パリ市が「プラスチックフリーの育児キット」を無料配布 赤ちゃんを迎えるすべての家庭に
地球と赤ちゃんを守るために
食器やおもちゃ、携帯用の水筒など、ベビー用品の多くはいまもプラスチック製が主流だ。こうした習慣を見直すきっかけを提供しようと、パリ市が新たな試みを開始する。
パリ市が提案するのは、プラスチックや有害物質を含まない、環境に配慮したベビー用品のキット。赤ちゃんを迎える両親全員に、2025年中頃から無料で配布される。
キットには木製のおもちゃ、再利用可能なコットンのおしり拭き、オーガニックソープ、ステンレス製のタンブラー、自宅で洗濯洗剤をつくるための重曹などが含まれており、布製のエコバッグとともに提供されるという。なお、キットの受け取りに所得条件は設定されていない。
パリ市では、年間平均で約21,000人の赤ちゃんが誕生している。今回の取り組みは、そんな「新しいパリ市民」となる新生児の健康を守ると同時に、地球への負荷を減らすために考案された。またこれは、パリ市議会で採択された、45の行動計画から成る「パリ環境衛生プロジェクト」の一環でもある。
化学物質の汚染予防を自治体が支援
プラスチック製のおもちゃには、赤ちゃんにも大人にも、人体に有毒な化学物質が含まれていることが明らかになっている。
この問題について、パリ副市長のアンヌ=クレール・ブー氏は、「フタル酸エステル、ビスフェノールA、鉛といった汚染物質は、たとえばプラスチック製のおもちゃから繰り返し検出されています」と指摘。さらに、有害な化学物質に長期間さらされると、がんだけでなく、甲状腺や生殖機能の低下など、多くの健康問題を引き起こす可能性があるという。
2025年から配布されるキットには、上記の問題を踏まえ、「新しい親に、より安全な習慣を身につけてもらいたい」という願いが込められている。加えて、パリ市は2025年から若い親を対象に、「汚染から赤ちゃんの健康を守るヒント」と題したワークショップをスタート。情報提供や学びの機会が用意される。
また、パリ市内にはすでに、有害物質を排除した新生児用の保護センターが44か所設置されている。これらの保護センターでは1年間に誕生する新生児の83%が受け入れられており、有害物質との接触を減らすための支援を行い、医療従事者の育成もすすめられている。
ヨーロッパ各国で広がる無料キット すべての人に平等な気づきを
ベビー用品の無料配布は新しいアイデアではなく、1949年にフィンランドで始まった。以来、ヨーロッパの多くの国で、衣類、毛布、ケア用品、おもちゃ、本など、さまざまなアイテムが、赤ちゃんを迎える親に提供されている。パリ市はこのアイデアを手本に、化学物質から健康を守るためのヒントを組み合わせた。
環境負荷の少ないアイテムには初期コストがかかると、低所得層から敬遠されやすい。しかし、所得に関係なく配布される今回のキットによって、平等な気づきの機会がすべての人にもたらされるのではないだろうか。
※参考
Paris could offer new parents anti-pollution baby 'gift bags' to combat 'forever chemicals'|euro news
A free anti-plastic kit for young Parisian parents in 2025|Le Bonbon