2年連続!?楽しそうだったのになぜか運動会後に泣く自閉症長男。でも成長も感じられて…
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
小5兄、小1弟、ついに兄弟一緒の運動会に!
わが家は、現在小学校5年生でASD(自閉スペクトラム症)の診断がある兄のミミ、小学1年生の弟・ふーの二人兄弟です。ふーは児童精神科での診断はありませんが、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向があると言われています。
ふーが1年生になった今年、初めて兄弟一緒の運動会に参加することになりました。ふーにとっては初めての運動会になりますので、とても楽しみにしていました。一方ミミは、昨年4年生の時の運動会では帰宅後大号泣。5年生の今年はどうなるかと少し心配していました。
高学年になった長男は裏方の仕事も!楽しく観覧できた運動会でしたが……
まず初参加のふー。ふーは最後まで楽しそうにダンスを踊り、徒競走も走っていました。よかったね。
そして兄のミミは、高学年となったため用具の移動などのお手伝いといった裏方の仕事もやりながらの運動会。ミミは太鼓や大玉の移動をする担当だったようで、演目が始まる前にチームの数人で出したり、終わったら片づけをしていました。しっかり自分の役割をこなしていて大きくなったな~とほっこり。
そして運動会前日、徒競走で「1位になる!」と宣言していたミミは、見事に1位に!体操も恥ずかしがりながらも頑張っていました。
私は終始運動会をとても楽しく観覧できました。
ですが……。
運動会は大成功!だったはずが、帰宅した長男がなぜかシクシク泣き出して……
うちが通っている小学校の運動会は午前中で終わりです。昼過ぎ、先にふーが一人で帰宅しました。そしてその少しあとにミミが帰宅。「おかえり!」と明るく声をかけたのですが、ミミはなにも言わず家に入り着替えたあと、お昼ご飯も食べずに部屋の隅でシクシクと泣き出したのです。
(え?なんで!?何があったの!?)と思う私。パパがミミに声をかけてくれたのですが、泣いている理由は言ってくれませんでした。
その後私は、ミミが落ち着くまで隣の部屋で普段通りに過ごしました。1時間ほどしてミミが昼食を食べ始めてくれたので、少し安心しました。
食べ終えて、いつも通りのミミになった頃、なぜ泣いていたのかをミミに聞いてみたら、「うーん、暑くて疲れたから」とミミ。本当かどうかは分かりませんでしたが「そうだったんだね」とミミの言うことを受け止めることにしました。
今年も泣いたけれど、成長したなあ
去年の運動会で、ミミの待機席の日差しが強く、暑くてつらかったと帰宅後に大号泣したことを思い出しました。今年も暑かったし、裏方の仕事もあった分余計疲れたんだろうなと思いました。ただ、去年ほど激しく泣きませんでしたし、1時間で自分で切り替えることができています。1年でやっぱり成長したんだなあ。
来年も泣くかもしれませんが、また別の成長を見せてくれるのかなと思えました。
執筆/taeko
(監修:井上先生より)
taekoさんが安心して見られた運動会だった一方で、暑い中での特に苦手な行事参加は、お兄さんにとって想像以上にハードだったのでしょう。お兄さんにとって弟も参加する運動会で頑張らればという意気込みもあったのかもしれません。毎年一つひとつの行事をこなしていく中で、ご本人が成長していく姿を感じながら、お子さんにもよかったところや頑張ったところをさりげなく伝えてあげると自信につながるのではないでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。