【倉敷市】ローソン S倉敷アイビースクエア店 〜 倉敷美観地区内にできた初めての「コンビニ」。オープンに向けたストーリーを聞きました
コンビニエンスストア(以下、「コンビニ」と記載)は、今や市街地に限らず、郊外に行っても必ずみかけるお店の一つです。「生活インフラ」とすらいえる存在でしょう。
しかし、昔ながらの町並みが残る倉敷美観地区内にコンビニはありませんでした。「重要伝統的建造物群保存地区」であるためでしょうか。理由は不明ですが、なんとなく「電飾や騒音などが原因なのかな」くらいに思っていました。
そのような倉敷美観地区において、2025年5月29日(木)にコンビニ「ローソン S倉敷アイビースクエア店」がオープンしました。
倉敷アイビースクエアの敷地内なので、厳密にいえば倉敷美観地区の「隣」という位置付けですが、観光客はもちろん、近隣で働く人にとっても待望のコンビニ。
どのような背景や想いでオープンにいたったのでしょうか。
オープンに向けて尽力した、株式会社倉敷アイビースクエアの中久保陵次(なかくぼ りょうじ)さんに話を聞きに行きました。
「ローソン S倉敷アイビースクエア店」とは
「ローソン S倉敷アイビースクエア店」は、倉敷アイビースクエアの敷地内にオープンしたコンビニです。
元々は工房売店があったスペースを、耐震補強したうえでコンビニに改装しました。
約150平方mの敷地は、パッと見た印象では狭く感じますが、品ぞろえなどは一般的なローソンとほぼ同じです。
おにぎり・パンや弁当、ドリンク、日用雑貨はもちろん、Loppi(マルチメディア端末)も設置されています。
「ローソン S倉敷アイビースクエア店」の特徴
機能面で見れば「普通のコンビニ」ですが、倉敷美観地区内の店舗であるため、景観への配慮などいくつか特徴もあります。
・看板は目立ちにくい木製で、電飾など建物外観の装飾は控えめ
・木造の建物であるため、柱が目立つ
・デニム製品やきびだんごなど、土産物も取り扱っている
・24時間営業ではなく、午前8時〜午後9時30分までの営業
・「ろう村」の看板を見られるのは2025年末まで
看板は目立ちにくい木製で、電飾など建物外観の装飾は控えめ
ローソンといえば「青と白基調の看板」が思い浮かびますが、ローソン S倉敷アイビースクエア店の看板は「木製」です。
これは美観地区の景観に配慮した結果、このようなデザインとなったそうです。
木造の建物であるため、柱が目立つ
耐震補強工事はおこないましたが、元々工房売店があった木造の建物をそのまま使っています。
このため、店内には柱があり一般的なコンビニとは異なる雰囲気がありますが、これが独特の雰囲気を醸し出しています。
デニム製品やきびだんごなど、土産物も取り扱っている
コンビニであるため、おにぎり・お弁当・ドリンク・お菓子などはもちろん取り扱っています。
加えて、デニム製品やきびだんごなど岡山・倉敷のお土産物も取り扱っている点が、商品面の特徴といえるでしょう。実際、多くのお客さんが立ち止まっていました。
24時間営業ではなく、午前8時〜午後9時30分までの営業
コンビニは通常24時間営業ですが、ローソン S倉敷アイビースクエア店は午前8時〜午後9時30分までの営業です。
アイビースクエアの門が午後10時で閉まる事情もありますが、夜間営業を控えることで近隣住民に騒音などの迷惑をかけないよう配慮したそうです。
「ろう村」の看板を見られるのは2025年末まで
また、入口でもっとも目立つのは「ろう村(ろうむら)」と書かれた看板でしょう。
これは、KDDI株式会社と株式会社ローソンが取り組むコラボCMの放映に伴う対応で、この看板は「日本全国でもここだけでしょう」とのことでした。
なおコラボCMの放映は「2025年度末まで」と決まっているそうで、この看板が見られるのも2025年末までになるそうです。
オープンに尽力した中久保陵次さん
「ローソン S倉敷アイビースクエア店」のオープンに向けて尽力したのは、株式会社倉敷アイビースクエア カルチャー事業部 部長の中久保陵次(なかくぼ りょうじ)さんです。
オープンにいたるまでの各種調整はもちろん、オープン後も責任者として店頭に立ちながら全体を管理しています。
オープンから約10日経過した2025年6月上旬に、オープンの経緯などの話を聞きました。
コンビニオープンの経緯
──コンビニオープンまでの経緯を教えてください
中久保(敬称略)──
宿泊客や観光客から「コンビニはどこにありますか」と聞かれることが多く、案内しても「遠い」と言われていました。また、周辺で働くかたからも「コンビニがなくて不便」という声を多く聞きました。
また、弊社には以前、従業員食堂があったのですが、2018年(平成30年)に完成した大型宴会場「アイビーエメラルドホール」の建設に伴いなくなったんです。このため、お客様からの要望も強かったコンビニがあれば、従業員もそこで利用できるよねと考えました。
さらに同じ頃、アイビースクエア内の西門から中庭広場までのエリアが活用されていない状況を感じており、このエリアを再開発・活性化させたいという、社長の意向もありコンビニオープンの検討が始まったんです。
──オープンに向けて具体的に動き始めたのは、いつ頃なのでしょうか
中久保──
2024年に入ってからです。
実は弊社「ローソン 倉敷中央病院店」も運営していまして、本部に相談しやすい状況にありました。
話をもちかけると、ローソン様もぜひ実現したいということで、こちらに来ていただいていろいろ調査し、場所などの検討が始まりました。
──コンビニチェーンはいくつかありますが、最初から「ローソン」で決まっていたのでしょうか
中久保──
そうではありません。
ただ、景観への配慮などについて柔軟な対応をしていただけることはポイントでした
あと、個人的にはスイーツの品ぞろえが良いことも重要だったんですけどね(笑)
景観・町並みへの配慮
──景観・町並みへの配慮として具体的にはどのような対応がおこなわれたのでしょうか
中久保──
景観については倉敷市にもご相談しながら進めました。
最初にネックになったのはやはり路面店であるような、青と白基調の看板です。「木目調にできないか」と要望されました。
そこで、ローソン様に相談すると、とても柔軟に対応いただき今の看板ができあがりました。
西門などに設置している看板も、独自のものです。
また営業時間についても、24時間営業ではなく、午前8時から午後9時30分までとしました。
アイビースクエアの門が午後10時で閉まるため、集客が見込めないという事情もありますが、夜間営業は控えることとしました。
ただ、宿泊客から「コンビニが閉まるのが早い」という声はきっと上がってくると思います。このため、「コンビニ自販機」というのがあるのですが、宿泊棟への設置を現在検討しています。
──オープンしてまだ10日程度(取材は2025年6月上旬)ですが、反応はいかがですか。
中久保──
ありがたいことに、今のところお叱りの声はまったくいただいていないんです。
「ありがたい」という歓迎の声は住民のかたがたからも聞くので、ほんとオープンできて良かったな、うれしいなという気持ちです。
あと、外国人観光客がものすごく多いですね。コンビニを普通に利用するんだなと思いました。
──最後にメッセージをお願いします
とにかく住民のかたがたに、「常連」になってもらいと思っています。
普通の路面店と違い、遅くまで営業していないというマイナス面はありますが、ちょっとしたものをお買い求めいただくときなどに利用していただけるとうれしいです。
おわりに
倉敷美観地区には日常的に足を運ぶので「コンビニがあればなぁ」と思ったことは、何度もあります。同時に、「景観のことを考えたら、コンビニを作るのは無理だろうなぁ」とも思っていました。
だからこそ、コンビニができると聞いたとき、そこにはきっとオープンに向けて、さまざまな苦労があったのだろうと想像しました。
中久保さんのお話を聞いて、その苦労の一端を知り、便利になったのはもちろんありがたい話ですが、それだけで終わらせてはいけないなと感じています。
今後問題も発生するかもしれません。
しかし、観光客のためだけのコンビニではなく、地域住民や働く人のためのコンビニでもあります。皆で倉敷美観地区に調和したコンビニなるように、育てていく必要があるでしょう。
地域に根ざした、愛されるコンビニになれば良いなと思いました。