浦島坂田船 最新アルバム『WARN12G』を軸にしたアリーナツアーで見せた増し続ける表現欲と表現力、国立代々木競技場 第一体育館公演をレポート
浦島坂田船 SUMMER TOUR 2025 WARN12G
2025.8.11 国立代々木競技場 第一体育館
うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラの4人からなるボーカルユニット・浦島坂田船が、2025年7月から9月にかけて全国7か所をまわるアリーナツアー『浦島坂田船 SUMMER TOUR 2025 WARN12G』を開催。6月25日にリリースした10thアルバム『WARN12G』に収録の新曲を軸にした構成であらわになったのは、活動を重ねてなお増している4人の表現欲と表現力だった。ここでは、8月10日と11日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた東京公演のうち、2日目の模様をお伝えする。
けたたましいアラート音からの「緊急事態発生!侵入者は4名、当施設は制御不能と判断」というアナウンス、ステージ後方の巨大ビジョンに映る「WARNING」の文字で、いつもの浦島坂田船ライブとは異なる緊迫感が漂う場内。手配された4人の姿をとらえるオープニングムービーがあけ、黄色と黒のバリケードテープを破って真っ先にステージに現れたのは志麻だ。うらたぬき、となりの坂田。、センラもそろい、アルバム『WARN12G』の幕開けを飾る「MINE MINE」へ。キービジュアルそのままの赤&黒が鮮烈な衣装をまとい、ファイヤーボールが勢いよく噴き上がるステージで歌もダンスもキレッキレでワイルドモードな4人。間奏のダンスパートでも圧倒した「YELLOW FINEST」、いきなり本能剝き出しな「GENTLEMEN’S NIGHT」と続けば、表現者としての“強欲”っぷりに目を見張る。“月”をテーマに新たな表現の扉を開いた春ツアーからたった半年で、またしても新領域に踏み込んでしまっているではないか。
バンドメンバーが音出しをする中でテンポよく自己紹介したのち、うらたぬきが「最高に危ない夜にしようぜ!」、となりの坂田。が「お互い恥ずかしいところを見せ合おうぜ!」、センラが「全部見せるんで!」、志麻が「全部置いてけ!」と煽ってなだれこんだのは「ヒバナ」。志麻の力強いクラップ、となりの坂田。やセンラの撃ち抜きポーズが、crew(浦島坂田船ファンの呼称)の熱狂を加速させていく。
うらたぬきの「最高に気持ちいいことしよ?」、センラの「まだ足りひんのやろ?」、となりの坂田。の「もっとみんなの声聴きたいな」、志麻の「ふぅん……やればできるじゃん!」という挑発的なアドリブセリフにcrewが沸いた「Beetle Battle」。ステージ中央からのびる花道を通ってセンターステージに進みながら、ライトセーバー風の青く光るステッキを手に披露したダイナミックなダンスパフォーマンス。夢を砕く<クズ>を極めているのに歌もダンスも最強にクールでスタイリッシュな「Trashy」。黒いサングラスをかけ危険な香りを漂わせた4人が、エマージェンシーテープを張り巡らせたトロッコに乗り込みアリーナ客席通路を進んだ「シャララ」。「ちょっと早いんですけどやりたいと思います」とセンラが神妙な面持ちでタイトルコールした「アンコール」。メインステージに戻り、ダンサーが手にした黒い薄布をひらひら舞わせた「宵座興」。新曲の仕上がりっぷりだけでなく、マンネリズムを寄せつけない4人のサービス精神や挑戦心、向上心にも毎度のことながら驚かされる。
となりの坂田。が渾身の歌声で描くやるせなくて深すぎる愛に心震えた「祝辞」。美しく響くファルセットも高く上がる足もターンもすべてが全crewを恋させたセンラの「Secret KISS」。がっつり踊ってターンからのハイキックも見事にそろったうらたぬき&となりの坂田。の「大人A-S-O-V」。『WARN12G』に収録のソロ曲とデュオ曲もまた、あまりに強すぎる。
捕らえられ鎖につながれた4人がそれぞれ過酷な罰を受けるという衝撃パフォーマンスに続いたのは、イントロで身体に巻かれた鎖を豪快に引きちぎってみせた「獣王無尽」。うらたぬきの「堕ちるところまで堕ちようぜ」、センラの「好きに触ってもいい?」、となりの坂田。の「俺のことめちゃくちゃにしていいよ?」、志麻の「もういいぜ、好きにしな」というアドリブセリフにも、crewの悲鳴に似た歓声が上がる。
うらたぬきの「たぬきのぽんぽこ祭り」、志麻の「イエスタデイはトゥモローを歌わない」、となりの坂田。の「無駄≠無駄」、センラの「脳内シェイカー」、浦島坂田船の「おーるでいおーるにゃいと」「Piece Piece Piece」と、ソロやグループのキラーチューンをバンドメンバーとダンサーが演奏とパフォーマンスで盛り上げ、「U.S.S.S HOLIC」へ。グレーがメインカラーのダボっとしたシルエットのスウェット生地衣装に着替えた4人が手にしているのは、それぞれのイメージカラー塗装の拡声器だ。うらたぬきととなりの坂田。が隣り合ったり、志麻の拡声器でセンラが歌うそぶりを見せたりしながら、花道を通ってセンターステージへ。うらたぬきとセンラ、志麻ととなりの坂田。がじゃれ合いながらも意志強く歌い踊る「鈍色Wheels」にしても、高揚感が尋常ではない。
志麻が静と動を操り歌声はもちろん全身で愛を叫んだ「言霊」。マフラータオルを首にかけ、ダンサーとのコミカル&キュートなパフォーマンスでうらたぬきが沼に引きずり込んだ「P!P!P!P!」。志麻とセンラが笑顔で向き合いながら歌って踊って最高な夏を感じさせた「Rat-a-tat」。何度でも言う、新たなソロ曲もデュオ曲も強い、強すぎる。
センラの<許さないよ>からしてcrewのハートを鷲掴みにした「被害妄想携帯女子(笑)」のあとは恒例のロングMCへ。攻撃力高めで研ぎ澄まされたパフォーマンスが冴え渡る今ツアー、いつもと変わらない和やか朗らかなMCタイムとのギャップがありすぎて風邪を引きそうだ。
マイクスタンドに向かいキャッチーなコーラスワークと振り付けでも魅せた「You miss me, I know!」。再びトロッコに乗り込み客席全方位に向けたっぷりファンサしながら歌った「Fortune!!」。「考えた結果、複雑よりも……」とまたまた神妙な面持ちで言い出したセンラがうまいことタイトルコールにつなげて、アリーナ客席後方でトロッコが連結すると4人がギュッと寄り添い肩を組んで歌った「シンプルLOVE」では、曲中、水戸黄門をオマージュした(?)動画「浦島坂田船 ニューアルバム 『WARN12G』【XFD】」のオフショット写真がLEDビジョンに映し出され、メンバー4人がやいのやいのコメントを重ねていく場面も。どんなに活動規模が大きくなっても飾らず自由で楽しく在り続ける、それが浦島坂田船というグループだ。
歌詞に合わせ花道を走り出しリスペクトを込めて国民的ナンバー「Happiness」を自分たち色に染め上げたかと思ったら、「Peacock Epoch」では急にドSモードに豹変。うらたぬきが「めっちゃ幸せ、ありがとう!」と感謝の言葉を発して一気に多幸感マックスな「ハッピーエンドは笑うように」からの、高めキーの歌声も片足上げダンスもかわいすぎて激メロ注意報級だった「あざといんふるえんさー」。ジェットコースターなたたみかけに、いつにも増して感情が翻弄される。
ソロツアー中のうらたぬきが、「4人でライブをするのっていいなとあらためて思います。すごく心強くて、ステージに出る前にメンバーみんなで円陣を組んだとき、仲間がいるんだって嬉しくなりました」と心中を明かすと、「帰る家があるから、挑戦できるし頑張れるよな」ととなりの坂田。が同調し、笑顔で頷く志麻とセンラ。そして、「みんなの笑顔に僕たちは救われています。これからも一緒にいたいし、ずっと愛は重いと思う。みんなに支えられながら、これからも人生を謳歌していきます」とうらたぬきが4人の総意をcrewに伝え、本編ラストの「I’m home again」へ。涙ぐむうらたぬきを志麻、となりの坂田。、センラが温かな眼差しで支え、メンバー同士顔を見合わせながら、客席を愛おしそうに見渡しながら、crewへの気持ちを込めて大切に重ねてつないでいった歌声。メンバーにとってもcrewにとっても、そこはかけがえのない居場所だった。
アンコールは「月華」でスタート。わちゃわちゃと賑やかに言葉を交わしながらの写真撮影をはさんで、夏に相応しい「恋色花火」へ。花火に見立てた噴き出すスパークラーの火花も、4人の晴れやかな笑顔も、crewの全力コールも、すべてが眩しくて尊かった。2025年9月7日には、結成12周年を迎える浦島坂田船。crewとの愛を糧に、干支をひと巡りしてますます勇猛精進な4人がとても頼もしい。
文=杉江優花
撮影=加藤千絵(CAPS)、堀卓朗(ELENORE)、小松陽祐(ODD JOB)