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マイケル・マン、深夜のファミレスで『ヒート2』脚本執筆 ─ 「1作目の初稿を書いたのと同じ席だった」

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クールな作品は、執筆の裏話もなんだか渋くてカッコいい。マイケル・マン監督が『ヒート』続編映画の執筆について米に語っているのだが、それがなんともマイケル・マンらしい内容だ。

マン監督による『ヒート』(1995)といえば、アル・パチーノとロバート・デ・ニーロの2大スターが激突したハードボイルド映画の傑作。現在、その後日譚と前日譚を兼ねた続編小説『ヒート2』が刊行されており、マン監督はこれを映画化するべく脚本執筆に勤しんでいる。

「脚本を仕上げているところ」とマンは執筆が順調であることを報告。Colliderによるインタビューが行われた当日の朝も、まさに執筆に取り組んでいたという。その執筆場所というのが運命的なのだ。

「今朝も2時30分、真夜中に目が覚めた。脚本執筆の真っ只中だけど、夜中の3時にLAをドライブしてみた。素晴らしかったよ。車も走っていない。結局、カンターズ・デリ(=レストラン)に行きついてね。24時間空いているのは、そこだけだから。

席に座って、今朝の9時まで書いた。第4幕を書き終えたくて。皮肉なことに、1970年代当時に私が『刑事スタスキー&ハッチ』の数話を書いたのと同じ席だった。その席で『ジェリコ・マイル/獄中のランナー』も書いたし、『ヒート』の初稿も書いた。ジーニーという名の、馴染みのウェイトレスがいてね。彼女はそこでウェイトレスをやりながら、ガルデナでポーカーをやり、息子を2人医学学校に通わせた。そう、時には夜のLAを車で走ることもある。すると、コヨーテが横切る。」

何気ないコメントではあるが、ファンからすれば堪らない内容である。夜のロサンゼルスが舞台となるマイケル・マン映画というのは素晴らしい。煌びやかな街が夜に見せる、おっかなさと孤独。この続編の執筆で、マンは実際に夜のロサンゼルスを走り、その息吹を感じとって文章に起こしているということは、マイケル・マン節がしっかり宿された作品になりそうだと期待が持てる。

彼が執筆の場所に選んだカンターズ・デリは、LAローカルに愛される24時間営業の老舗ファミレス。ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュとダフ・マッケイガンが初めて出会った場所であるとか、レッド・ホット・チリ・ペッパーズも通っていたとか、そんなエピソードをたくさん有するロサンゼルスのアイコン的な店だ。その店内で、マンの初期作である「刑事スタスキー&ハッチ」や『ジェリコ・マイル/獄中のランナー』(1979)、そして『ヒート』前作を執筆していたのと同じ席で書いたというのも、運命的である。

また、馴染みのウェイトレスがいるというエピソードもなんだかマンらしいし、コヨーテが横切るという、一見なんの関係のないコメントも意味深。コヨーテといえば、同じく夜のLAを舞台とするマン監督作『コラテラル』(2004)にも登場するからだ。この映画は、殺し屋のトム・クルーズを運悪く乗車させてしまったタクシー運転手ジェイミー・フォックスの人生最悪の一夜が描かれるのだが、あまりにも人生観異なる2人が乗る車内が不穏な空気になるタイミングで、2匹のコヨーテがタクシーの前を静かに横切る場面がある。都市化したロサンゼルスに今も生き続ける野生のコヨーテが道路を渡っていく姿に、車内の2人が無言で見入るという短いシーンなのだが、この場面は妙に啓示的で、生々しいローカル感も滲んでいる。

マン監督は、また夜のロサンゼルスの路上で、野生のコヨーテに出会したのだろう。2006年の『マイアミ・バイス』以来、マンは都会的なハードボイルド映画は撮っていない。かつてのさまざまな感覚を呼び起こしながら、1995年の前作に匹敵する、それ以上の出来となる続編となることに期待したい。

『ヒート2』では、前作でアル・パチーノやロバート・デ・ニーロ、ヴァル・キルマーが演じたキャラクターを誰が継ぐのかというキャスティングにも注目されている。アダム・ドライバーやの可能性が囁かれているが、果たしてどうなる?

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