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「40代、もう一度恋をする」-元カレが隣に越してきた!?北海道・室蘭を舞台にした話題作『隣の元カレくん』作者が語る胸キュン物語の裏側とは

Sitakke

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北海道を拠点に発信するクリエイターの視点や素顔に迫る「HOKKAIDO CREATORS INTERVIEW」。今回は、室蘭を舞台にした大人気マンガ『隣の元カレくん』の作者・agoさんに注目しました。

マンガ『隣の元カレくん』って?

集英社マンガアプリ「マンガMee」の連載中の漫画、『隣の元カレくん』。
40歳のシングルマザー・黒木愛理が主人公。ある日、ひとり暮らししているアパートの隣の部屋に高校時代の忘れられない元カレ・稲葉が引っ越してきたことから、主人公の日常が動き出します。

(c)ago/集英社
(c)ago/集英社
(c)ago/集英社

(『隣の元カレくん』第一話より抜粋)

SNSで「胸キュンが止まらない!」と話題沸騰中のマンガ『隣の元カレくん』。40代の大人の恋愛を描きながら、純情な展開で読者の心をつかむ本作について、作者のagoさんとマンガMee集部・大森さんにお話を伺いました。

マンガ家への第一歩 - 産後の“閉ざされた日々”から夢への再出発

マンガMeeで連載中の「隣の元カレくん」 (c)ago/集英社

—agoさん、今日はよろしくお願いいたします! 『隣の元カレくん』が大人気ですね。30代からマンガを描き始めたそうですが、きっかけは何だったのですか?

小学生の頃からマンガ家にはなりたかったんですけど、大学ノートに描く程度。マンガを完成させたことはなかったんです。でも絵が好きだったので、美術系の大学に進みました。卒業後はそのまま企業に就職して、25歳で結婚を機に北海道に来たんです。もともとは茨城県出身です。

30歳を過ぎたあたりで第1子を出産したんですけど、産後になんとなく鬱々として。閉ざされた世界にいるみたいな気持ちになる時があったんです。日中話すことと言えば子どもに「バブバブ〜」くらい。大人とどうやって話したらいいか分からなくなっていました。

そんな時に、家にいながら何かしようと、マンガを読んでいたら描きたくなったんです。原稿用紙とかカラス口とか、マンガを描く道具を買いました。全部アナログな道具ばかり。昭和生まれなもので・・・・・・。

agoさんが初めて買ったマンガ用画材

—その時からデビューしようと考えていたのですか?

どこかに送ってみようかなっていう気持ちはありました。実際に30ページくらい描いたものをマンガ雑誌の編集部に送ったりもしていました。その時に一度、担当の編集さんがついてくれたんです。デビューに向けて頑張ろうかなっていう時に第2子の妊娠が分かって、結局また描くのを辞めちゃったんですよね。

人生の転機 – “推し”が背中を押してくれた「マンガ家」への夢

アナログ原稿時代のマンガ

—2人目のお子さんが生まれてから、マンガを再開したのですか?

産後半年くらいは何もできませんでした。でもマンガを読んではいたんですね。当時、完結したばかりの『進撃の巨人』にどハマり。読後も興奮が収まらず、「この子たちは、私が幸せにしてやる!」みたいな気持ちになって、ファンアートを描き始め、そういったコミュニティとかに参加して…“推し活”を楽しんでいました。iPadを買って、アプリも入れて仲間に使い方とか教えてもらって。すごく上手な“神絵師”さんたちの作品を眺めては、いろんな技術を学んだりしていました。

—すごいところにハマりましたね(笑)。それがいつからオリジナルを描き始めることに?

ファンアートを楽しむ一方で、私には別の“推し”がいたんですよ。「モーニング娘。」の楓ちゃん(加賀楓さん)推しだったんです。その楓ちゃんが、「モー娘。」を卒業することになったんです。ものすごくショックでした。でも卒業の理由が、「夢を追いかけるため」だったんです。夢のためかぁって考えたときに、あれ?私の夢って何だっけ?って人生を振り返るみたいになって。そうしたら、「あ!マンガ家になることだった!何やってんだ、私!」と思い至って、改めて「オリジナルを描こう」と思ったんです。


デビューまでの道のり - 諦めなかった夢の実現

—推しのおかげですね。推し活ってやっぱり尊い。

デジタルでマンガが描けるようになっていましたし、意外と4ページから応募できるコンテストとかがたくさんあって、短くてもいいんだって分かったんです。そこでマンガMeetsというマンガを投稿できるサイトに出してみたらマンガMeeの大森さんが担当に挙手してくださって。
2022年11月に初めて連絡を取って、一緒にマンガを作ることになりました。
ツカミ漫画大賞という冒頭の3~8ページで応募できるマンガ賞に向けて作品をつくって、デビューをしました。

大森さん:agoさんの投稿されてる作品を見ていいなと思ったので担当につくことに。ツカミマンガ大賞の受賞作は、「そういう事なら、恋を教えて。」です。

—これは…掴まれますね!!ついにデビューとなりましたが、すぐに連載がスタートしたんですか?

いえ!その後はチャレンジMeeという連載コンペに出したり、マンガMeeで読み切りを発表したり、色々描いてはいたのですがなかなか連載会議には通らず、ボツの嵐でした。子どもを9時に寝かしつけて、そこから深夜1時くらいまでが自分の時間。寝不足でしたが好きなマンガが描けるから、とにかく楽しかったですね。

『隣の元カレくん』誕生秘話-スランプから生まれた新たな物語

現在の連載「隣の元カレくん」設定画像 (c)ago/集英社

—『隣の元カレくん』の構想はどこから生まれたんですか?

読み切りの短編とかは描いていたんですけど、連載案はいろいろ出しても全部不採用。もうお話が浮かばなくなってしまって1回描くのをお休みしたんですよ。それで私に描けるものって何だろう?って考えていたら、ほかの編集さんに「大人の話なのに、子どもっぽい」って言われたことを思い出して。子どもっぽいなら、子どもとか高校生の話を描こうかなって。でも現代の高校生のことは分からない。だから自分が高校生だった頃を思い返して、その時代と今を交差する話を描きたいなと、『隣の元カレくん』が生まれました。

—大森さんは、そのアイデアが出るまで、ずっと待っていてくれたんですね。

そうですね。ずっと連絡を取っていなかったんですけど、「こういうマンガが描きたいです」ってラフ画をLINEに送りました。

大森:マンガ家さんにはいろんなタイプがいて、こちらから提案した方がいい人と、アイデアが降りてくるまで待った方がいいタイプがいるんですが、agoさんは、降りてきた方がノリノリで描けるタイプなので、今は待つときだと思っていました。

—舞台を室蘭にしたのはどうしてですか?

私は胆振地方在住なんです。自分が住んでいる場所に近い街のほうが、キャラクターたちが暮らしているのを想像しやすいかなって思って室蘭にしました。周りの室蘭出身の人たちに、この頃の室蘭にこのお店はあったかなども聞いて、実際にその土地に住んでいる人たちにも納得してもらえるように設定しています。


作品のみどころー作品の特徴と読者の反響は

—ストーリーの中で、思い入れのあるシーンはどこですか?

3話がすごく苦労しました。主人公の黒木が、元カレの稲葉に告白されるシーンなんですけど、それまでずっと黒木目線で描いていて、告白されるシーンも黒木側から描こうとすると、どうしても稲葉が胡散臭くなってしまうんですよ。どうカッコつけても胡散臭くて、もう10回くらい描き直しました。その都度、大森さんに送って、「やっぱダメですよね」って。

それで、思い切って稲葉目線で描いてみたんですよ。そしたら、それがスッとハマって。それから黒木と稲葉の目線を交互に入れ替えるような展開になりました。

稲葉視点で描かれた3話のシーン。胸キュン必須です (c)ago/集英社

—稲葉の裏の思いも知れて、あれがなかなか巧妙だなと。

それはうれしい!本当にかなり苦労しました。

―そういえば、稲葉ってよく「したっけ!」って言いますよね。

実は私の地元、茨城でも「したっけ」ってよく使うんですよ。意味合いも北海道と同じです。だからすごく馴染みのある言葉で、自然と出てくるんですよね。

―読者からの反響でうれしかったことは何ですか?

読者の方々がいっぱい共感してくれて、すごくうれしいんですけど、特に8話に出てくる40代の下着事情ですかね。ブラトップと骨盤ショーツみたいなことを描いたら、「私も!」とかいう声が多くて「一緒なんだ!」って喜んでます。コメントはいつも見ていて、とっても励まされています!

8話の「残念下着」の回。男女の視点が入れ替わるからこそ見えてくるものがあります。 (c)ago/集英社

—最後に、この作品を通じて読者に伝えたいことは?
主人公たちは40歳なんですけど、私も10代の時は40歳ってもう完全な大人だと思っていたんです。でも実際に自分が大人になってくると、40歳っていろいろ我慢したりとか、立ち振る舞いとかは大人でも、中身の感情って案外そのままなんだってことが分かりました。「うれしい」とか「好き〜」とか心の中ってあまり変わらない。そういうことを描いているので、いろんなところに共感してもらえたらうれしいですね。

agoさんからSitakke読者の皆さまに向けて描きおろしイラストをいただきました!か、かわいい…!!!

大森:あと、告知です。12月24日からデジタル単行本の配信が始まります。全ての電子書店で購入できるようになりますので、ぜひチェックしてみてください。またYouTubeで『隣の元カレくん』の動画が配信されます。声優さんは黒木役が石川由依さん、稲葉役が細谷佳正さんです。

—えっ…!?石川さんも細谷さんも、「進撃の巨人」に出演されてましたよね…!?

そうなんですよ!!!!!!もう声優さんが決定した連絡をいただいた時は信じられなくて。感動と興奮で手が震えて!!アフレコも見学させていただいたんですが、オタク全開な私にもすごく優しくしてくださって…まさに黒木と稲葉に命が宿った…!ていう感覚でした。

***
しばし興奮したオタクたちの盛り上がりトークが続きましたが、石川さんも細谷さんも、黒木と稲葉にぴったり!!ボイスコミックはYoutubeから見れますので、ぜひご覧ください!

【マンガ】
マンガMee:「隣の元カレくん」第一話
単行本版:https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?jdcn=08X10000000055092900

【ボイスコミック】
ShortsPV:https://youtube.com/shorts/ed2w9HKPEhA
ボイコミ1話:https://youtu.be/xluE3YcRdLE
ボイコミ2話:https://youtu.be/gF1YQrWXm78

【SNS】
agoさんXアカウント:@ago_mng

〜〜取材を終えて〜〜
取材を前に、『隣の元カレくん』を読んで、勝手に作者のagoさんを想像していました。きっと、主人公の黒木愛理のように物静かでテンション低めな作家さんなんだろうな、と。ところが実際のagoさんは、きゃぴきゃぴしていてよく笑う、とっても明るくてかわいらしい方。いつまでもお話ししていたくなるような素敵な女性でした。
何よりも30代を過ぎて、忘れかけていた夢を追いかけ、実現させてしまうというバイタリティーには脱帽です!
黒木と稲葉のこれからもすごく気になるのですが、これからのagoさんももっと気になります!

***
文:菅谷環
編集:Sitakke編集部YASU子

ライター 菅谷環
食べること、旅すること、呑むことが大好き。人数が多い割りに目立たない第2次ベビーブーマーのど真ん中です。
日々の楽しみは、おつまみ作りと器集め、そのための雑貨屋めぐり。お酒の話を聞くのが好きで、酒の話を肴に呑めます。
ちなみに、地図が読める女です。仕事が詰まってくると、地図を見ながら妄想旅行に出かけてしまいます。

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