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ASD長女、通信制高校から通信制大学へ!驚きの課外授業も!?気になる大学生活をレポート

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ASD長女、通信制高校から通信制大学へ!驚きの課外授業も!?気になる大学生活をレポート

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

通信制高校から通信制大学へ

ASD(自閉スペクトラム症)の娘(18歳)は、この春に通信制高校を卒業し、そのまま同系列の通信制大学に進学しました。高校時代と同じプラットフォームで授業を受けられるため、あまり戸惑うこともなくスムーズなスタートを切れたように思います。高校で貸与されていたVRヘッドセットも引き続き使用できることになり、環境面の変化もありませんでした。

ただ、勉強する環境が変わらなくても、授業の内容は大きく変わりました。高校では「まずは卒業」が目標だったカリキュラムに対し、大学では専門的な内容がぐっと増え、当然のように勉強量も倍以上に。

時間割も、学期中にいつでもビデオを見たりしながら取り組む授業が減り、1週間刻みでレポートを出さなければならないものが増えました。

勉強は一教科ずつ没頭してやりたい!

娘はASD(自閉スペクトラム症)の特性もあってか、一度勉強を始めた教科はキリのいいところまで一気にやってしまいたいらしく、1週間の間に5科目〜7科目を細切れでやらなければいけない「ふつうの時間割」がちょっとストレスになっているみたいです。

また、高校までは数日頑張って勉強をやり溜めておいて、次の数日全く勉強しないで動画や音楽制作などやっていたので、2〜3日に一度は何かしら提出物がある大学の時間割は驚きだったようです。

「毎日勉強しなきゃいけない!作業するまとまった時間が取れない!!」と嘆く娘の姿を見ていると、可哀想ではありますが「通学してたらもっと忙しいからまだマシなんだよなあ……」と思います。

課外授業にも参加

娘の大学は通信制なので基本的には在宅で勉強していますが、実は「体験授業」や「仲間づくり」のためのリアルな集まりもたくさん用意されています。

6月に娘が参加したのは、農業体験と災害復興に関する講習。中でも驚いたのは、重機オペレーター(クレーン)としての基礎資格が取れるという内容でした。

2日間の重機講習に備えて、事前に学科はeラーニングで予習。現地では5人部屋での共同生活、しかも毎日外作業ありというハードな5日間。正直、私は体力や気力がもつか心配でした。

でも、娘は元々田舎育ちで、自然の中で遊ぶのは慣れています。果樹の世話や整地作業も「できると楽しい!」と前向きに取り組んでいたようです。

クレーンを使って整地の練習も

今回の課外活動の目玉、重機のオペレーションについては、事前にWeb講習を受けてからのチャレンジ。座学の講習と実習の両方を受講してやっと修了証をもらえます。

「機械の操作は苦手じゃないから大丈夫でしょ」と言っていた通り、特に苦労することなく作業をこなせたようです。集中して、機械の操作手順を覚えてその通りに動かすことは「音ゲーと似てる」とのこと。たしかに!と思いました。

娘は、「土木とか建築って、力のある人がやるイメージだったけど、機械を使えば体力に関係なくできるんだね。むしろ小柄なほうが乗るには都合がいい場合もあるらしい」と帰ってきてから話してくれました。

夫の実家は農家なので、幼い頃から農作業を少しは経験していました。でもあの頃は「家族の手伝い」として、言われたことをこなすのが中心。今回のようにほかの地域の農業に触れる機会を通じて、「どんな仕事か」「どうやって支えられているか」を、より客観的に、興味をもって見ることができたようです。

スキルを得ることを通じて視野を広げる

もちろん、ほんの1週間足らずの経験だけで進路が決まるわけでもないでしょう。それでも、「体験を通して得られる気づき」は大きいものだと思いました。

娘の通っている通信制大学には、こうした体験型の課外活動や、企業のインターン募集、就職支援のプログラムが多数用意されています。投資や起業に関する講座もあり、さまざまなニーズに応じた選択肢が整っています。

昭和生まれの親(私)には、通信制大学といえば資格を得るためにできるだけ短い期間に必要な科目だけさっさと取るところというイメージもありました。想像だけでなく、実は私自身、社会人入試で通信制大学に入学して資格を取ったこともあります。

しかし、課外授業や特別講義に積極的に応募したり、学内SNSを通じて友だちをつくったりと、大学生生活を目一杯楽しもうとしている娘を見ていると、通信制大学もずいぶん変わったなと思うし、まだまだ変わっていきそうだなと思います。

娘のように、集団生活が苦手なタイプでも、自分のペースを保ちつつ新しいことに挑戦できる環境があるのは、本当にありがたいことです。これからも本人の興味や特性に合わせて、少しずつ世界を広げていってくれたらと願っています。

執筆/寺島ヒロ

(監修:初川先生より)
娘さんの通信制大学入学後の生活についてシェアをありがとうございます。課題が頻回に出る、体験型の学習が充実しているなど、進学された大学の特徴なのだとは思いますが、初めて聞く話が多く、とても興味深く拝読しました。通信制高校がさまざまな特色を打ち出しながら、お子さんに合った環境を選べるようになって久しいところですが、それに続く形としての通信制大学の在り方も変わってきているのだなと感じました。学校側がさまざまな学び方や課題などを設定しても、そこに乗るかどうかは最後は本人次第ではあります。娘さんがここまで自分に合う形で学んできたこと、その進展としての大学生活でも、意欲的に自分の大学生活を組み立てようとしている姿にとても成長を感じますね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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