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逗子市内唯一の銭湯・あづま湯が市と災害時における入浴等に関する協定を締結

タウンニュース

店の前に立つ唐澤社長夫妻

逗子市沼間の銭湯・あづま湯(唐澤三雄社長)は7月、逗子市と「災害時における施設等の提供協力に関する協定」を締結した。市内で災害による多数の被災者が出た際に、入浴機会を提供し被災者生活の安定を図る。唐澤社長は「風呂には人を笑顔にする力がある。被災した人たちがホッとできるスペースを提供できれば」と思いを語った。

協定内容は市内で大規模災害が発生した時、市からの要請により、あづま湯が被災者に対して入浴、生活用水、トイレの提供を行うというもの。

新潟県出身の唐澤社長は子どもの頃、石油コンビナート災害をもたらし、死者26人、負傷者447人を出した新潟地震(1964年)を経験。2011年3月に発生した東日本大震災など大きな災害が起きるたびに、「被災した人たちのために何か力になりたい」と思い続けてきた。

「役に立ちたい」

近隣の横浜市や川崎市では浴場組合が市と災害時協定を結んでいたこともあり、あづま湯も市内唯一の銭湯として、20年の店舗リニューアルを機に、逗子市に協定の申し入れをした。逗子市入浴手帳(入浴助成券)の関係で接点があったため、高齢介護課に打診をしたところ、担当窓口の防災安全課に申し送りをされた。しかし、市からの反応はしばらくなく、今年になりようやく連絡が来た。唐澤社長は「能登半島地震の被災地では一週間風呂に入れないといったニュースもあった。我々の風呂がそうした時に、役に立てばうれしい」と話した。

市の担当者は「コミュニケーションの場にもなってほしい」と期待を込めた。

「次の世代につなげたい」

あづま湯は1947年創業。唐澤社長は3代目だが、初代、2代目とも血縁関係はない。2004年に同湯が売りに出されていることを不動会社に聞き、「面白そう」と購入。当時は横浜で漬物屋を営んでおり、二足の草鞋だった。戦後のピーク時には市内に6軒の銭湯があったが、引き継いだころには既にあづま湯のみ。店舗リニューアルの際には様々なトラブルに見舞われ、2年近く営業できず、廃業も頭をよぎったが、「常連さんたちの楽しそうな笑顔を思い起こすとやめられなかった。今は炭酸風呂や電気風呂、超音波風呂が元気になれると評判です」と妻の晴子さん。

唐澤社長は「今回の協定はお世話になった地域の方への恩返しの思いもある。やれるだけのことはやって、次にあづま湯を継いでくれる人にバトンタッチできたら」と心中を語った。

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