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マザリ[ライブレポート]狂気と轟音が覆い尽くした御披露目公演、名古屋発「呪イ始メ」の宴

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マザリ[ライブレポート]狂気と轟音が覆い尽くした御披露目公演、名古屋発「呪イ始メ」の宴

MAD MEDiCiNEが所属するプロダクション『ムスコノプロダクション』の新グループ・マザリが、2024年10月11日(金)にZephyr Hallで開催した<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>で衝撃のデビューを果たした。

彼女たちの始まりは、謎めいたXアカウントからの“アナタハ呪イタイ人ガイマスカ?”という“不気味な問いかけ”。その後に公開された能面を被ったアーティスト写真は瞬く間に大きな話題となり、彼女たちの御披露への期待感は一気に高まっていた。

そして迎えたデビューの夜。ついにそのベールを脱いだ7人は、強烈なパフォーマンスで観客を圧倒。呪い、嫉妬、復讐といった負の感情を混ざり合わせた世界観を、見事に体現してみせた。

本記事では、観る者の心を大きく揺さぶった圧巻のステージの模様を余すところなくお届けする。

・マザリの写真 24枚

撮影:ミヤタショウタ
取材&文:冬将軍

“マザリのライブには怨み、妬み、憎しみが込められています。幸せに満たされている方は……充分に、ジュウ、ブンニ注意シテ……ゴ覧クダサイ……”

不気味なナレーションとともに、どっしりとしたリズムと極悪ヘヴィなギターリフが轟いた。ゆったりとした足取りで能面を被った7人の少女たちが現れる。横一列に並んだ7人が一斉に能面を投げ棄てると、その素顔があらわになった。

“全員呪エッ!!”

蛇喰ホムラ(ジャバミホムラ)が吠える。バックトラックは砲撃の如くリズムが乱れ撃たれるツーバスの嵐へと変貌し、“ヴォイ!ヴォイ!”とホムラの怒号のようなシャウトが猛り狂う。

のっけからのカオティックなステージを前に、茫然としながらも手を挙げるしかないオーディエンス。すると、ホムラがしっとりと歌い出した。

《壊さないように 解(ほど)けないように 優しく包む 愛を貴方にあげ……》

“ル゛ワ゛ァァァー!!”

フレーズの語尾がけたたましいシャウトに豹変した。それを合図に堰を切ったように轟音が会場を覆い尽くす。

二○二四年十月十一日 マザリ、呪イ始メが始まった——。

<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

マザリの始動が伝えられたのは2024年9月10日午前0時のこと。“アナタハ呪イタイ人ガイマスカ?”という不気味なポストとともに現れた、謎のXアカウントだった。呪い、嫉妬、復讐、心の闇……鬱屈とした負の感情を“混ざり合う憎悪”としてコンセプトに掲げたマザリの登場は、禍々しい徹底的な世界観構築とともにネット上を騒然とさせた。能面を被ったメンバー写真。“何RPで素顔公開”という今どきな施策があるわけでもなく、素顔を明かすことのないただ始動を告げるのみのXポストは、御披露目ライブ直前の段階でインプレッション数が200万超えという、とんでもない反響を呼んだ。

その注目度は御披露目公演の動員にも現れていた。チケットは早くもソールドアウト。予定していたキャパシティに収まりきらず、予定していたX-HALLからZephyr Hallへ。急遽、倍規模となるライブ会場へ変更されるほどだった。

そうして迎えた<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>。所属事務所の先輩に当たるMAD MEDiCiNE、ちちゃめど、ADOMIOを筆頭に全8グループが出演。マザリ御披露目の宴に華を添えた。

フロアいっぱいオーディエンスが見守る中、トリを務めるマザリのステージは「丑の刻参り」で始まった。ホムラのシャウトから堰を切ったように襲い掛かる轟音。図太いディストーションギターと和楽器の素朴な音色が交錯していく。鮮やかな青髪を靡かせる朽壊レム(キュウカイレム)より、鋭い眼光を覗かせる真鬼マナセ(マキマナセ)へと、童謡のようなメロディが紡がれていく。それにしてもすさまじい音圧を誇るバンドサウンドだ。同曲のギター&ベースのアレンジを手がけるのは登場SE「呪詛」とともに、Leda(ex.DELUHIFar East Dizainetc)である。哀愁感のあるメロディに絡みゆくジェントの香りを放つ複雑なリフ。昨今、私が“地雷系ロックアイドル”と呼んでいる界隈の中で、これほどまでにV-ROCK(=ヴィジュアル系ロック)のイズムを感じたグループがあっただろうか。

蛇喰ホムラ<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

名古屋には“名古屋系”と呼ばれるヴィジュアル系のムーヴメントがあった。それが生まれたのは1990年代初頭のことである。もともとは“名古屋シーン出身のバンド”という意味で使われていた言葉だが、頽廃的でダークな雰囲気を持つバンドが多かったことから“名古屋特有の様式美”という意味で使用されるようになった。そうした土地柄であるから、マザリのようなアイドルグループが誕生することは必然だったのかもしれない。そんな名古屋系の香りを放ちながら、レーベル『密室ノイローゼ』の“密室系”や“地下室系”といった、“ネオナゴム”とも呼ばれた病的で猟奇的な2000年代の“ネオヴィジュアル系”の潮流を感じさせ、さらには近年のメタルコアやジェントをも呑み込んだ激情的な音楽性とダークネスな世界観を持っている、そんな未だかつてないアイドルグループが、マザリだ。

琴の音色がアップテンポのダンスビートに変わっていく「お慕い申し上げます。」へと流れ込む。米粉パン(コメコパン)と心臓ウリン(ココロウリン)の少女のような純朴な歌声が繋がれる。あでやかな黄色いツインテールを振り乱す、死ヰメロアンチ(シイメロアンチ)からホムラへ、クールな目つきでフロアを見透かすような髄狂アク(スイキョウアク)からレムへと、アップビートに乗ったわらべうた「はないちもんめ」を想起させる掛け合いフレーズが印象的だ。ノスタルジックな風情を現代的なサウンドプロダクトでアップデートしながら噛みついてくる。

死ヰメロアンチ<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)
髄狂アク<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

続けざまに届けられた「一緒に死ぬ序でに愛して欲しい」は、シンフォニックないななきと咽び泣くようなLedaの激情的なシュレッドギターソロなど、ゴシックメタルを軸に和情緒をまさぐりながら自分たちの色へと昇華していくマザリらしいナンバーだ。大きめの音符と高低差の効いたメロディの起伏が日本らしい普遍性を醸す。そんな日本人であれば誰もが耳馴染みを覚えるような郷愁メロディを7人でのユニゾンを主とすることにより、メタルに振り切ることなくアイドルらしく見せつつも、同時に土着的な不気味さすらも漂わせている。そうした中でウリンの飄々としたラップパートにハッとさせられた。軽快にフロアへ振りまいたウリンの愛嬌も、逆にマザリの掴みどころのない存在感を強調するものになっていた。

心臓ウリン<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)
朽壊レム<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

“僕たちがマザリです”

精悍な表情のマナセをはじめとし、1人ひとりが淡々と自己紹介していく。序盤からのパフォーマンスといい、御披露目ライブという緊張は感じられず、7人それぞれが己の役割を全うしながらマザリの世界を創り上げている、そう強く感じた。度胸というより自信、いや、マザリとしての誇りがそうさせるのだろうか。そんなことを考えていると、御披露目前にリリースされていた「御呪い」から後半がスタートした。

真鬼マナセ<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

Ledaの分厚いディストーションギターの壁が身体中を覆ってくる。毛穴に入り込んでくるような音圧の轟音と、十字の仕草で呪いをかけてくる7人の歌う唱歌風メロディラインが、オーディエンスの心情を貪るようにクロスオーバーしていく。

耳をつんざくホムラの獣のようにけたたたましいデスボイスは、ガテラルやグロウルを主とした中低音のそれではなく、喉にディストーションが掛けられたようなフォールスコードスクリームの趣がある。よくいえば、海外ニューメタルバンドのボーカリストに多く見られる歪みボーカルに近い。まだ荒削りではあるものの、スクリームするアイドルが珍しくなくなった昨今であってもそういないスタイルであり、今後の成長に期待大だ。またシャウトだけではなく、多くのクリーンパートをも担っており、ミステリアスさをかぐわす斜に構えた暗いトーンのボーカルも魅惑的であり、彼女の強さだ。

首を吊る描写から始まった「遺書」は、マザリ楽曲の中ではストレートな展開を持ったアップテンポのナンバー。ダイナミズムを持ったバンドサウンドに合わせて抑揚をつけたキレのよいパフォーマンスで魅せていく7人。小柄な身体を振り乱すパンが、マザリのステージのグルーヴを先導しているように見えた。マイクを刃物に見立て突き刺す狂気がフロアを制圧する。初めて観る、聴く楽曲にオーディエンスは様子見、いや、為す術なしといったところだろうか。今後ライブを重ねるにつれ、盛り上がりを含めてより凶暴性を増していくであろうナンバーだ。

米粉パン<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

ラストに送られたのは「混ざり」。グループ名を冠したこの楽曲はブラストビートからシンフォニックメタル、和の響きからメジャー調のサビへ、と聴き手の情緒をかき乱していく性急な楽曲展開を持っていた。よく聴けば3つのメロディが混ざりあいながら構成されており、ダンスにおいてはそれぞれのメロディに対するリズムのズレが巧妙なパフォーマンスを生んでいく。混沌とした世界観から開放されるようなメロディ運びと、負の感情を叩きつけるだけでなく、《愛していたい自分 愛せるように》と幸せへと導いてくれるのもマザリの世界だ。しかしながら、《僕等は愛して 呪って 生きてく筈だから》という7人のユニゾンによる歌い締めもまたマザリらしいところだった。

<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

あっという間のステージだった。アイドルである以上はよくも悪くも“やらされている感”や、音楽性が先行し、そこについていけていないスキル不足が気になることも多い。しかし、マザリはビジュアルと音楽面、両方においての徹底的な世界観構築にしっかり7人がハマっている。ロック好き、メタル好き、ヴィジュアル系好き……アイドルファン以外の音楽ファンへの訴求力も充分であり、この先マザリの呪イにかかる者は多くいることだろう。

この先のアイドルシーンを引っ掻き回す、7人の能面少女、マザリの狂気に我々は深く侵されていく。

<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>Zephyr Hall(2024年10月11日)

<マザリ御披露目公演『呪イ始メ』>

2024年10月11日(金)
Zephyr Hall

1. 呪詛(SE)
2. 丑の刻参り
3. お慕い申し上げます。
4. 一緒に死ぬ序でに愛して欲しい
5. 御呪い
6. 遺書
7. 混ざり

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