Yahoo! JAPAN

松田聖子、南野陽子、中山美穂などの名曲が目白押し!80年代の冬を彩ったアイドルソング12選

Re:minder

1980年12月01日 松田聖子のセカンドアルバム「North Wind」発売日

「Re:minder SONG FILE」11月のテーマは “冬を彩る80年代アイドルソング”


ハロウィンが終わり、木枯らしが吹き、立冬も過ぎた。東京では真夏日が9月末まで、夏日は10月中旬まで続いたため、あっという間に冬が近づいてきた感じがする。先日発表された2025年『新語・流行語大賞』候補30語のなかに “二季” がノミネートされたのも、春と秋の短期化が広く共感されていることの証と言えるだろう。

もう少し秋を満喫したかったのは筆者だけではないと思うが、季節の流れは止められない。ということで、歌謡ポップスチャンネルで毎月お届けしている『Re:minder SONG FILE』のテーマも “冬を彩る80年代アイドルソング” である。選曲の条件は「ヒット曲中心(松田聖子は必須)」「クリスマスソングは外す」「これまでのSONG FILEと重複しない」の3つ。そのうえで曲調や作家のバランスも考慮しつつ12曲を厳選したので、以下、プレイリストに沿ってご紹介したい。

新人歌手としてオリコン史上初の初登場1位を獲得した近藤真彦「スニーカーぶる~す」


冒頭を飾るのは、1980年代に入って到来した最初の冬を席巻した近藤真彦「スニーカーぶる~す」(1980年)。半年前に「哀愁でいと」でデビューした田原俊彦に続いて “たのきんトリオ” 二番手として登場したマッチのファーストシングルだ。

トシちゃんの成功の勢いに乗りたい旧ジャニーズ事務所はヒットメーカーの筒美京平を作曲に指名。ディレクターの小杉理宇造と筒美の意向で、作詞には松本隆が起用された。楽曲は戸塚修の編曲で一旦完成するも、仕上がりに弱さを感じた小杉はアレンジャーを馬飼野康二に代えて、歌詞と構成も大きく変更。その結果、Aメロが1回のみで、サビが頻繁に登場する「A → B → C(サビ)→ B →D(ブリッジ)→ C → C」というインパクト絶大の展開となった。

こうして発売された「スニーカーぶる~す」は新人歌手としてオリコン史上初の初登場1位を獲得。筒美にとって3作目、松本にとっては初のミリオンセラーとなった。戸塚がアレンジしたバージョンには “冬" を明確に示す歌詞は登場しないが、のちに「ふられてBANZAI」(1982年)のB面に収録されたので機会があれば聴き比べてみてほしい。

スキー場での恋を伸びやかに歌った松田聖子「白い恋人」


その「スニーカーぶる~す」と同時期にアルバムチャートを賑わせていた冬ソングが松田聖子の「白い恋人」(1980年)である。聖子が冬のアイドルポップスの可能性を広げた立役者であることは2024年12月のコラム『最大の功績者は松田聖子? アイドルの歌う “冬ソング” が80年代に急増した理由』でも述べているので、よかったらご一読いただきたい。

セカンドアルバム『North Wind』のオープニング曲で、スキー場での恋を伸びやかに歌った「白い恋人」は、短調のシリアスな冬ソングが主流だった歌謡界に新風を吹き込んだ。エンディングで歌い上げる「♪Ah~」の開放感も格別で、出世作「青い珊瑚礁」に通じる多幸感に満ちた彼女の声質を生かした楽曲と言えよう。

冬の横浜港を舞台にした、河合奈保子「愛してます」


続く「愛してます」(1980年)は河合奈保子のサードシングル。冬の横浜港を舞台に、少女のひたむきな愛を、持ち前の歌唱力で歌い上げたマイナーアップテンポのナンバーだ。オリコン、TBS系『ザ・ベストテン』ともにトップ10入りを逃したが、電話リクエストを重視する文化放送『決定!全日本歌謡選抜』では前作「ヤング・ボーイ」の最高位を上回る5位まで上昇し、人気を確実なものとした。

余談となるが、「愛してます」のシングル盤の品番は “AH-1” 。彼女が所属していた日本コロムビアの品番 “1” は歌謡界の女王・美空ひばりの指定席で、女王のリリースがないときは空けておくのが通例であった。その不文律を新人が打ち破ったのだから、いかに期待が大きかったかが分かるというもの。結婚・出産を機に活動を停止した彼女だが、12月24日にデビュー45周年を記念したTBSの映像集『NAOKO ANTHOLOGY SONGS』がBlu-ray4枚組で発売されるなど、今も盤石の人気を保っている。

田原俊彦主演映画「ウィーン物語 ジェミニ・YとS」挿入歌「双子座(ジェミニ)の恋人達」


松田聖子らとともに1980年代のアイドルブームを創出・牽引した田原俊彦は12作目のシングル「ラブ・シュプール」(2024年11月放送“80年代アイドル クリスマスソング”特集でオンエア)のB面に収録された「双子座(ジェミニ)の恋人達」(1982年)を選曲した。A面同様、三浦徳子(作詞)・筒美京平(作曲)、大谷和夫(編曲)のトリオで制作された本作は、田原主演の映画『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』の挿入歌。ホーンとストリングスを贅沢にフィーチャーしたオーケストレーションとデジタルビートを融合したサウンドが爽快に響く、ゲレンデの恋を描いたラブソングだ。

昨年デビュー45周年を迎えたトシちゃんは一切妥協しない圧巻のステージが評判を呼び、コンサートツアーはどの会場も大盛況。最新曲「LIFE IS A CARNIVAL」が32年10ヶ月ぶりにトップ10入りを果たす一方、TBSの映像集『KING OF IDOL HISTORY in TBS Vol.1』(5枚組)も音楽DVD・Blu-ray Discデイリーチャートでトップ5にランキングされるなど勢いが止まらない。「双子座の恋人達」は1986年発売の『田原俊彦 B面コレクション』以来、復刻されていないので、来年はぜひ全音源の高音質CD化や配信を期待したい。

大瀧詠一が作曲を手がけた、太田裕美「さらばシベリア鉄道」


さて、ここからは趣を少し変えて、1980年代に顕著となった、シンガーソングライターからアイドルに提供された冬ソング3曲をお届けする。

まずは大瀧詠一が作曲を手がけた太田裕美「さらばシベリア鉄道」(1980年)だ。もともと自身のアルバム『A LONG VACATION』用に書いた曲だが、松本隆による男女の掛け合い形式の詞を見て、やはり松本が作詞をした「木綿のハンカチーフ」を想起し、太田裕美に提供することを思いついたという。

このアイデアは『ロンバケ』ディレクターの白川隆三が太田裕美も担当していたことから、すんなりと実現し、アルバム発売の4ヶ月前に太田のシングルとして世に出ることとなった。編曲は太田作品のメインアレンジャーだった萩田光雄が担当。大滝盤とは微妙に歌メロが異なるが、それは女性ボーカルを前提に歌い回しを変えたデモテープを太田サイドに渡したからだと当の大滝が証言している。

大滝は自身の提供作品集『Song BookⅠ』のライナーノーツに “裕美バージョンは、いつかは心が伝わるような明るい感じが、大滝バージョンはシベリアの空に消えてしまって伝わらない感じを現わしているように思うのですが、いかがでしょうか?” とも記しているが、皆さんはどうだろう。

松任谷由実が作詞を手がけた、白石まるみ「オリオン座のむこう」


“シンガーソングライターからアイドルに提供された冬ソング” 2曲目は松任谷由実(作詞 / クレジットは “呉田軽穂” )・松任谷正隆(作曲・編曲)夫妻による白石まるみ「オリオン座のむこう」(1982年)をお送りする。TBS系ドラマ『ムー一族』のオーディションを経て芸能界入りした白石は松任谷正隆のプロデュースにより歌手デビュー。冬の星座であるオリオン座が登場する本作は、ユーミンが三木聖子に提供した「まちぶせ」に通じる、少女の秘めた想いをリアルに活写したデビューシングルだ。

残念ながら大きなヒットに至らなかった「オリオン座のむこう」だが、気鋭のソングライターが多数参加したファーストアルバム『風のスクリーン』にも収録されており、2022年にボーナストラック付きの高音質UHQCDとして復刻された。今回の放送で興味を持たれた方はぜひアルバムもチェックしてほしい。

​​加藤和彦が作曲を担当した武田久美子のデビュー曲「噂になってもいい」


そして3曲目は当時14歳だった武田久美子のデビュー曲「噂になってもいい」(1983年)。小学生時代から芸能活動を行なっていた武田は類まれな美少女ぶりが評判となり、近藤真彦の主演映画『ハイティーン・ブギ』(1982年)のヒロイン役でブレイクする。映画では近藤とのキスシーンもあったため、熱狂的なマッチファンから剃刀入りの封書が山のように届く事態となるが、「噂になってもいい」はその状況を逆手に取ったタイトルと言えなくもない。

本人主演の連続ドラマ『さよなら三角』(フジテレビ系)の主題歌に起用された本作はザ・フォーク・クルセダーズ以来、時代の先端を走り続けていた加藤和彦が作曲を担当した。2番と3番のあとに大サビがそれぞれ登場する変則的な構成だが、冬の街に佇む少女の切ない想いを綴った来生えつこの詞と、武田の儚げなボーカルが調和し、オリコン14位をマークするスマッシュヒットとなった。

​​チェッカーズのオールディーズ調の冬ソング「ジュリアに傷心」


ここまで女性歌手が3曲続いたので、次はチェッカーズ最大のヒット曲「ジュリアに傷心」(1984年)をセレクトした。売野雅勇(作詞)・芹澤廣明(作曲・編曲)のゴールデンコンビによる5作目のシングルで、チェッカーズお得意のオールディーズ調の冬ソングだ。

ラジオ、ヒットパレード、ラストダンスなど、映画『アメリカン・グラフィティ』を思わせるキーワードが散りばめられているが、売野によると5回の書き直しを経て完成した難産作品。「♪Ol’ My Julia」のフレーズは、プロデューサーでもあった芹澤から “サビの1行目は女性の名前を入れませんか” と提案されて、当時生まれたばかりの芹澤の娘の名前(ユリア)をもとにネーミングしたという。

11月13日に放送された日本テレビ系『ベストヒット歌謡祭』では、M!LKの佐野勇斗、JO1の河野純喜、&TEAMのK、Aぇ! groupの佐野晶哉が本作を歌唱。当代きっての人気ボーイズグループのメンバーによるスペシャルコラボが話題となった。発売から41年を経て「ジュリアに傷心」は冬のスタンダードポップスになったと言っていいだろう。

​​南野陽子の失恋ソング「ガールフレンド」


さぁ、いよいよ終盤だ。いずれもバブル期(1986〜1991年)に発表された4曲で、うち3曲は歌手と俳優の二刀流で活躍を続けた女性アイドルの冬ソングである。1980年代後半のアイドルポップスは、1970年代に活躍した職業作家からの世代交代が進み、シンガーソングライターからの楽曲提供が常態化。1950年代以降に生まれた若い作家やアレンジャーも台頭し、のちのJ-POPに連なる等身大の世界観や洋楽的なサウンドへと変化した。

その筆頭が松田聖子の休業中に頭角を現し、ソニーアイドルの一枚看板となった南野陽子で、今回はセカンドアルバム『VIRGINAL』に収録された「ガールフレンド」(1986年)をセレクトした。アルバムの1曲目に配された本作は、小倉めぐみ(作詞)・木戸泰弘(作曲・コーラスアレンジ)・萩田光雄(編曲)の座組で、仲の良い女友達に彼氏を奪われた少女の乱れる心情を、冬の情景を織り交ぜて歌う失恋ソング。なかなかの修羅場だが、フィンガースナップとアカペラコーラスをフィーチャーしたアコースティックなアレンジの温かさが三角関係のドロドロを中和している。

冬ソングではないが、同じシチュエーションで女友達の側から歌った「ガールフレンドPart2」(1989年)が14作目のシングル「涙はどこへいったの」のカップリングに収録されているので、アンサーソング的に聴き比べるのも一興だろう。

​​ブラックコンテンポラリーなサウンドが聴きどころ、中山美穂「スノー・ホワイトの街」


続いてはナンノと同じ1985年組の中山美穂が角松敏生をプロデューサーに迎えたアルバム『CATCH THE NITE』に初収録された「スノー・ホワイトの街」(1988年)。作曲・編曲はシティポップブームで再注目されている佐藤博(2012年没)で、打ち込みを基調としたブラックコンテンポラリーなサウンドが聴きどころだ。角松との出会いで歌手としてステップアップした中山は『CATCH THE NITE』で自身初のアルバムチャート1位を獲得。オリジナルアルバムでは最高のセールスを記録し、ブラコン路線にシフトするきっかけとなった。

​​THE ALFEEの高見沢俊彦が手がけた薬師丸ひろ子「Windy Boy」


二刀流アイドルの3曲目は薬師丸ひろ子の「Windy Boy」(1989年)をお送りする。彼女にとって通算13作目、1980年代最後のシングルとなった本作は桃井かおりと共演した映画『レディ!レディ READY!LADY』の主題歌に起用された冬ソング。作詞・作曲はTHE ALFEEの高見沢俊彦で、チャートの12位まで上昇した。

高見沢が小泉今日子に提供した「木枯しに抱かれて」(2024年12月放送 “80年代アイドル冬ソング” 特集でオンエア)はスコットランドの荒涼とした冬景色を想像させるサウンドだが、「Windy Boy」は明朗で温もりのある薬師丸の声質もあって、別れの歌なのに絶望ではなく希望を感じさせる仕上がり。その深みは芝居で培った表現力の為せる業と言えそうだ。

​​冬の公園を舞台にした少年隊「ABC」


そして大トリはオリコン1位のヒットチューン、少年隊の「ABC」(1987年)に任せることにした。松本隆(作詞)・筒美京平(作曲)・船山基紀(編曲)の鉄壁トリオによる本作は、冬の公園を舞台にした7作目のシングルで、当時の音楽シーンを席巻していたユーロビートを大胆に採り入れたダンスチューン。船山によると、スタジオミュージシャンによる生音と打ち込みを重ねた “盛る” アレンジで分厚いサウンドを構築したという。

楽曲のクオリティの高さに加えて、毎回変化をつけるダンスやスタイリッシュな衣装も少年隊の魅力。「ABC」では東山紀之が愛用していたアーストン・ボラージュによるディスコの黒服的な衣装と、マイクスタンドを蹴り上げる華麗なパフォーマンスも見どころだった。

以上、誰もが知るヒット曲から隠れた名曲まで12曲を取り揃えた。晩秋の夜、温かい紅茶やココアでも飲みながら1980年代の冬ソングを楽しんでいただきたい。

Information
Re:minder SONG FILE「冬を彩る80'sアイドルソング」

ココロ躍る音楽メディア「Re:minder」がテーマを決めて珠玉のソングファイルをお届け。
▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル
▶︎ 放送日時:
・2025年11月26日(水)24:00〜25:00
・2025年12月04日(木)24:00〜25:00
▶︎ 今月のソングファイル
♪ スニーカーぶる~す / 近藤真彦
♪ 白い恋人 / 松田聖子
♪ 愛してます / 河合奈保子
♪ 双子座(ジェミニ)の恋人達 / 田原俊彦
♪ さらばシベリア鉄道 / 太田裕美
♪ オリオン座のむこう / 白石まるみ
♪ 噂になってもいい / 武田久美子
♪ ジュリアに傷心 / チェッカーズ
♪ ガールフレンド / 南野陽子
♪ スノー・ホワイトの街 / 中山美穂
♪ Windy Boy / 薬師丸ひろ子
♪ ABC / 少年隊
▶︎ 番組ページ:Re:minder SONG FILE

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. <旦那は反対>生後7か月の娘は活発で人が好きそう。彼女のために2人目を作ってあげたいのに

    ママスタセレクト
  2. 白菜の黒い斑点はポリフェノールだった 農林水産省が「捨てないで」と呼びかけ

    おたくま経済新聞
  3. 「I.BE LABO川越店」は川越観光の中心地でコインリングの手作り体験をできる体験型アクセサリーショップ。城下町で“世界のコインを指に纏う 思い出作り”の魅力に迫る。

    ハッシュ川越
  4. 新宿ZEROTOKYO でMANON主催「PINK NOISE DX」12/26(金)開催、ヘッドライナーに大沢伸一

    FLOOR
  5. 凸型ELやロケット号にファンの⽬は釘付け 創業130年の上信電鉄で「頑張るぐんまの中小私鉄フェア」(群馬県高崎市)【レポート】

    鉄道チャンネル
  6. 脳裏から離れない美味しさ、昔ながらのあんドーナツ【中屋パン】(愛知県・名古屋市)

    パンめぐ
  7. 「ファッションとアートの違いを知ったからこそ、 今は自分の素をさらけ出して絵に込めることができる」アーティスト・奥田雄太

    Dig-it[ディグ・イット]
  8. あっさりしているけど奥深い旨味!おいしい塩ラーメン3杯

    asatan
  9. 和歌山出身の好きな芸能人ランキング【11/22は和歌山県ふるさと誕生日】

    ランキングー!
  10. 【福島記念】外枠が勝つのはミラクルレベル? 過去10年の傾向から見える買えない馬とは!?

    ラブすぽ