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少年が記した戦争の「声」戦後80年

YOUよっかいち

証言を記した自由研究作品を開く矢田さん

 戦後80年――。戦争体験を語る人が少なくなってきた今、菰野中学校2年生の矢田奏介さんが小学6年生の夏休みにまとめた戦争に関する自由研究が、菰野町図書館(菰野町潤田)の郷土資料室で展示されている。そこには、当時を生きた人たちの貴重な証言が記録されている。

【菰野町図書館郷土資料室に展示されている矢田さんの自由研究作品】


 矢田さんは、平和学習の授業で広島の原爆について学んだことをきっかけに、自分の住む菰野町や四日市市で戦時中に何があったのかを知りたいと思い、「戦争」を自由研究のテーマに選んだ。調べる中で、菰野町竹永地区には陸軍特攻用の飛行場があったと知り、現地を訪れた。「テレビやドラマで見るものだと思っていた戦争が、自分の町に本当にあった」と衝撃を受けたという。

【小坂さんの話を記したページ】


 更に、米軍が原爆投下の訓練のために四日市市に投下した模擬原爆「パンプキン」について、調査をしていた母の知人の早川寛司さん(65)から話を聞き、関心を持った。戦争当時10歳だった小坂壽保さん(90)を紹介してもらい、着弾地点を一緒に訪ねた際、爆発の威力で200メートルほど離れた場所にいた小学生も吹き飛ばされたと知り、「本当に恐ろしい」と感じたという。

【矢田さんがパンプキンの着弾点を訪れた時の写真】


 その爆弾で命を奪われた茨木房子さん(当時29歳)と次男の恵巨さん(当時8歳)の存在も、早川さんから聞いた。詳しい事情を知る茨木さんの長男は既に亡くなっていたが、生前に語っていた話を知ることができた。「茨木さん親子はただ朝ごはんを食べようとしていただけなのに――」。今を生きようとする人の命を簡単に奪う戦争に、矢田さんは愕然としたという。

【朝の10分間お話会で話を山本さんの話を聞く矢田さん】


 菰野町大羽根園で行われている「朝の10分間お話会」では、四日市空襲の体験者で当時小学1年生だった山本良則さんの話も聞いた。布団を被って逃げる様子などを自ら描いた絵を使って分かりやすく語ってくれたといい、「戦争が終わった時、人生で一番ほっとした。その時見上げた空が青く、そんなきれいな空は見たことがなかった」という言葉が矢田さんの心に深く刻まれた。

【布団を被って逃げる自作の絵を手に体験を語る山本さん】


 YOU記者が今回、山本さんへの取材を試みたところ、昨年に亡くなっていたことがわかった。そのことを矢田さんに伝えると、しばらく言葉を失った後、「亡くなる前に貴重な話を聞けたことに感謝したい。教えていただいたことを、たくさんの人に伝えたい」と語った。

【山本さんの体験を記したページを開く矢田さん】


 戦争体験者たちの言葉や姿に触れる中で、「目の前の人を大切にしたい」という思いが芽生えたという矢田さん。茨木房子さん親子の話、小坂さんが語った爆弾の恐怖、山本さんが見た「青い空」。その一つひとつが矢田さんの心に強く残った。
 「自分だけが正しいと思ってしまうと、争いはなくならない」。戦争の記憶を通して得たその気付きは、矢田さんの目を未来へと向けさせた。

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