『あんぱん』の方言、実際どう? 高知県民からの評価を聞いた。「津田健次郎の声質と土佐弁が相性抜群」
高知県を舞台の朝ドラ「あんぱん」
現在NHKにて絶賛放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。今田美桜が演じる主人公・のぶと北村拓海演じる嵩の二人が、どのように時代の荒波を乗り越え『アンパンマン』の物語へと辿り着くのか。その変遷を多くの人が日々楽しみにしていることでしょう。
一度はそれぞれの道を歩んだものの、終戦を機に再会した二人。物語は今まさに次のフェーズを迎えており、豪華俳優陣による新たな登場人物たちにも注目が集まっています。
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今作はおそらく国民の大半が知るであろう、『アンパンマン』を生み出した作家・やなせたかし夫妻をモデルとしたお話です。そのため、ストーリー前半は2人の地元でもある高知県を舞台に物語が繰り広げられてきました。
高知県と言えば、これまでにもさまざまなドラマや映画の舞台ともなってきた場所です。NHKの作品では、絶大な人気で今も語り継がれる大河ドラマ「龍馬伝」。直近では連続テレビ小説「らんまん」も、高知出身の植物学者・牧野富太郎がモデルとなった物語ですね。
そんな高知に所縁ある作品で、多くの人が注目するポイント。それが非常に独特な言葉遣いの“土佐弁”でしょう。特に今まさに高知在住の方や、高知出身の人たち。
バリバリの“はちきん”である筆者を含め、高知で生まれ育った地元愛の強い人にとって「不自然でない土佐弁を喋っているか」は、高知に関する作品を評価する非常に重要なポイントだったりもします。
「~~ぜよ」はもはや死語。リアルな土佐弁
高知以外の人にとっての土佐弁と言えば、おそらくまだまだ「~~ぜよ」という語尾のイメージも強いはず。ですがこの語尾は今の高知ではほとんど使われない“死語”。
その点今回の「あんぱん」は、今の時代の県民にとってかなり馴染み深い“リアルな土佐弁”がしっかり使われている点において、高知人からも一定の評価を得ている印象です。
「~~やき」「~しちゅう」ってどんなニュアンス?
リアリティのある語尾で言えば、例えば「~~やき」「~~が」などは、日頃の会話の中でも頻出の言い回し。「明日は雨やきね!」「あんた今どこにおるが?」のような形で使われる、高知人にとってはとてもナチュラルな言葉です。
また「~~しちゅう」「~~しゆう」もよく使われる語尾。これは英語の完了形、進行形に近い感覚で使うと、より“土佐弁ネイティブ”らしい意味合いになります。違いとしては「もうご飯作っちゅうで」=料理完成済み、「今ご飯作りゆうで」=絶賛料理中、という感じでしょうか。
重ねて語尾に限らず、土佐弁は総じて濁点を用いた言い回しや方言が多くあります。高知の人が喋っていると勢いよく聞こえる、あるいは時々怒っているように聞こえる、というのは、この濁点の多さが理由のひとつかもしれません。
先ほど出た語尾の「~~が」をはじめ、「たくさん」という意味の「こじゃんち」、「乱暴な、雑な」という意味の「がいな」、「すぐに」という意味の「ざんじ」。
作中で嵩がのぶに言われていた弱々しい=「たっすいが」にも、濁点が入っていますね(土佐弁ネイティブの感覚としては、「たっすいがー」ではなく「たっすいがぁ」と言いたいところです)。
それに加え、イントネーションの高低の幅が大きいのも土佐弁のポイントのひとつ。淡々と喋るよりは、むしろ大げさなぐらい感情表現が言葉に表れるのもある意味“土佐弁らしさ”を象徴する響きかもしれません。雰囲気としては、関西弁に近いものを感じる人もいることでしょう。
津田健次郎の声質がマッチ
そんな点に注目しつつ改めてドラマを見てみると、リアリティある土佐弁の言い回しを、きっと物語の随所に見つけられるはず。
個人的には、高知新報・東海林役を務める津田健次郎さんの声質と、土佐弁の相性の良さが想像以上に抜群! 深みのある低音ボイスを元にした濁声のような響きと、濁点の多い土佐弁の組み合わせが、見事に“方言らしさ”を生み出しているように思います。
高知を舞台に、これまで繰り広げられてきた「あんぱん」の物語。それぞれに少しずつ人生の転機を迎え始めるのぶと嵩は、これからどのような形で二人一緒の人生を歩むことになるのでしょうか。2人をはじめとした人々の“土佐弁”にも引き続き注目しつつ、これからのストーリーも楽しんでみては。
(曽我美なつめ/ライター)