はまだまだ道半ばです。このあわただしい日々は竣工するまで続きますし、なんだったら竣工した後も続きます(笑)。それもまた、建築の面白さであり、楽しいところなんだと私は思います。

★今回のインタビューの模様は、ジーライオンアリーナ神戸の公式YouTubeチャンネルでも配信!ぜひご覧ください。


開業
2025年4月(予定)

場所
新港第二突堤エリア「TOTTEI(トッテイ)」
(神戸市中央区新港町130番12)

港湾環境整備計画概要
【認定区域】
新港突堤西地区 新港第 2 突堤緑地
【施設立地】
神戸市中央区新港町 130 番 1、130 番 1 地先国有地
【構造】
1棟 2階建て 鉄骨造
建築物面積 約 900 ㎡(予定)
パーク予定地面積 約 6000 ㎡(予定)
【建物所有者】
株式会社 One Bright KOBE
【設計】
株式会畑友洋建築設計事務所
【施工者】
株式会社柴田工務店
【開業月】(予定)
2025年4月

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