琉球ゴールデンキングス “守備職人”小野寺祥太に聞く、「チームDF」が向上した理由は…DEFレーティングが10位→4位に
Bリーグ西地区の琉球ゴールデンキングスがレギュラーシーズンの前半戦を終えた。 多くの怪我人を出しながらも、23勝7敗で地区トップを走る。25、26の両日に沖縄アリーナで行われる東地区首位の宇都宮ブレックス戦からBリーグの試合が再開する。 前半30試合の戦いぶりを振り返ると、平均リバウンド数の45.4本、セカンドチャンスポイントの17.7点がリーグで飛び抜けて多い。#12ケヴェ・アルマの加入や、#53アレックス・カークが良好なコンディションを維持していることなどから、最大の武器であるインサイドの強烈さが増した印象だ。 #3伊藤達哉や#18脇真大らがスピードをもたらしたことも功を奏し、オフェンシブレーティング(100回攻撃した場合の平均得点)は115.8点で3位につける。昨シーズンも4位の115.0点と上位につけ、引き続き高い攻撃力を誇る。 一方、現在のディフェンシブレーティング(100回攻撃された場合の平均失点)は4位の103.5点で、10位の108.3点だった昨シーズンから大きく改善している。この部分が、好調を支える大きな要因の一つであることは間違いない。昨季はグループリーグで敗退した東アジアスーパーリーグ(EASL)において、グループB首位(通算5勝1敗)でプレーオフの「ファイナル4」進出を決めたことにもつながっているだろう。 何が変化したのか、キーマンはいるのか…。キャプテンの一人であり、“守備職人”としてチームを支える#34小野寺祥太に話を聞いた。
前半戦の功労者に平良彰吾「気付かされた部分が大きかった」
まずは前半戦の振り返りから。 ホームで行った三遠ネオフェニックスとの開幕2連戦は1勝1敗。「今シーズン、躍進が期待されている三遠を相手に白星を分けたことは、チームとしてもいい雰囲気でシーズンに入れたと思います」と振り返る。 オフには今村佳太や牧隼利、アレン・ダーラムら主力が退団したが、新キャプテンに就いた小野寺は開幕前から新チームに手応えを感じていたという。 「入ってきた伊藤選手はディフェンス力、トランジションの速さ、パスセンスがあり、チームに新しい強みを与えてくれる選手だと思っていました。ケヴェ・アルマ選手も外のシュートを含めてオールラウンドなプレーができるので、チームにとてもフィットしているなと感じていました」 ただ、開幕戦で全治2〜3カ月の怪我を負った伊藤をはじめ、#15松脇圭志やアルマ、#14岸本隆一など負傷者や体調不良の選手が続出。厳しい状況の中で西地区の1〜2位をキープし続けられた要因に、昨年の10月中旬にB3横浜エクセレンスから期限付き移籍した#47平良彰吾の存在を挙げる。 「ルーズボールへの執着心やボールプレッシャー、体をぶつけることなど、チームとしてできていなかった部分を彼が表現してくれました。一つ一つはシンプルなことなのですが、彼が来たことによって気付かされた部分は大きかったです」 平良について「前半戦の功労者の一人ですか?」と追加で聞くと、「大分です。大分だと思います。僕は」と強調した。それほど、平良が表現した戦う姿勢はチームに大きな影響を与えたのだろう。 ポイントガード(PG)が不足する中、シューティングガード(SG)が本職の#10荒川颯がハンドラーやゲームコントロールを担ったことを例に挙げ、「一人ひとりがステップアップしようともがいていました。その中で個人に任せるのではなく、チームとして決断して勝てていたことは本当に大きかったです。それぞれの成長につながりました」と好感触を語る。
佐々宜央コーチが求める「細かさ」と「フィジカルの部分」
主題に移る。 なぜ、ディフェンス面の数字が昨シーズンに比べて改善しているのか。全30試合にフル出場している4人のうちの一人である小野寺(その他の3人は脇、荒川、#45ジャック・クーリー)に聞くと、一人のキーマンの名前を挙げた。 「僕は佐々コーチの存在が大きいと思っています。ディフェンスの際、ポジショニング一つを取っても『もう一歩インサイドに足を入れろ』とか細かい部分を指摘してくれます。ミーティング中の映像でもそういった話は多いですね」 今季、5シーズンぶりにキングスに復帰した佐々宜央アソシエイトヘッドコーチ。2017年にキングスのヘッドコーチ(HC)に就いた際も、豊富な運動量ときめ細かい連係を重視する強固なディフェンスをチームに植え付け、それ以前に比べて大幅に平均失点を抑えた。宇都宮ブレックスのHCを務めた昨シーズン、宇都宮のディフェンシブレーティングがリーグで最も少ない99.1点だったことからも、チームディフェンスを構築する手腕に長けていることが分かる。 「自分たちのフィジカルを使いながら、相手にボールをもらわせる前にどう守るか、という部分もよく言われます」と続ける小野寺。佐々氏が個々のプレッシャーの激しさ、そしてチームで守る上での細かい連係を求めたことで、より堅さが増したということだ。
個々の選手を見ると、チームのディフェンス力を底上げした功労者として伊藤の存在は外せないだろう。小野寺も心強く感じている。 「伊藤選手と出る時は、彼が前から相手ハンドラーをピックアップしてパスコースを限定してくれるので、おのずと他の選手がディナイを張ってパスカットを狙える状態にしてくれます。それが本当にいい影響を与えていると思います」 平良や荒川も含め、高い位置からボールマンに1対1で激しいプレッシャーを仕掛けられるガードが揃い、相手のボール運びにもより時間を掛けさせられるようになった。24秒バイオレーションを奪う場面も、昨季より増加した印象を受ける。 その他、顕著な変化が見て取れるのはアレックス・カークの守り方だ。 相手がピック&ロールでディフェンスの「ズレ」を作ろうとする時、昨シーズンまではビッグマンが下がり気味で守ることが多かったが、今季はカークがハードショー(ボールマンに積極的にプレッシャーを掛けること)に出ることが多い。よりフットワークや体力が必要になる動きなため、コンディションの良さも影響しているのだろう。 ハンドリングや得点力に優れた相手エースとマッチアップする機会が多い小野寺は、この守り方に好感触を得ている。 「昨シーズンは(ビッグマンが)下がり気味で、そこを狙われることもあったのですが、今シーズンはアレックスとかが前に出てくれるので、プレッシャーを掛けやすいです。ちょっとでも遅れると抜かれてしまいますが、躊躇せずに前に出てくれることによって、僕もスクリーナーの下を通って行ける。そこは全体のローテーションを信じてやってくれていると思います」 各選手とも、シチュエーションによってはスイッチを使う場面も増加し、守り方の多彩さが生まれている。ハードショーに出た時やスイッチをした時、ローテーションのコミュニケーションミスが起きる場面こそあれど、シーズンの経過と共に少しずつ改善してきているように見える。 レフェリーの判定と戦ってしまい、ストレスを溜めて悪循環に陥るような試合も減ってきた。「チーム全体として、テクニカルファウルが昨シーズンに比べて少ないと思います。(もう一人のキャプテンである)ヴィックがリーダーシップを取ってタフに戦ってくれていることもあり、いい雰囲気です」と笑みを浮かべる。
大敗試合に課題感…「我慢強く、チームとして戦う」
一方、小野寺は37点差で大敗した昨年10月の島根戦や、同様に36点差をつけられた今月8日のEASLのニュータイペイキングス戦を例に挙げ、課題に触れた。 「桶谷HCも言っていましたが、ああいう部分を改善しないと優勝は難しくなってくると思います。ディフェンスが崩れた時に個人で打開しようとして、チームとしてのプレーができていない時に悪い流れになり、どんどん崩れていく。後半戦ではそういう試合を少しずつ消していけたらなと思っています」 今後は東地区首位の宇都宮をはじめ、中地区3位のアルバルク東京など各地区の上位陣との対戦が続き、2月5日の天皇杯準決勝では中地区1位の三遠ネオフェニックスと沖縄アリーナで対戦する。 宇都宮の比江島慎やA東京のテーブス海、三遠の佐々木隆成など、どのチームにも得点力の高いガードがいるため、彼らをいかに波に乗せないかは勝負の大きなポイントになる。そのため、「フレッシュな選手が変わるがわるマークし、不利なトランジションや簡単な2ポイントを防ぐため、うまくファウルも使いながら守っていきたいです」と見通す。 今シーズンの山場の一つと言える時期に向け、「勝てるなら全部勝ちたい」とした上で、こう言葉をつないだ。 「全試合が本当に大切な試合になると思っています。レギュラーシーズンの最後で僅差になると、昨シーズンみたいに西地区優勝が難しい状況になるので、今のうちにできる限り差を広げたい。強いチームと対戦することで、今のキングスの立ち位置も分かると思います」 2月8、9の両日にホームであるサンロッカーズ渋谷戦を終えると、2月中はバイウィーク(中断期間)となる。それを念頭に「タフなチームに対して、できなかったことも出てくると思うので、それをバイウィーク中に改善することもできる。課題を明確にするためにも、我慢強く、チームとして戦っていきたいです」と力強く語った。 Bリーグ、天皇杯、そしてEASLのファイナル4と、大一番が続く今後のキングス。チームディフェンスの精度をさらに高めることができれば、タイトル奪取により近付くことができそうだ。