AIで仕事を2倍こなすための5つの方法【生成AIのプロ・おざけんさんに教わる業務効率化のコツ】
昨今、生成AI(ChatGPTなど)の進化によって、ビジネスパーソンがAIを使って仕事を効率化できる場面が急速に増えています。特に20~30代の「AI初心者」でも、正しい使い方を身につければ日々の業務を大幅に時短し、成果を高めることが可能です。
本記事では、GoogleのAI「Gemini」アドバイザーなどAIの領域で幅広く活躍されているおざけん(小澤 健祐)さんに、AIを活用して仕事を2倍こなすための5つのポイントを実践的に解説いただきました。
まずは目的を明確に:AIに"何をしてもらうのか"をはっきりさせる
AI活用で最も重要なのは 「そもそも自分は何を得たいのか?」というゴール設定 です。AIは指示通りに動きますが、こちらからの「お願いごと」があいまいだと、途中で修正が必要になり、かえって非効率になります。
ポイント
・ゴールを一文で表す
「営業データから顧客の不満点を3つ抽出したい」「新製品のキャッチコピー案を5つ作成したい」など、具体的で明確な目的を定めましょう。
・“入力"を先に整理する
AIに与える情報を最初に整理しておきます。データ不足だと期待する結果は得られません。与える情報が多すぎる場合は、優先順位をつけて提供しましょう
・成果物のイメージを明確に伝える
「結論→理由→具体例」の順で構成してほしい、「表形式でまとめてほしい」など、出力形式も指定するとさらに効率的です。
実践例
【目的】
顧客アンケートから主要な改善点を3つ抽出し、対応策を提案する
【与える情報】
過去3ヶ月の顧客アンケート結果(満足度と自由記述) 現在の商品仕様書 競合他社の特徴
【希望する出力形式】
各改善点を「問題点→影響→対応策」の形式でまとめる 各対応策には実施難易度(低/中/高)を付記する
“分岐質問 × ダブルダイヤモンド"で抜け漏れを防ぐ
AI初心者が高品質な回答を得るための強力な手法が「分岐質問 × ダブルダイヤモンド思考」です。これは段階的に発散と収束を繰り返しながら、抜け漏れのない情報収集やアイデア整理を進める方法です。
分岐質問(Branching Prompts)の特徴
一度に複雑な要求をせず、段階的に質問を深堀りしていく方法 AIの「一度に多くの条件を処理する」負担を減らし、より洗練された回答を引き出せる 各ステップの回答を見て、次の質問を柔軟に調整できる
ダブルダイヤモンド思考の流れ
1.発散1(問題の探索)- 可能性を広げる 2.収束1(問題の定義)- 焦点を絞る 3.発散2(解決策の探索)- アイデアを広げる 4.収束2(解決策の実装)- 実行計画に落とし込む
実践例:マーケティング戦略の立案
発散1(問題の探索)
現在の若年層向け健康飲料市場における、考慮すべき課題やトレンドを8つ挙げてください。
それぞれについて簡潔な説明と、なぜ重要なのかの理由も添えてください。
収束1(問題の定義)
挙げていただいた8つの課題から、当社の新商品「ビタミンブースト」にとって
最も対応すべき重要課題を3つに絞り込んでください。
選定理由と、それぞれの課題がビジネスに与える影響も教えてください。
発散2(解決策の探索)
選定された3つの重要課題それぞれに対して、具体的な戦略案を2〜3つずつ提案してください。
各戦略には実施に必要な期間や投資規模の目安も含めてください。
収束2(解決策の実装)
提案された戦略の中から、最も費用対効果が高いと思われる組み合わせを選び、
90日間の実行計画を週単位で示してください。
KPIと測定方法も含めてください。
このように段階的に質問を深めていくことで、より実行可能で具体的な提案が得られます。各ステップでAIの回答を確認しながら進められるため、途中で方向修正も容易です。
AIに評価させる:自己評価(スコアリング)で改善ループを回す
AIを使って作成した文章やアイデアの品質を客観的に把握するには、 AI自身に評価させる手法が効果的 です。人間による評価は時間がかかり、主観が入りがちですが、AIに明確な指標を設定すれば、即座に客観的な評価が得られます。
点数評価(スコアリング)の方法
・具体的な評価基準を設定する
論理性(一貫性、根拠の妥当性) 表現(文法、語彙の適切さ、読みやすさ) 実行可能性(現実的な提案か) ターゲット適合度(想定読者に合っているか) 独自性(差別化要素があるか)
・評価スケールを明確にする
10点満点や5段階評価など、わかりやすい尺度を用いる
各スコアの判断理由も記載してもらう
ペルソナ評価の活用法
・複数の視点から評価してもらうことで、多角的な改善点が見えてくる
「経営者視点で評価」「新入社員視点で評価」「顧客視点で評価」など
実践例:営業資料の評価
以下の営業提案書を、次の基準で10点満点で評価してください。
1.説得力:提案の論理性と根拠の信頼性 2.明確さ:内容の理解しやすさと構成の整理度 3.顧客価値:提案が顧客にもたらす具体的なメリット 4.差別化:競合他社と比較した際の独自性 5.実現可能性:提案の現実的な実施可能性
各項目の評価理由と、具体的な改善アドバイスも添えてください。
また、以下の3つのペルソナからの評価も5点満点でお願いします。
忙しい経営者:時間効率重視、数字に敏感 技術責任者:詳細と正確さを重視 購買担当者:コストパフォーマンスを重視
AIからのフィードバックに基づいて資料を修正し、再度評価してもらうサイクルを回すことで、短時間で質の高い成果物に仕上げることができます。
テンプレート化:再現性の高い時短ワザ
同じような業務でAIを繰り返し活用する場合は、 テンプレート化が大きな効率化 をもたらします。これにより、AIの活用品質が安定し、チームメンバー間での共有も容易になります。
テンプレート化のメリット
成功したプロンプト(AIへの指示)の再利用が容易になる チーム内での品質の標準化ができる 初心者でも高度なAI活用ができるようになる
プロンプトテンプレートの例
##ロール設定
あなたは業務改善コンサルタントです。現場の声をよく聞き、実行可能な提案を心がけてください。
##企画概要
[ここに企画の概要や目的を記入]
##ステップ1:現状分析(発散)
現在の業務プロセスにおける課題や非効率な点を8つ挙げてください。
それぞれの影響度(大/中/小)も評価してください。
##ステップ2:重点課題特定(収束)
挙げられた課題から、最も解決優先度の高い3つを選び、選定理由を説明してください。
##ステップ3:解決策検討(発散)
3つの重点課題それぞれに対して、2〜3つの解決アプローチを提案してください。
各アプローチの概要、メリット・デメリット、実施コスト(低/中/高)を含めてください。
##ステップ4:実行計画(収束)
最適な解決策を選び、具体的な実行ステップ、必要リソース、タイムラインを示してください。
##評価基準
以下の基準で最終提案を10点満点で自己評価してください。
1.現実性:実際に実行可能か 2.投資対効果:投資に見合った効果が見込めるか 3.導入容易性:組織の抵抗が少なく導入できるか 4.持続可能性:一時的でなく継続的な効果があるか 5.測定可能性:効果を定量的に測定できるか
このようなテンプレートを業務ごとに用意しておけば、AIを活用する際の思考プロセスが整理され、質の高い結果を安定して得られるようになります。また、テンプレートをチーム内で共有することで、AI活用のナレッジが組織に蓄積されていきます。
継続的なアップデート:PDCAサイクルで成長を促進
AI活用は導入して終わりではなく、 継続的な改善が成功の鍵 です。プロンプト(AIへの指示)とその結果を振り返り、改良していく仕組みを作ることで、個人もチームもAI活用スキルが飛躍的に向上します。
PDCAサイクルの回し方
Plan(計画)
どの業務をAIで効率化するか どのようなプロンプトテンプレートを使うか 期待する成果物の品質基準は何か
Do(実行)
実際にAIにプロンプトを投げて作業を進める 必要に応じて分岐質問で深掘りする AIの回答を実務に活用する
Check(評価)
AIの回答品質を評価する(自己評価機能も活用) 実務への適用結果を検証する プロンプトの有効性を確認する
Act(改善)
プロンプトテンプレートを修正・改良する 効果的だった事例を共有する 新しいAI活用方法を探索する
組織的なAI活用の推進方法
・社内ナレッジベースの構築
成功したプロンプト例のライブラリ化 業務別のテンプレート集の作成 事例集(Before/After)の共有
・定期的な学習と共有の場
月1回の「AI活用事例共有会」の開催 部署横断のAI活用ワークショップ 新しいAI機能のアップデート情報共有
・AI活用文化の醸成
「失敗しても学びになる」という心理的安全性の確保 AI活用の成功事例の表彰・評価 リーダー自らがAI活用を実践するロールモデルになる
こうしたサイクルを回すことで、AIとの協業スキルが向上し、より高度な業務効率化が実現できます。
まとめ:AIを"仕事のパートナー"にして効率化を加速しよう
1.目的を明確化し、AIに具体的なゴールとインプットを設定する 2.分岐質問 × ダブルダイヤモンドで深い洞察を段階的に引き出す 3.AIに自己評価させることで、改善点を素早く特定し品質を高める 4.テンプレートを活用して、再現性の高いAI活用を実現する 5.PDCAサイクルでプロンプトや運用方法を継続的に進化させる
これらのステップを実践することで、AI活用は「便利なツール」から「強力なビジネスパートナー」へと進化します。特にこの記事を読んでいるような問題意識のあるビジネスパーソンは、新しいテクノロジーへの適応も速いはずです。ぜひ日常業務から少しずつAI活用を始め、 AIと二人三脚で仕事を"2倍速"にする 体験をしてみてください。
実践のためのアクションプラン
今日から:日常のメール作成や資料作成でAIを試す1週間以内:自分の業務に合ったプロンプトテンプレートを1つ作る1ヶ月以内:チーム内でAI活用のノウハウ共有会を開催する
AIは使えば使うほど上手になります。最初は小さく始めて、徐々に活用範囲を広げていくことで、無理なくAIを仕事の強力な味方にすることができるでしょう。
著者プロフィール
おざけん(小澤 健祐)
「人間とAIが共存する社会をつくる」をビジョンに掲げ、AI分野で幅広く活動。著書『生成AI導入の教科書』の刊行や1000本以上のAI関連記事の執筆を通じて、AIの可能性と実践的活用法を発信。
一般社団法人AICX協会代表理事、一般社団法人生成AI活用普及協会常任協議員を務めるほか、GoogleのAI「Gemini」アドバイザーとして生成AIの活用普及に貢献。Cynthialy取締役CCO、Visionary Engine取締役、AI HYVE取締役など複数のAI企業の経営に参画。日本HP、NTTデータグループ、Lightblue、THA、Chipperなど複数社のアドバイザーも務める。
千葉県船橋市生成AIアドバイザーとして行政のDX推進に携わる。NewsPicksプロピッカー、Udemyベストセラー講師、SHIFT AI公式モデレーターとして活動。AI関連の講演やトークセッションのモデレーターとしても多数登壇。
AI領域以外では、2022年にCinematoricoを創業しCOOに就任。PRやフリーカメラマン、日本大学文理学部次世代社会研究センタープロボノ、デヴィ夫人SNSプロデューサーなど、多彩な経験を活かした活動を展開中。
公式サイト
『おざけん|AIが共存する社会をつくる』
X(旧Twitter)
@ozaken_AI